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魔装機マナリリアン  作者: ロア
   WORLD of END 9章
89/120

9章 生まれたこの世界は 75話-1人じゃ無い

〈75-1 首を刎ねる〉


 1機の魔装機が

 何も無い暗い森の中を駆け抜けて行く


 パイロットは息を切らし

 行く当ても無くさ迷い

 死にたくないと言う願望だけで

 機士から逃げ続けていた



レイ

『私は・・・私は・・・』



 量産魔女として作られた彼女は

 失敗作として人売りに売られ

 人を殺しその場所から逃げ延び

 ソオジと呼ばれる魔装機学者と繋がり

 新しい道を進もうとした


 しかし

 魔業教団にレイとソオジは良い様に使われ

 闇の道を進んでしまう


 挙句、

 ソオジを自らの手で殺し

 ラプラスの駒として扱われ

 ローズストーン国の機士すらも敵に回した


 自分の居場所も存在しない彼女には

 もう生きる術など残されて居なかった



レイ

『ハァッッッッハァッッッッ』



 魔装機を動かすマナも残っていない

 更には空腹で視界がボヤける


 レイは魔装機を降り

 持っていたナイフで自らの喉を刺そうとした



レイ

『・・・・・うぅ...できない...』



 ソオジや人間を殺せる自分なのに

 自分の命は自分で奪う事ができなかった


 その事にレイは嘆き

 地面に倒れ 泥の上に顔を埋めた



レイ

『どうしたら良いのよ・・・・・』



 極度の緊張や先の戦いで疲れ果てていたレイは

 その場で眠ってしまった



 そして


 また悪夢を見る



 殺した人間の顔や

 見殺しにしてしまった量産魔女の顔が

 暗闇で立ち尽くす自分を何も言わず見てくる


 だがレイには

 何言わぬ者達からの幻聴が聴こえていた


 どうして私を殺した

 お前も早くこっちに来い

 私達を何故助けに来なかった

 そう幻聴が・・・




 悪夢から目が覚めると

 覚えの無い毛布が掛けられており

 近くで焚き火に火を焚べる者や

 武器を磨く者が辺りに居た


 後ろに居た者は

 目を覚ましたレイに声をかけた


 レイは警戒して

 その者達に手を広げ

 魔法の詠唱をしようとしたが

 何故か体内のマナが高まらず

 魔法を出せずにいた



レイ

『どっどうして....』



 声をかけた者は

 彼女の警戒を解かせようと安心させた


 森の中で倒れていたレイを助けたのは

 ロイヤルフラッシュのジョーカー達だったのだ



ジョーカー

『安心してくれ、私達は貴方に危害を加えない』


レイ

『・・・・・』



 レイは気付いていた

 コイツらは

 魔業教団とローズストーン国の機士達が

 戦っていた時に居た奴ら、

 つまり

 機士の連中の仲間だと



 料理を作るハート

 火の番をしているダイヤ

 エースは武器の手入れ

 クラブは魔装機の点検していた


 ジョーカーはレイに

 落ち着く様に何度も言うが

 レイの額は汗を流し続けていた


 足元に落ちていた

 自分が持っていたナイフを見つけたレイは

 それを急いで拾い

 彼女達に向け警戒した



ハート

『なになに!?どうしたの!!』


ダイヤ

『コイツ正気か!?』


エース

『ジョーカー、下がれ!!』


ジョーカー

『・・・いや、彼女は...』



 レイの手は震えていた


 この状況でこの人達を殺せないと思ったレイは

 もう一度自分の首にナイフを突き立てる



ジョーカー

『ヨセ!!』



 ナイフを持つ手に力が込められ

 一息に自分の首を刎ねようと動かすが・・・


 やはりそれは不可能だった



 ナイフが手から離れ 泣き崩れるレイ

 ジョーカー達はそんなレイを見て

 顔を見合わせるのだった...



◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉



〈75-2 名を殺す〉


 広い世界で一人ぼっちの

 人なのか人で無いのか分からない女性は

 暖かい温もりを信じ夢を見た


 それが

 鏡に映る血塗られた自分だったとしても...



▶︎森の中


 レイが乗っていた魔装機

 レイベルタースを調べていたクラブは、

 その魔装機が

 先程の戦場で戦っていた

 魔業教団に居た敵の魔装機だと気が付き

 皆にその事を伝えに戻った


 クラブが皆の場所に戻ると

 倒れていた女性に

 温かい飲み物と食事を与え

 心配する表情で見守っていた


 どうしたの?っとは言わず

 クラブは無言でジョーカーの側に近寄った



レイ

『もう気付いているとは思うけど、

 魔業教団に手を貸しあの戦場に居たのは私、

 貴方達が戦ってた敵よ....』


エース

『やはり・・・』


レイ

『ローズストーン国の人達を苦しめたし

 レインオラクル国の機士からも

 追われていた過去だってある、

 貴方達は私を殺すんでしょ?

 もう抵抗しないから好きにしてよ....』


ジョーカー

『・・・・・』


クラブ

『ジョーカーさん・・・』



 ジョーカーは彼女に名前を尋ねた

 君が何者で、どうして魔業教団と一緒に居たのか

 全てを聞き出そうと...


 レイは全て答えた


 自分が量産魔女と呼ばれる作られた生命体で

 人を殺しレインオラクル国から追われ

 闇の商人として

 ソオジと一緒に魔装機を売っていた事や

 魔業教団に協力していた事も


 このレイと呼ぶ名前も

 人売りに買われていた時に付けられた名、

 本当の名前など存在しない


 何もかもどうでも良くなっていたレイは

 ジョーカー達に殺して貰えるならと考えていた



レイ

『私は貴方達とは違う・・・、

 居場所も国すらも持たない

 人殺しの道具として作られた兵器なんだから...』



 レインオラクル国の機士だったエースは

 量産魔女の事を知っていた


 その事をジョーカーに教え

 レインオラクル国に連れて行くか?と提案した



ジョーカー

『いや・・・彼女はもう自由で有るべきだ、

 聴けば外の世界を何も知らない様だし

 レインオラクル国に連れて行っても

 何も変わらないだろう』


レイ

『私を殺してくれるなら何処だって行くわよ、

 ローズストーン国でもディナガード国でも』


ジョーカー

『確かに、

 レイと呼ばれる人物は魔業教団に手を貸し

 ローズストーン国や

 他国の人々を苦しめた人物だ、

 それなりの罰が待っているだろうね』


レイ

『もう生きているのも嫌なのよ!!

 だから貴方達が私を殺してよ!!』


ジョーカー

『そうさせて貰うよ』



 ジョーカーは剣を抜き

 レイに剣先を向けた


 コレで私も皆の元に行ける

 もう悪夢に苦しめられる事が無くなる

 真の自由が手に入るとレイは思っていた


 だがジョーカーは・・・



ジョーカー

『今この場でレイと呼ぶ人物は死んだ、

 この場所に居るのは新しい魂を宿し

 私達ロイヤルフラッシュと共に

 世界を護る仲間の1人だ!!』


名も無き女

『え....?』


ジョーカー

『血塗られた名前は捨て

 私達と一緒に世界を旅しないか?

 名前が無いのは不便だから・・・そうだな、

 ホワイトって名前なんてどうかな?』


ホワイト

『違っ‼︎、どうして貴方達は私なんかを!!』



 ロイヤルフラッシュの皆は

 笑顔でホワイトを歓迎していた


 さっきまで敵だった人物を

 簡単に仲間として迎え入れる彼女達に

 ホワイトはどうして良いか分からなくなった


 ジョーカーは言った

 この場に居る皆は

 故郷や機士を捨て集った仲間達、

 国が処罰できない世界に広がる悪を倒し

 平和を護ってきた戦士達だと


 自分の名を変え

 国や機士のルールから外れ自由に生きる

 ロイヤルフラッシュと呼ぶ組織なのだと



ハート

『そうだよ!!ホワイトちゃんも一緒に戦お!!』


クラブ

『人かどうかなんて悩まなくて良いですよ!!

