シンクロ(アーティスティックスイミングデュエット)のシンクロ率がやばすぎる③
俺たちが固唾を吞んで見守る中、演技が終了し、拍手をするのも忘れ、ただただ呆然とし見つめていた。どうやら彼女らも演技中の異変に気づいたようで、レイナさんと華澄さんは驚きの表情で互いに顔を合わせ、2人とも同時にプールサイドまで泳いできた。
「まずは落ち着いてください!わたくしも驚かずにはいられないのですが、くわしくはジャグジーに移動して一呼吸置きましょう」
アスタさんがそういうと、全員でジャグジーまで移動し、落ち着いたところで再度アスタさんが口を開いた。
「どこから説明したらいいのでしょうか、まず、レイナさんのこの曲の振り付けは5年以上ほとんど変わっていないんです。また、皆さんが異世界転移でやってくるのを一番最初に知る立場にあったのは、エリス界の各大臣や重要人物のみで、それでもおよそ一年前、そのあとにレイナさんが皆さまの指導の最高責任者に抜擢され、皆さまの基本情報のアクセス権を得た流れになっているんです。また、明日のスマホの研修で具体的に教える予定だったのですが、他人の個人情報を見るときには相手の許可がない場合、かなり厳しい制限があるんです。これを理解してもらうためにはいったん明日の授業を受けてから再度判断してほしいとしかお願いしようがありません。さきほどの歓迎会でも明さんたちに申し上げたのですが、今回は特例でガイア界からお越しくださった皆様方のステータス類や趣味、特技などが確認できる処置がとられているのですが、あまり他人に知られたくない情報は元より、ガイア界の映像や音声などの情報を手に入れることは不可能なんです。もし何か原因があるとすれば、この曲をエリス界に伝えたエリス様自身にお伺いを立てるしかありません」
アスタさん、相当慌ててるな。レイナさんも呆然としている様子だし。
―レイナさんは華澄さんのお母さんの生まれ変わりですよ―
「えええええええええええええええ!????????????」
この場にいる全員、一斉に驚きの声を上げた。
―ガイア界の皆さま2、3時間ぶり、エリス界の皆さまはじめまして、わたくし、この世界を管理する「エリス」といいます。わたくしの声が頭の中で聞こえてましたら、確認のため挙手をお願いします―
俺たちを含め、この場にいる全員が、驚きから落ち着きを取り戻せてないような状態であるにもかかわらず、条件反射のように右手を上げた。むしろ俺たち6人よりレイナさんたちのほうがかなり驚いており卒倒している様子だった。
―今から事情を説明しますね。結論からお伝えしますと、すべてが偶然が重なりあった結果なんです。奇跡と呼んでも過言ではありません。レイナさんがオリンピックで目覚ましい結果を残されたので気になってレイナさんの過去や前世、前世というのはレイナさんが生まれる前に魂、「心の塊」のようなものですね、それがどのような人生を歩んだのか調べてみたんです。そうしたら、『娘さん』を出産されたのをきっかけにさらに体が弱くなり、まだ幼かった『娘さん』を残して若い年で亡くなられてたのが分かったんです。生まれ変わる前は記憶を失うものなのですが、亡くなられる直前に「まだ幼い『娘』を残して死ぬわけにはいかない、死にたくない」とか「もっと丈夫な身体だったら」という想いが相当強かったのでしょう。そういった感情は魂に刻まれて次の人生に影響を与えたりするんです。レイナさんの場合、世界の壁や時間の壁を乗り越えてエリス界に転生してしまったので、せめてレイナさんに似合うようなガイア界の音楽を届ければという経緯があったんです。そのあとに華澄さんもこのあとにアーティスティックスイミングを始め、この曲を気に入ってしまったりとか、華澄さんをはじめとした6人のわたくしの管轄するエリス界への転移が『決まった』りとか、レイナさんが教育の担当者に選ばれ、華澄さんと出会ってしまったとか、偶然が重なりすぎたんです。ここまでくれば華澄さんとレイナさんの想いがたぐり寄せた奇跡だといっていいでしょう。お二方とも、よくここまで頑張りましたね。それでは引き続きエリス界での生活をお楽しみください―
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華澄さんをのぞく俺たち5人は、すでにエリス様の声を聴いている上にサプライズ耐性がついてるためか再起動までの時間は短かったが、レイナさん以外のエリス界の人たちは「直にエリス様のお声を聞けるなんて・・」とか呟きながら天に向かって祈りを捧げたりしていた。それに加え、時を超え世界の壁を越えての生き別れになった親子の再会である。女性陣は感極まって涙を流している。華澄さんは泣きながら「ママーー!!!」と言いながら号泣し、レイナさんも少し困惑気味ではあったが華澄さんと抱き合いながら泣いていた。エリス様も予期してなかったりとか、エリス様の管轄外の作用があるというのをほのめかしている口調ではあったが。『決めた』ではなく『決まった』といってたからね。もし、これらを『決めた』他の神様がいたとしたら、ずいぶんと「粋」なことをしてくれるじゃねぇか、そう思ったが、今はただ、目の前で突然起きた親子の再会を奇跡と受け止めておこう。異世界転移後、「まだ数時間しかたってないのに展開が早すぎる」というのは棚の上に置いといて―