 だって貴方は生きて居るんですから!!』


ダイヤ

『私の事はガキ扱いするなよ、

 お前よりロイヤルフラッシュに長く居る

 先輩なんだからな!!』


エース

『自分の道は自分で選べ、

 私もそうして機士を捨てコイツらと出会った』


ジョーカー

『どうかなホワイト?

 私達と共に旅をしてみないか?』



 自由を求め続けていたホワイト、

 国の中で暖かい食事や寝床を持つ者達を

 羨ましく自由なのだと見ていたが、

 彼女達は国も居場所も機士も捨て

 旅をする放浪者


 昔の自分と同じ事をしている彼女達なのに、

 なのに何故だか

 そんな彼女達が自分には自由に映った


 涙が溢れるホワイト

 ジョーカーが付けた名前が

 気に食わなかったのだと言うメンバー達


 ジョーカーはどうしようかと慌ててると

 ホワイトは涙を拭い仲間達に言った



ホワイト

『聞かせてよ・・・貴方達の旅を』


ジョーカー

『・・・あぁ』



◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉



〈75-S ヤジ・ドルッツ〉


 私はレインオラクル国のドルッツ家に産まれた


 この世界で下の名前が付けられた者は

 貴族の産まれだと分かる証で合ったが、

 レインオラクル国は常に変化を重ねる国

 貴族だった者が平民にまで落とされる事など

 日常茶飯事の事....



 私の両親は、

 父は魔装機のパーツや部品を運ぶ仕事を

 母は小さな小道具やで働いていた


 2人とも家族と呼ぶには程遠く

 ドルッツの名だけを受け継ぎ生きていた



 マナの高く無い

 父と母から産まれた私なのに

 他人の人よりマナは高く

 ビショップ級レベルのマナ量を持っていた


 私はレインオラクル国の機士に成り

 父と母に楽な暮らしを与えた


 しかし

 レインオラクル国は食べ物に貧しく

 人工的に作られた栄養剤を買うだけでも

 それなりの値が付けられていた


 まともな食事を食べられず

 飢えて死ぬ人々は沢山居た


 私の家庭も裕福だとは思っていない

 だけど

 年々上がる物価に民の皆は苦しめられていた


 私の父や母だって

 家計に頭を抱えてしまっていた



『来月分のチップすら買えないのか....』


『ヤジの分だけでも買って上げないと、

 あの子は今が大事な時期なんですもの』



 父も母も

 1人娘の私を大切に育ててくれた


 だけど

 そんな両親を更にレインオラクル国は苦しめた


 王のリューズが病気で倒れ

 大臣のドルズが国を仕切る様になってから

 レインオラクル国は大きく変わった


 自分達の領土だけを護るディナガード国にも

 豊富な食料が有るのに自分達だけの者として

 独占するローズストーン国とも

 敵対する行為を取ってしまった


 それによりレインオラクル国の

 食料事情は更に深刻化を増した


 最初は些細な揉め事からだった

 他国の機士がレインオラクル国の領土で

 魔物と戦い村に被害を出したり、

 機士同士の言い争いが大きく膨らみ

 死者を出した事も・・・


 今のレインオラクル国は

 他国を潰し領土を広げようと考えている

 そう私は思えた



ヤジ

『ヤジ・ドルッツです!!

 今日からレインオラクル国の機士として

 忠義を尽くして行きます!!』



 最初の挨拶を終えると

 ベルナンデス三姉妹の長女

 ブリタン・ベルナンデスと呼ばれる雇われ機士に

 私は目をつけられた



ブリタン

『威勢が良い声だね、忠義とアレば

 自らの命だって捧げそうじゃないさね』


ヤジ

『それが命令ならば』


ブリタン

『気に入らない眼だね、

 自分の意思を持たない弱い人間の眼だよ』



 ブリタンに難癖を言われ

 追い遣られる私を庇ってくれたのは

 機士隊長の1人キラ隊長だった



キラ

『彼女は私の部隊の機士だ、

 ブリタン・ベルナンデス、君の手下では無い』


ブリタン

『そうかいそれは悪かったね、

 私は意思を持たない弱い人間が大嫌いなんでね』



 私を見下しながらブリタンは何処かに行った


 助けてくれたキラ隊長に感謝し

 私は自分の任務に着いた



 ある日

 私は悪い噂を機士仲間から聞いた


 レインオラクル国は秘密裏に

 優秀な魔女の遺伝子から

 魔女を作り出す実験をしていると聞かされた


 更に、マナを増加させ

 脳まで改造される恐ろしい実験まで

 行われているのだと機士仲間は言う...


 それが事実なのか嘘なのか私には分からない

 だが

 その噂を流していた機士は

 遠征で魔物に倒され死亡したと

 翌日に報告された




 資料を持ってきてくれとオドマン博士に頼まれ

 私はオドマン博士の研究所で

 魔石学の本を探していたある日


 棚の奥でホコリを被っていた資料が落ち

 私はそれを拾い元の場所に戻そうとした



ヤジ

『ん?・・・量産魔女の実験記録?』



 私は落ちた物の中身に目を通してしまった....



 実験記録・・・・・

 マナの高い魔女のDNAを使い

 無数の魔女を作る計画を開始・・・・・

 なお・・・この事はリューズ王ですら知らず

 一部の関係者以外知り得ない・・・・・


 被験体0001番.....ゲル状の液体

 被験体0002番.....声を上げる肉の塊

 被験体0003番.....眼や足の無い生物


 実験が成功したのは

 被験体0071番からだった


 赤子の量産魔女を作る事には成功したが

 マナの高い魔女なのか判別出来るのは

 年月を待ち赤子が成長しなければ分からず

 赤子では高いマナの測定ができなかった


 実験記録17

 量産魔女の赤子を3000体作り

 時間の経過を待つ


 実験記録18

 幼少期からマナの低い個体を廃棄

 廃棄の個体を

 人売りに売っていた研究員が居たが

 その者達は処分させて貰った


 実験記録21

 廃棄の量産魔女を使い実験を行った

 IQテスト 耐久度の実験

 量産魔女から子供は産まれるのか・・・


 IQは皆個体差が存在した

 耐久度は普通の人間と変わらず

 プレスで踏み潰せば血を流し死に

 炎の中に落とせば燃えて死んだ


 量産魔女は子供も産む体では無い事も分かった、

 私はそんな事どうでも良かったのだが

 一部の研究員は喜んでいたそうだ


 ・・・・・・・・・・・・・・・

 実験記録47

 最後に残ったのは1人、

 3000体の被験体から

 マナの高いナイト級が産まれたのは1人だった


 この実験を続ければ

 もっと面白い物が作れるかも知れないが

 余りにも効率が悪い


 私は次の研究

 生きた魔女からマナを無理矢理増加させ

 強い者を作る研究、強化魔女を考えていた


 以降はそちらの実験を始めるつもりだ



ヤジ

『・・・こっコレは...』



 私は観てはいけない資料を読み

 目を離せなくなってしまっていた


 最後のページに、実験で残った

 ナイト級の魔女の名前が残されていた

 ・・・・キラ・デニュークの名前が....


 その時

 背後に居たキラ隊長に気付かず

 私はキラ隊長に捕まってしまった



キラ

『貴様この場所で何をして居る!!』


ヤジ

『わっ私はッ.....』



 こんな物を見てしまったのだ

 殺されても不思議では無いと思っていた


 そこに

 1人の機士が、私の両親が住む町に

 魔物の群れが現れたとキラ隊長に報告した


「両親が居る町です」っと私が言うと

 キラ隊長はあの事には触れず

 魔装機で出撃する、お前も来いと言った



 町に到着すると

 私の眼の色は変わった


 町は火の海に成り

 住民の殆どが死んだと聞かされた


 勿論、私の両親も・・・・・


 無気力に成っていた私はキラ隊長に

「私は知ってはいけない事を知ってしまった、

 殺されるならキラ隊長にお願いしたい」

 そう言った



キラ

『生きる事を諦めるのか?』


ヤジ

『もう生きる必要が無くなったからです』


キラ

『オドマン博士は強化魔女の実験体を探していた』


ヤジ

『実験体でも構いません、

 それで死ねるのなら・・・・・』



 キラ隊長は私の服を掴み

「生きる事を諦めるな!!

 お前が生きていた証は

 この程度で無くなると言いたいのか!!」

 そう私に激を飛ばした


 生きていた証・・・・・


 冷静に戻ったキラ隊長は

「両親の為にも生き続けろ」っと私に言い

 魔装機に乗りレインオラクル国に戻った






 これは

 私がロイヤルフラッシュの皆

 ジョーカー達に出会う前の話だ.....



◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉



〈75-T スラム・ボイン〉


 ローズストーン国で大きな戦争が起きた


 レインオラクル国の連中が

 魔装機で罪の無い人達を殺し機士の人達と戦った


 その戦いで

 私の姉、バイン姉さんは死んだ・・・・・


 姉さんと仲の良かったゼルさんも

 その戦いで命を落としたと聞かされた


 残ったのは

 あの馬鹿のダンだけだった....


 学校にも友達なんて居ないし

 仲の良かったゼルさんも

 優しかった姉さんも死んでしまった、

 私はもう....1人なんだ....


 私は機士学園を出て

 1人旅をしようと思った、

 強くなるために・・・・・



 ローズストーン国を出て行こうと思ったら

 都合良く、機士を抜け

 ローズストーン国を去ろうとしていた人達が居た


 アレは確か

 ダイヤモンド隊のポオカと

 整備士のミニッツ・・・・・


 私は2人に頼み

 一緒にローズストーン国を出て旅をする事にした


 整備班のリーダービドルから貰った

 ソーダストに乗って・・・・


 知らない村に

 絶景を見渡せる谷にも行った


 この世界は

 私が知るより大きく美しかった


 私達が旅をしている間に

 戦争は終わり

 三ヵ国は同盟を結び世界は平和になった



ミニッツ

『私、行ってみたい所が有るんですが・・・』



 そうミニッツは

 言いにくそうな表情をして

 私とポオカの顔色を伺っていた


 何だろうか?

 ミニッツが行きたい場所って?


 何かを察したポオカは

 真剣な表情でミニッツを見て喋った



ポオカ

『レインオラクル国だろ?』



 レインオラクル国!?


 レインオラクル国は

 私やポオカの姉を殺した国

 私達の仇なんだぞ!!


 だから言いにくそうだったのか・・・

 そんな場所行くわけないだろ!!

 ポオカも私と同じ気持ちのハズだ!!


 そう思っていたが

 私の考えとは違い、ポオカは

「レインオラクル国に行くべきかもな」

 っと言い出した



スラム

『は!?本気かポオカ!!』


ポオカ

『広く世界を見る、困って居る人達が居るなら

 敵だろうが助けるのが正義だと思わないか?』


スラム

『正義もクソもねぇ!!

 人殺しの連中なんかと仲良く出来るか!!』



 私は何度も反対したが

 結局私はレインオラクル国に来る事になった。



▶︎レインオラクル国


 レインオラクル国は

 赤や青や眩しい光にゴチャゴチャとうるさい

 機械の音が鳴り響く嫌な場所だった


 来たくも無かった場所に来て

 私は舌打ちをしていた



スラム

『チッッッ』


ミニッツ

『そんなに怒らないでくださいよスラムさん』


スラム

『その名で呼ぶな!!』


ポオカ

『名前が無いと不便だろ?』


スラム

『オイでもお前でも

 好きに呼べば良いだろ別に....』



 私達が言い争っていると

 レインオラクルの機士が現れ

 ローズストーン国の機士がそこで何をして居ると

 言い詰め寄って来た



レインオラクル国の機士

『同盟を結んだからと言って

 無断で他国の機士がウロウロされては目障りだ』


スラム

『何だと!!』


ポオカ

『落ち着けスラム』


スラム

『その名で呼ぶな!!』



 人助けでこの国に来た

 仕事の依頼が有れば引き受けたいと

 ポオカはその機士に説明をした


 今のレインオラクル国は

 暴君ドルズ大臣が英雄達に倒された事で

 今まで国を動かしていた者が居なくなり

 猫の手も借りたい程大変な時期だったのだ


 ドルズに協力をしていた

 幹部会と呼ばれる国のトップ連中は

 責任を逃れ逃亡する者や自ら命を絶つ者まで....


 1部の機士達は

 そんな自分達も処罰の対象なのではと考え

 魔装機を奪い逃走する者まで現れたそうだ



レインオラクル国の機士

『ローズストーン国から届けられた食料を

 街の人達に行き届けるだけで一苦労、

 機士の人間も多く失い、

 今機士達を束ねてくれて居るナイン隊長が

 居なければこの国はどうなっていたか....』


ポオカ

『私達も手伝うよ、私はポオカ

 こっちの2人はスラムとミニッツだ』


スラム

『チッッッ』


ヤジ

『私はヤジ・ドルッツだ』



 腹が立つ・・・

 どうして私がレインオラクルの機士なんかと

 一緒に居なきゃなん無いんだよ!


 コイツらは敵だ!

 私の姉さんやポオカの姉さんを殺した奴ら何だぞ


 そんな奴らと仲良くできるかってんだ!!



 街の人達は

 ローズストーン国の人達に感謝していた


 戦い続きで食料を渡せる程多くは無かったが

 それでもローズストーン国は

 レインオラクル国の人々に食べ物を分け

 壊された街の修復まで手伝ってくれた事に

 感謝の言葉を言っていた


 国は違っても

 この国に住む人間も人間なんだ...

 そんな当たり前な事に気付かされた...


 だけど!

 あのヤジって女とは仲良くできる気がしない!!



ヤジ

『おいスラム、それはそっちじゃ無いぞ』


スラム

『私を名前で呼ぶな!!』


ヤジ

『うるさい女だ』


スラム

『言っとくが私は

 レインオラクルの機士が嫌いだ!!

 姉の命を奪った人殺しの連中なんか!!』


ヤジ

『・・・・そうか』



 ヤジは持っていた荷物を運び

 1人で何処かに行ってしまった


 クソ!ムカムカする!!

 どうして私がこんな事を....


 そう言えばミニッツの奴何処に居るんだ?

 ポオカは

 機士団長のナインと仕事をしてるらしいけど

 ミニッツは何処で何してんだよ!!



 ミニッツを探し

 私は魔装機倉庫にやって来ていた


 ミニッツの奴、知らない男と

 魔装機に付いて喋っていた



ミニッツ

『なるほど、強化魔女と呼ぶ技術と

 魔石を組み合わせると一時的に

 パイロットを強化させる物が作れると...』


オリーブ

『可能だろうけど

 乗り手に負担を掛けどうなるかも分からない、

 とても危険な技術だと僕は思ったから

 それを魔装機に取り入れようとは思わないな』



 仕事をサボるミニッツに

 何してんだと私は文句を言った


 どうやらミニッツは

 この国で新しい魔装機を作りたかったらしい、

 強い魔装機を作る事がミニッツの夢だったな

 邪魔しちゃ悪いから仕事は私1人でやるか....



 仕事に戻ると

 ヤジの野郎が1人で全部終わらせていたようで

 荷物が置かれていた倉庫は空になっていた


 ・・・・・何故かムカついていた私は

 使われていない鉄パイプの山を蹴った


 すると

 積み上げられていた鉄パイプは崩れ

 私目掛け真上から落ちて来た


 咄嗟に魔法を唱えれば

 助かったのかも知れないが

 そんな余裕は私には無く

 ただ棒立ちして怯えてしまっていた


 ガチャンガチャンと山積みのパイプは崩れ

 気がつくと私はヤジに助けられていた



スラム

『どっどうして....』


ヤジ

『・・・償いだ』



 償い? どう言う意味だ?


 ヤジは腕から

 大量の血を流しながら私に言った


 ローズストーン国に攻め込んだ時

 私もあの戦場に参加していた、

 多くの機士を殺し 罪なき人も殺した、

 私や他のレインオラクルの機士もそうだ、

 私達は許されない行為をやってしまった、

 だから私はローズストーン国の人間に

 殺されても文句は言えない

 お前の姉を殺したのも私達だからだ


 ヤジは落ちていた鉄パイプを魔法で切断して

 それを私に渡した



ヤジ

『お前の苛立ちが少しでも収まるのなら

 私を殺してくれても構わない、

 だがコレだけは約束してくれ

 これ以上レインオラクル国を恨まないと...』


スラム

『・・・・んだよそれ

 ・・・・なんだよそれ...』



 私は鉄パイプを投げ捨て

 ヤジを連れ医療室に向かった



ヤジ

『スラム....』


スラム

『その名で呼ぶな!!

 お前らレインオラクルは身勝手なんだよ!!

 命を奪って、奪ってしまったから

 今度は自分の命を奪えだって...ふざけんな!!』



 こんな身勝手な奴が死んでも

 私は何にも嬉しくなんかない!!


 命を投げ捨てるなら

 少しは努力してお前らから歩み寄って来いよ!!


 恥ずかしい台詞を長々と

 私はヤジに言っていたそうだ


 それから

 私はヤジと仲良くなっていたらしく

 2人で仕事をして居る所をポオカは見て

 私達に言った



ポオカ

『二人とも凄く距離が近付いたよね?』


スラム

『うるせぇ』



 強くなる それが旅を始めた理由だった


 敵だった人間とも

 仲を深め一緒に仕事だってしている


 自分が思っていた強さとは違うが

 私は強く成ったのだと感じていた



◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉



〈75-U ミニッツ・ミスリル〉

 私はミニッツ・ミスリル、

 魔装機学を勉強して

 将来は私だけの魔装機を作る事が夢だった


 私はポオカさんスラムさんの2人と旅をして

 機械の最先端

 発明の国レインオラクル国にやって来ていた


 この国では

 私の知らない知識が沢山合った


 レインオラクル国の魔装機学を深掘り

 多くの知識を得た


 ポオカさんとスラムさんは

 ヤジさんって呼ぶ

 レインオラクル国の機士さんと仕事をして

 私は魔装機に付いて勉強していた


 持っていたソーダストを使い

 更に強いソーダストを作ろうと改良した


 この国の魔装機学者

 オリーブ博士やオノマト博士

 女性のヌーア博士と協力して

 私は私だけの魔装機を完成させた



ミニッツ

『できた......出来た!!』



 黒 赤 青 緑 黄色の魔装機

 色鮮やかな5機の魔装機を私は作り上げた


 名前はまだ考えて無い


 黒の魔装機は大鎌を使う近接寄りの魔装機

 パイロットの能力を引き上げる

 特別なシステムが搭載されてる


 赤の魔装機は大きなハンマーで戦う近接機

 エネルギーを吸収するパネルから

 高威力熱光線を放つ事ができる


 青の魔装機は

 大型のキャノンとライフルを搭載した

 支援型遠距離射撃機


 緑の魔装機も支援型の魔装機

 高性能のレーダーや

 エネルギーを供給するケーブルを持つ、

 自分がこの魔装機に乗る事になるだろう


 最後は黄色の魔装機

 近距離遠距離を両立させ戦える万能機

 咄嗟の判断や仲間を指示する人に向いてる



 嬉しくなって魔装機を眺めていると

 ポオカさんが私を呼び

 大事な話があると言ってきたのです



 私は話を聞くため

 広めの会議室に行きました



ナイン

『魔装機を盗み逃げ出した機士を

 1名捕まえたと報告が入った、しかし

 護送中にまたもその者は逃げ出したらしい』



 レインオラクル国の機士団長ナインさんは

 護送中に逃げた機士を探して欲しいと

 私達に頼んできた


 人手が少ない今、他国の機士にも

 頼らなければならない状況のようだ


 ポオカさんはそれを引き受け

 私達は逃げた機士探しをする事に...



ヤジ

『ナイン団長から言われ

 私もお前達と協力しよう』


ミニッツ

『よろしくお願いしますヤジさん』



 でも、

 探すって何処を探せば良いのか?


 レインオラクル国は広くて

 狭い路地や隠れられそうな場所は沢山有る

 虱潰しに歩き回っても

 その機士さんが見つかるとは思えない


 するとスラムさんは私に言ってきた

 魔装機が完成したそうだけど

 その魔装機は何処に置いてあるのかと



ミニッツ

『古い倉庫を借りて、そこで作ってました』


ポオカ

『あの場所は人通りが少なく

 外との出入りも可能だったよな』


スラム

『へぇ〜、良い場所借りられたんだ』


ヤジ

『・・・・・おい待て、もしかすると奴は...』



 ヤジさんの考えは的中していました


 私達が借りていた魔装機倉庫に戻ると

 レインオラクル国の軍服を着た

 脱走兵と思われる方が

 赤い魔装機のコックピットに

 乗り込もうとしていた最中でした



ミニッツ

『あぁ!!私の魔装機が!!』


ヤジ

『ツクヨか!?、貴様何をしている!!』



 どうやら

 脱走兵の人をヤジさんは知っていた様子でした



ツクヨ

『勿論レインオラクル国から逃亡するだよ!!、

 私達は沢山の人を殺し

 国の命令なら何でもやって来た、

 レインオラクルって国は

 使えない駒や

 命令を無視する機士を簡単に殺す!!

 私達犯罪者は国の身代わりとして殺される

 それがレインオラクル国って国だからな!!』


ヤジ

『もうそんな心配は無い!!

 戦争は終わり皆平和な未来に進み始めた!!

 国同士の争いは終わったんだ!!』


ツクヨ

『信じられるかよそんな事!!

 レインオラクルに残ってる奴らは

 ディナガードやローズストーンを知ってるのか?

 アイツらが俺達を生かすとは私は思えねぇ!!

 殺されるぐらいなら逃げた方がマシだ!!』



 ポオカさんは前に出て ツクヨさんに言った

 私はローズストーン国の人間だ

 ディナガード国の人達も

 ローズストーン国の人達も

 貴方達を殺そうなんて考えていない、

 皆協力し合って前に進んでいる

 平和な時代を皆願っていると



ツクヨ

『機士が雇ったペテン師共か?

 俺はそんな嘘には騙されないぞ!!

 良い役職を与えると言って

 強化魔女に改造され

 自我を殺された仲間を何人も知ってる!!

 俺をそこらの馬鹿と同じだと思うな!!』


スラム

『アイツ完全に狂ってる』


ヤジ

『劣悪な環境で育てばそうなる者だって居る...

 聞けツクヨ!!

 今はナイン隊長が私達を指揮している

 ナイン隊長ならこの国や私達を思い..』



 ツクヨさんは話を遮りました



ツクヨ

『ナインの野郎だって!?

 アイツは姫を攫いローズストーン国に

 亡命した臆病者じゃねーか!!

 聴く所によれば、アイツは元々

 ローズストーンの人間だったらしいな?

 そんな奴が私達を良くしてくれると

 思ってる連中が残ってるのか?

 呆れるどころか笑えてくるな!!』


ポオカ

『完全に話を聞いて貰える状況じゃないな』


ヤジ

『辞めろツクヨ!!それ以上罪を重ねれば

 取り返しが付かなくなるぞ!!』


ツクヨ

『逃げてるだけで

 追いかけて来るお前ら方が異常者だろうが』



 ツクヨさんは赤の魔装機に乗り込み

 魔装機を起動させ

 レインオラクル国から逃げて行きました


 自分が作った新型機を奪われ

 私は凄くショックを受けていると

 ポオカさんとヤジさんは

 残った魔装機を使い

 ツクヨさんを追いかけると言いました


 まだテストも行って無い魔装機を

 実用するのは危険だと分かっていましたが

 背に腹は代えられません


 ポオカさんが黒の魔装機に

 私が緑の魔装機に

 スラムさんが青の魔装機に乗りました



ヤジ

『私は自分の魔装機を取ってくる、

 お前達は先にアイツを追いかけてくれ』


ポオカ

『時間が無い、

 ヤジもミニッツが作った魔装機に乗れ!!』


ヤジ

『私はお前達の仲間じゃ無いだろ!?』


スラム

『そんな事言ってると逃げられるよ』


ミニッツ

『黄色の魔装機を使ってください

 万能機で扱い易い魔装機なので』


ヤジ

『・・・・・すまん』



 私達は新型の魔装機を使い

 ツクヨさんを追いかけました


 その後なのですが

 メルクさんって人をツクヨさんは人質に取り

 赤の魔装機を使い私達と戦いました


 後から分かったのですが

 ツクヨさんはマナが尽き、代わりに

 メルクさんが赤の魔装機を動かしていたのでした


 ツクヨさんはレインオラクル国に連れて行かれ

 魔装機を動かす

 テクニックを持っていたメルクさんを

 ポオカさんは勧誘し仲間に迎え入れました


 私達は一度メルクさんと別れ

 レインオラクル国に戻ると....



ナイン

『・・・・そうか、

 機士団を抜け旅がしたいと...』


ヤジ

『私はこの狭い

 レインオラクルと呼ぶ国しか知りませんでした、

 外の世界をもっと知りたいと思ったのです』


ナイン

『・・・・・ツクヨの事は私達に任せろ、

 アイツも今のレインオラクル国を見れば

 少しは考え方を変えるかも知れないからな』


ヤジ

『ナイン団長....』


ナイン

『知って来い!!この世界を!!

 お前が知るよりこの世界は広く膨大で

 夢を持つ物達が溢れているぞ!!』


ヤジ

『・・・・感謝します....』



 最初は

 私とポオカさんの2人の旅だと思っていました


 旅に連れて行ってとスラムさんが現れ

 田舎に住むマナの高いメルクさんを勧誘して

 最後は

 ヤジさんも機士を捨てやって来てくれました



ポオカ

『良いのか?』


ヤジ

『お前達と居ると退屈しなさそうだからな』


ミニッツ

『よろしくお願いしますヤジさん!!』


ヤジ

『あぁ.....スラムもよろしくな』


スラム

『・・・・・おぅ』



 私達はメルクさんを迎えに行き

 ロイヤルフラッシュと呼ぶチームを作り

 新しい呼び名を考え

 魔装機の名前も付けました



 そして・・・私達は今

 新しい仲間のホワイトさんに

 私達の旅の話をしたのでした



◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉



〈75-3 ホワイトの意味〉


▶︎キャンプ


 辺りは暗く 夜風が吹く


 ロイヤルフラッシュの皆は

 自分達の昔話をホワイトに聞かせ

 旅の始まりを懐かしんでいた



ホワイト

『そうなんだ....』



 ハートが作った温かいスープを飲み

 ホワイトは話をまったりと聞いていた


 量産魔女の事を知っていたエースは

 量産魔女に付いては詳しく説明せず、

 ホワイトの顔が

 昔自分の部隊の隊長をしていた

 キラ隊長とそっくりだと思い

 ホワイトの顔を眺めていた



ダイヤ

『どうしたエース?スープ飲まないのか?』


エース

『少し考え事をしていた』


ハート

『何々?私達に隠し事は無しだよ〜』



 エースは軽く無視して

 ハートが作ってくれたスープを飲んだ


 スープを飲みながらクラブは言った、

 ホワイトが乗っていた魔装機

 レイベルタースは少し誤作動を起こし

 まともな状態では無かったと


 先の戦闘で

 レイベルタースの回路が少し壊れていたのだ


 レイベルタースの修理に時間が必要で

 少しだけこの場所で留まって欲しいと

 クラブはジョーカーに言った



ホワイト

『ちょっと!!、

 私の為にそんな事しなくても...』


クラブ

『何を言ってるんですか

 私達は同じチームの仲間じゃないですか』


エース

『遠慮するな、時間ならいくらでもある』


ホワイト

『でも・・・・.....ありがとう...』



 ホワイトの感謝の言葉を皆笑顔で聞いていた


 ところで

 どうしてホワイトと言う名前にしたのかと

 ダイヤはジョーカーに質問した



ジョーカー

『白と言う言葉の中には

 ゼロって意味も含まれている、

 新しく始まる人生の名前として

 ピッタリじゃないか?』


ダイヤ

『なんか普通だな』


ハート

『そう言えばホワイトちゃんは歳はいくつなの?』



 ハートは皆の年齢をホワイトに教えた


 ジョーカーの年齢は20歳

 エースは22歳ダイヤは17歳クラブは22歳

 ハートはこの仲で1番最年長の24歳なのだと


 それを聞き

 ホワイトは恥ずかしそうに小さな声で言った



ホワイト

『.....27』


ダイヤ

『え?』


ホワイト

『27歳!!貴方達より年上よ...』


ハート

『最年長者さんなんだ、

 よろしくホワイトちゃん!!』


ホワイト

『なんか凄く嫌だ』



 顔を赤くして

 凄く恥ずかしそうにしていたホワイトだったが


 ソオジと一緒に居た時と

 同じ温もりを感じる新しい仲間達に

 ホワイトは心の中から嬉しく思っていた


 量産魔女だった時の0819番

 人買いに付けられたレイと呼ぶ嫌な名前を捨て

 新しい名を仲間から貰ったホワイト


 その夜彼女は

 いつもの悪夢を見る事は無かった



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〈75-4 ソウルフード〉


 いつもの朝

 美味しい食事を食べ 畑の様子を見て

 まったりした時間を過ごし

 夜の食事を食べ寝る


 そんな日々が続いていた



 そんなある日....



ネル

『うどんが食べたい!!』


ナナミ

『うどっ・・・・・何ですかそれ?』



▶︎グレット邸 ネル視点


 この世界には

 和洋西中全ての料理が存在する、

 肉や魚はこの世界の物を使うが

 パンや野菜などは俺の居た世界と似ている


 塩と砂糖は当たり前の様に存在し

 醤油に似た物やマヨネーズに似た物まで存在する


 なのに....うどんだけが存在しない!!


 小麦はこの世界にもある

 うどんが作れるハズだ!!



 朝食の時

 俺は声を大にして皆に言った



アケミ

『そう言えばうどんってこの世界に無いわよね』


ルーチア

『アケミ様、うどんとは何なのですか?』



 同じ異世界人のアケミも

 うどんが食べたいだろうと勝手に思っていたが

「別に」っと素っ気無い返事を返された


 うどんとは

 太い麺と味わい深い出汁から味わう

 日本人なら誰しもが食べたソウルフードだ!!


 大日本人ならうどんを食わずして

 何を食べると言うのだ!!



アケミ

『それより私はクレープが食べたい』


ナナミ

『ラッキーさんのクレープ屋が美味しかったと

 アケミさん言ってましたよね』



 クレープ? コレだから女は....

 直ぐ甘い物を食べたいと考える


 甘い物で腹は膨れない!!

 うどんが俺を呼んでいる!!



アケミ

『別に蕎麦とかでも良いんじゃない?

 どうしてそこまでうどんにこだわるのよ?』


ネル

『アケミは異世界人だからな

 日本人の俺の気持ちは分からないか...』


アケミ

『は!?、私が日本人で

 アンタが異世界人でしょうが!!』


ナナミ

『どちらも同じ意味ですよね?』



 そう言えば

 今日はマナリリアンの魔力を交換する日だったな


 うどんの事は忘れ

 俺は魔装機倉庫に居たノイリスに挨拶して

 レインオラクル国に向かった



▶︎レインオラクル国 ネル視点


 マナリリアンをオリーブ博士に預け

 俺はレインオラクル国をウロウロと散歩していた



 レインオラクル国って

 雨が降りやすい地域柄なのもあり

 空は常に曇っていてジメジメとしている


 サイバーパンク風なこの街は

 赤や青や色とりどりな光がチカチカして目に悪い


 そう俺は口に出していたらしく

 それを聞いたレインオラクル国の機士は

「それは悪かったですね」っと言ってきた



フォルミナ

『英雄のネル様がレインオラクル国の事が

 嫌いな事は良く分かりました』


ネル

『ごめんてフォルミナ』



 フォルミナはレインオラクル国では珍しく

 真面目な機士の1人だ


 ナイン団長を慕っている彼女に

 今日は1人なのかと尋ねた


 休みを貰い 今日1日暇なのだそうだ


 丁度良い、俺も暇だし

 2人で食事にでもと誘ってみた



フォルミナ

『ナンパですか?』


ネル

『全然違います』



 前に俺が来た時のレインオラクル国は

 凄く静かな国で

 食事を食べる店など1つも無かったのに


 今のレインオラクル国は

 スイーツやデザートにお菓子を食べられる店を

 良く見かける用になっていた


 普通に食事を食べられる店は無いのかと

 俺はフォルミナに聞くと、

 フォルミナは向こうの屋台を指差した



屋台の叔父さん

『ウモウシの丸焼きに魚の丸焼きがあるよー』


屋台のお兄さん

『パンを軽く焼いた奴に野菜の丸焼き売ってるよ』



 なんだ

 屋台で食事が食べられるじゃないか


 ん?でも焼き料理しか無いのは何でだ?



フォルミナ

『レインオラクルの人達は

 料理の作り方が分かってない、

 皆丸焼きしか作れないですからね』


ネル

『なんでだよ!!』



 甘いデザート系を作る技術を持ってるのに

 どうして普通の調理が誰もできないんだよ!!


 凄く疲れた顔をしていると

 向こうの屋台から涙を流す男性が居た


 俺とフォルミナは

 その人の側に近寄ってみる事にした



◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉



〈75-5 材料は調味料〉


▶︎レインオラクル国 ネル視点


 俺は機士のフォルミナを食事に誘った


 レインオラクル国の食料事情は深刻で

 前まではまともな食事すら食べられずにいた


 ディナガード国やローズストーン国からの輸入で

 多くの食べ物が市民に行き届いたが

 レインオラクルの人々は次の問題にぶつかった


 調理の方法が分からなかったのだ



 自分の屋台で涙を流す男性トーマスさんは

 発注した物とは別の物が届き

 自分の店を開けず途方に暮れていた



トーマス

『もうダメだ、今月までに金を支払わないと

 住む場所も無くなってしまうし、

 妻や子に食事すら食べさせられなくなる』



 可哀想だと思った俺は

 フォルミナと一緒にこの人を助けようと考えた


 だがフォルミナは...



フォルミナ

『何故だ?私は休暇中で機士の仕事を休んでいる』


ネル

『このままじゃ可哀想だろ?』


フォルミナ

『可哀想?レインオラクルには

 毎日のように苦しむ人達が居る、

 可哀想と思う感情だけで人助けをするなんて

 この国では通用しない考え方ですよ』


ネル

『俺が可哀想と思ったから助けるだけだ!

 もういいよ、俺1人で何とかするから....』


フォルミナ

『ナイン団長が認めただけの事は有る...

 流石英雄のネル様です....』



 フォルミナは

 小声で何を言ったのか分からなかった

 突然考えを変え

「分かった、私も手伝います」と言い出した


 何なんだよこの人は....

 レインオラクルの機士は難しい人しか居ない



 俺とフォルミナはトーマスの屋台に届いた

 発注ミスの品物を見てみる事にした



トーマス

『コレです...』


フォルミナ

『砂糖や塩、ハチミツに水

 調味料の類が沢山あるな・・・』


トーマス

『海中の草見たいな物や小さな魚しかないのですよ

 コレで商売は不可能ですよ....』



 フォルミナは材料を見て

 パンなら作れるのでは?っと言ったが

 それ以上な物が作れると俺は考えていた


 小麦類も沢山あるな・・・良し

 コレならアレが作れるかも知れない!!



フォルミナ

『お菓子を作っている店に売るしかないですね』


ネル

『いや・・・コレならうどんが作れるぞ...』



 2人は「うどん?」っと言って頭を傾けた


 トーマスが言った海中の草は昆布だ!!

 昆布と小魚で出汁が作れる!!


 後はうどんの作り方なのだが....

 昔営業で、うどんの作り方を聞いた覚えがある

 何となくしか覚えてないが

 絶対に作れるハズだ!!



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〈75-6 うどん〉


 うどんを作る事にした俺は

 小麦粉をボウルに入れ

 塩を加えた塩水を

 小麦粉の入ったボールの中に入れていく



フォルミナ

『お菓子作り見たいですね』


ネル

『休まず掻き回し続けて』


トーマス

『だんだん重たくなってきます...

 凄く疲れますよこの作業!』



 捏ね終わった生地を少し休ませ

 次は足で生地を踏む作業


 さっきの作業で疲れたトーマスは

 その場に倒れてしまったので、

 この作業はフォルミナに任せよう



フォルミナ

『足で踏み付けるなんて変な気分だ..』


ネル

『嫌な上司を思い出して踏み続けるんだ!!』


フォルミナ

『ナイン団長は嫌な上司なんかでは無い!!』



 生地を踏む作業を終え

 次は熟成させる工程だったよな


 俺は昔の記憶を思い出しながら

 生地を袋に二重に入れ 放置する事にした



ネル

『気温が低いから

 温かい場所に移動させた方が良いのかな?』



 俺は辺りをキョロキョロと見渡し

 暖かそうな服装だったフォルミナに目を付けた


 フォルミナの服の中に生地を入れ

 生地を熟成させる事にした


 お腹の辺りがプックリと膨れたフォルミナは

 何とも言えない表情で俺を見ていた



ネル

『まるで妊婦さん見たいだ』


フォルミナ

『では責任は貴方が取るのだな?』



 責任って何のだよ...


 熟成を終え

 次は棒を使い伸ばす作業だ!!


 生地を広げ 折り畳み

 また生地を広げ そして折り畳む


 この作業を続ける



フォルミナ

『粘土遊びに似ているな』


ネル

『良し、後は切るだけだな!!』


フォルミナ

『ローズストーン国で見た事あるぞ!!

 ラーメンって食べ物を作ってるのだろ?』


ネル

『全然違う!!』



 生地を折り畳み

 3ミリ幅で切っていく


 小魚と昆布の出汁は

 トーマスに言って作ってもらい

 俺は切った麺を茹でる事にした


 麺を茹でてると

 出汁が完成したのか

 それを俺に手渡してきた



トーマス

『こんなので大丈夫ですかね?』


ネル

『どれどれ・・・・う〜ん、

 塩と砂糖を入れて見ようか』



 出汁は大体完成したな、後は麺だ!!


 麺が茹で終わると

 俺はある違和感に気がついた


 ・・・・・

 何だか麺がヌメヌメとしている

 失敗したのか?


 とっとにかく...麺を氷水で洗ってみよう

 もしかするとヌメリが消えるかも知れない



ネル

『多少ヌメってるけど....完成はしたな』


フォルミナ

『コレがうどん・・・・何だか普通だな』


トーマス

『ですね..』



 フォルミナとトーマスはうどんを一口食べると

 美味しさを瞬間的に感じたのか

 目を輝かせ喜びに満ち溢れていた


 麺はもう少し改良した方が良いだろうが

 コレにトッピングなどを加えると

 更に美味しくなるだろうな



 トーマスが作ったうどんの屋台は

 瞬く間に売れに売れ


 レインオラクル国の名物料理となった




▶︎グレット邸


ネル

『店が繁盛したお礼にと

 少しながら資金をくれたんだよな』



 夕食を食べながら

 俺はアケミ達にその話をした


 トーマスから贈られたうどんを食べながら



ルーチア

『コレがうどんですか....とても美味しいですね』


ノイリス

『優しい味で温まりますね』


ネル

『そうだろうそうだろう!!』



 最初は何とも思っていなさそうだったアケミだが

 今は凄く美味しそうにうどんを食べていた


 俺はアケミに

 うどんは美味しいだろ?っと自信満々に言うと



アケミ

『私トマトラーメンの方が好きだし』


ネル

『じゃあ食うな!!』


アケミ

『誰も食べないなんて言ってないでしょ!!』


ナナミ

『ネルさんもアケミさん、

 食事中に立ち上がらないでください!!』



 俺達の騒がしい夜の日々は続いていく



◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉



〈75-7 屋敷の客人〉


 グレット邸の庭で暴れる魔装機

 ルーチアを人質に取ったその魔装機に

 俺は手も足も出せずにいた


 魔装機に乗った女は

 俺にメチャクチャにされた人生を怨んでいた


 この場に居る者を全て殺す、

 俺と関わりのある物を全て....そう言った


 アケミとナナミが乗ったフィルプス四号機は

 その魔装機と戦おうとしていた....

 ルーチアを助けたい

 しかしこのままでは

 アケミ達も殺されてしまうかも知れない....


 何故グレット邸で

 魔装機が暴れているのかの説明をしよう


 アレは数時間前の出来事だ....



▶︎2時間前のグレット邸 ネル視点


 畑の肥料を買いに、

 買い出しに出掛けたアケミとナナミ


 俺は呑気に

 海の見えるバルコニーでココアを飲んでいた



ネル

『・・・・落ち着く...』



 海に乗ってやってくる風が心地良く

 庭で花の手入れをする

 メイドのルーチアの後ろ姿を見て

 俺は大富豪に成った気分を味わっていた


 俺が軽く手を振ると

 ルーチアはお辞儀を返す


 ・・・・

 人生最高の瞬間とは今なのかも知れない

 そう俺は思っていた



ネル

『いつかこの場所で

 俺とエレノアが暮らす未来が来るのかもな』



 将来の事を妄想していると

 俺はアケミの事を考えていた


 アイツは将来どうするのだろうか?

 元の世界に帰る気が無いアイツは

 この世界で結婚して子を産み暮らして行くのか?


 ナナミだってどうなるか分からない、

 多分ロボットのナナミは歳を取らないから

 一生アケミの側に付いて行くのかな?


 ルーチアは言っていたな

 俺とエレノアのメイドとして雇って欲しいと、

 俺達の子供の面倒を見てくれたりする光景が

 目の前に浮かぶ....


 魔装機学者を目指していたノイリスは

 レインオラクル国に行って

 魔装機を作り続けるんだろうな


 そうノイリスの事を考えていると

 倉庫の方角からノイリスの喜ぶ声が聞こえてきた



ネル

『ん?ノイリスの声だ・・・』


ルーチア

『何かあったのでしょうか?』



 俺とルーチアは

 ノイリスの居る魔装機倉庫に向かった


 魔装機倉庫で喜ぶノイリス、

 どうやら

 自分の貯めたお金で武器や液晶のパーツを買い

 タレントの修理を完全に終わらせたそうだ


 修理と言うより

 1から作り直したと呼ぶべきなのかな?

 それにしても凄い事だ

 壊れた車を 新しく作り直したのと

 同じだろうと俺は考えていた・・・

 いや・・・違うのかな?


 とにかく凄い事だ!!



ノイリス

『ネルさんが僕を信じてくれたからです』


ネル

『俺は何も・・・』



「あの〜」っと聴き覚えのある声が

 屋敷の庭から聞こえてきた


 俺とルーチアは

 やって来た客人を出迎えに向かった



ライル

『こんにちはネル君』


エレノア

『今日はライル博士に連れて来て貰いました』



 やって来たのはライル博士とエレノア姫だった


 それともう1人

 何も言わない客人がライルの後ろで立っていた



チュイ

『・・・・・』



 正気を失った瞳で

 ボンヤリと前を視つめるチュイ


 チュイは魔業教団に洗脳され

 記憶を消され兵士として戦わされていた

 元デッドデスターの山賊だ


 どうしてチュイが一緒にライル達と居るんだ?


 エレノアは言った

 1人研究所で毎日椅子に座るだけの

 生活をしていた彼女に

 外の景色や空気を吸わせた方が良いと

 ライルに言ったそうだ



ライル

『エレノア姫に頼まれてね、

 あの場所で閉じ込めてるのも可哀想だと思って』


エレノア

『そうですよ!!彼女が可哀想です!!』



 ボンヤリとした瞳で

 何処を見ているのか分からないチュイ


 俺はチュイを見て

 少し不気味だと感じてしまった



 とにかく

 俺は客人の3人を屋敷の中にと案内した



◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉



〈75-8 フラッシュバック〉


▶︎グレット邸 客室


 客室に3人を案内した俺は

 メイドのルーチアに

 客用の飲み物を持ってくるよう頼んだ


 ルーチアは丁寧にお辞儀をして

 温かい飲み物を作りに行った



ライル

『可愛らしいメイドさんだね』


エレノア

『ルーチアさんはとても良い人ですよ』



 椅子に座っても

 虚な瞳だったチュイを見て

 俺はライルの耳元で喋った


 本当に大丈夫なのか?

 彼女に本当の名をもう教えたのか?

 そう聞いてみた


 ライルが言うには

 あのままだと何も進展せず

 記憶も元に戻らないかも知れないから

 少し刺激を与えた方が良いのだと



ネル

『刺激を与えるって・・・

 アイツは山賊の女だったんだぞ?』


ライル

『そうだけど、このまま

 何も知らず死なせるのも可哀想だろ?

 あのままだったら生活する上でも不便だ』



 う〜ん・・・そうかも知れないが

 もし暴れ出したら

 俺だけでチュイを止められるのか?


 俺は最悪な状況を1人で考えていた



エレノア

『綺麗な海を見れば

 少しは元気になれるかも知れませんね』


チュイ

『・・・・・』



 飲み物を作ってきたルーチアは

 客人の3人に飲み物を手渡した


 俺はそうだと思いライルに言った


 屋敷で雇っている整備士のノイリスが

 タレントを1人で修理した


 ライルは魔装機学者だ

 ノイリスが修理したタレントを見て貰おう



 ライルは喜んでと返事をして

 エレノアとチュイも

 ノイリスが修理したタレントを見る事にした



 格納庫に向かい

 ライルはノイリスが修理したタレントを見た



ライル

『凄いね、子供の君が1人で魔装機を直すなんて』


ノイリス

『ありがとうございます、ライル博士』



 ノイリスも凄く嬉しそうだ


 エレノアはチュイに

 俺のマナリリアンを見せてみると

 チュイは口を開け 小さな声で喋り始めた



チュイ

『・・・ま・・そうき・・

 ママ・・・皆んな・・・私は・・・うぅぅ』



 頭を抱え苦しみ始めたチュイ


 ライルは「いけない」と言って

 持っていた安定剤の注射器をチュイに刺した



エレノア

『どうしてしまったのですか!!』


ネル

『エレノア離れて!!』


ライル

『大丈夫、少し眠ってるだけだよ...

 少し眠れば落ち着くハズだから』



 急に記憶が戻ったのか?

 ・・・でもどうして?


 まさかマナリリアンを見て

 何かを思い出そうとしたのか....?


 ルーチアは眠ったチュイをベッドに運び

 俺達は何事も無かったかの様に格納庫を出た


 ・・・・・いや まさかな

 俺は最悪な状況を考えていたが

 ソレでも大丈夫だろうと思っていた



▶︎グレット邸


 アレから数時間

 ルーチアが作ってくれたケーキを食べながら

 ネル達は思い出話で話が弾んでいた



ネル

『魔竜にディナガード国が襲われた時

 エレノアが居なかったら

 俺はもう一度

 マナリリアンに乗ろうとは思わなかった、

 マナリリアンの名前を付けたのも

 エレノアなんだぜ!』


ノイリス

『そうだったんですね』


エレノア

『恥ずかしいです』


ライル

『惚気話だよねコレ?』



 ルーチアは余ったケーキを

 別室で眠るチュイの元に運んだ


 2回ノックをして部屋に入るルーチア


 部屋の中でチュイは眠っている


 机にケーキを置き

 濡れた手拭いが必要だと思ったルーチアは

 一度外に出て、濡らした手拭いを持ち

 チュイの居る部屋に戻った


 部屋に入ると

 ベッドで眠って居るハズのチュイの姿は無く

 机に置いたケーキも消え

 一緒に置いていたフォークも消えていた....



 天井に張り付いていたチュイは

 手に持っていたフォークを

 ルーチアの喉に突きつけ首を軽く絞める



ルーチア

『うぅ・・・』


チュイ

『大きな声を出さず言う事を聞けよ、

 アイツらの悲しい顔を見たくは無いだろ?』



◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉



〈75-9 人質〉


▶︎グレット邸


 ルーチアの喉に

 フォークを突き立てるチュイ


 ルーチアはチュイに優しく言った

 ケーキは美味しかったですか?と...



チュイ

『は?・・・何言ってんだお前....』


ルーチア

『私が作ったケーキをお召し上がっていたので』


チュイ

『どう言う状況か理解してるのかお前!!

 くだらない質問を言う前に

 魔装機を閉まっていた場所に私を案内しろ!!』



 その言葉を聞き

 チュイの目的が何なのかルーチアは理解した


 格納庫に有る魔装機を使い

 ネル様達に危害を加えるのだと・・・


 どうしてこんな事をするのか

 ルーチアは質問した・・・



チュイ

『時期に分かるさ・・・』




▶︎グレット邸 ネル視点


 昔話をノイリスに話していた俺は

 眠っていたチュイにケーキを届けに行った

 ルーチアが帰って来ない事に気が付いた


 どうしたのだろうか、帰りが遅い気がするな?

 トイレにでも行ってるのかな?



 ゴソゴソと倉庫の方角から物音が聴こえ

 エレノアは何かしら?

 っと少し心配する表情を見せた


 多分

 買い出しに行ったアケミ達が帰って来たのだろう


 その事を皆に言うと

 アケミが乗る魔装機、フィルプス四号機を

 見てみたいとライル博士は言い出した


 そう言えばライルは

 アケミの魔装機を見た事無かったんだったな


 俺は皆を連れ倉庫に向かうと

 そこには・・・アケミ達では無く

 ルーチアとチュイの姿が・・・


 チュイは

 倉庫に合ったタレントに乗り込もうとしていた



ネル

『おい!!何やってんだよお前!!』


チュイ

『久しぶりだなネル!!、

 デッドデスターのアジトで会った以来か』



 記憶が戻ってる!?

 デッドデスターの山賊だった記憶が戻り

 メイドのルーチアを人質に取って

 魔装機を奪おうとしてるのか!!



ライル

『止すんだ!!

 君が暴れても何にもならない!!』


チュイ

『お前は確か・・・私の記憶が戻って無かった時

 お前はよく、私の体を

 ペタペタと調べていたよな?

 気色の悪い男がよ!!』


ライル

『それが僕の仕事だ』


チュイ

『変態の言葉なんてどうでもいい!!

 私はそっちのネルに用が有るんだよ!!』



 俺に?

 チュイは何をしようと考えてんだ・・・


 チュイは言った

 この場に居る奴らを全員殺し

 死んで行ったデッドデスターの仲間達の

 敵討ちにさせて貰うと


 そんな事をしても

 アイツらが生きかえる訳でも無いだろ!!



チュイ

『私の居場所を奪った

 お前らや白い女の連中を殺すまで

 私は1人で戦い続けてやる!!』


ネル

『白い女の連中・・・?誰だよそいつら!!』



 チュイは頭を抱え

 その者達の名前だけが思い出せないと言った


 頭を抱え、頭痛に苦しむ今がチャンスだ!

 俺はマナリリアンに乗ろうと動くと

 チュイはルーチアの首を持ち

 それ以上動くなと言ってきた


 クソ!!

 俺が変な行動を見せると

 ルーチアの命が危ない・・・



ルーチア

『私に構わないでくださいネル様』


チュイ

『余計な事を言うと先に殺すぞ!!』


ルーチア

『うぅッッッ』



 何も持たず

 庭の外に出ろとチュイは俺達に言った


 俺はエレノアとノイリスの顔を見て

 チュイの言う通りに倉庫から出た




▶︎グレット邸 庭 ネル視点


 タレントに乗ったチュイは

 タレントの左手でルーチアを掴み

 俺達の前に立っていた


 険しい顔をしたライルは俺に言った

「もしもの時は

 僕達の事に構わず彼女を倒すんだ。

 エレノア姫はノイリス君が守ってくれ...

 僕1人なら時間稼ぎぐらいには成る」っと...


 覚悟は出来てますとした顔で

 エレノアとノイリスは

 凄く不安そうな顔をしていた


 この場に居る皆を助け

 チュイを止める方法は無いのか?

 ・・・・斯くなる上は俺の命で...


 そう思っていた矢先

 アケミとナナミが乗った魔装機

 フィルプス四号機が屋敷に戻ってきた



チュイ

『チッッ、まだ仲間が居たのか!!』


アケミ

『どう言う状況よコレ!?』


ナナミ

『アケミさん!!

 タレントの左手にルーチアさんが!!』



 チュイのタレントは右手で剣を取り出し

 アケミ達のフィルプス四号機を攻撃した



ネル

『アケミ!!ナナミ!!』



◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉



〈75-10 食べたケーキの味は...〉


 屋敷の庭で戦う

 アケミとナナミの乗るフィルプス四号機と

 デッドデスターのチュイが乗るタレント


 性能差はフィルプスの方が上だが

 チュイは人質を取っている・・・・・

 どうするつもりなんだアケミは・・・・・



 人質だったルーチアはチュイに言う

 花壇のお花を踏み付けないでくださいと


 

チュイ

『は!?、テメェ何言ってんだ!!』


ルーチア

『お花に罪はありません』


チュイ

『そう言う意味じゃねぇ!!』



 アケミとナナミも焦っていた


 ルーチアが人質に取られていては

 フィルプス四号機を本気で動かせない


 レーザー系や爆発系の武器を使えば

 ルーチアを傷付けてしまう



ナナミ

『どうしますかアケミさん!!

 このままじゃルーチアさんが....』


アケミ

『分かってる....魔力炉の出力を上げて!!

 一撃でアイツの動きを止めるから!!』



 出力を上げたフィルプス四号機は

 タレントの動きを止めようと

 向こうのエンジンエネルギーで有る魔石を

 破壊しようと剣を振るった


 フィルプスの動きを読めなかったチュイは

 咄嗟に防御の構えを見せたが

 既に遅かった


 魔石を破壊され

 ヨロヨロと崖の方角までタレントは動いた



 危ないと皆は思った、

 このままではルーチアもチュイも

 崖から落ちてしまう!!


 タレントが落ちそうになった時だった

 チュイは魔装機のハッチを開け

 ルーチアを助け

 崖から落ちるタレントから脱出した



 ソレを見たネルは驚いた、

 どうしてアイツはルーチアを助けたのかと....



ルーチア

『どうして・・・』


チュイ

『ケーキの礼だ・・・美味かったからな・・・』



 ネル達はチュイの側に近寄り

 もう抵抗しても無駄だと言った


 フィルプス四号機は

 チュイに武器を向けていると

 メイドのルーチアはチュイを庇い前に出た



ルーチア

『お待ちください皆様!!』


アケミ

『どいてルーチア!!

 ソイツは貴方を殺そうとしたのよ!!』


ルーチア

『この方も混乱なさっていただけだと思います、

 皆様が思うような

 悪い人じゃ無いのかも知れません!!』



 チュイは笑った


 馬鹿だなお前は

 私はお前らを殺そうとしたんだぞ?

 どうしてそんな奴を助けるんだよ?

 そうルーチアに言った



ルーチア

『信じたいからです』


チュイ

『信じたい?』


ルーチア

『貴方が優しい人だと信じたいのです!!』


チュイ

『・・・・・』



 ネルはルーチアに言った

 そいつはデッドデスターと呼ぶ山賊の仲間だと


 ソレを聞いたチュイは言う


 その通りだ、そこのネルが言ったのが全て

 私は悪い山賊で

 仲間も家族も全て失った寂しい犯罪者だと



ルーチア

『1人だと思うなら

 私達と一緒に暮らせば良いじゃ有りませんか、

 私も孤児で1人ぼっちでした・・・

 でも今はネル様やアケミ様

 ナナミ様にノイリス様も居ます、

 私は1人でしたが1人じゃ無くなったのですよ』


チュイ

『お前・・・・』



 チュイは自分がやって来た事を後悔したのか

 その場で泣き始めた


 ネルはどうしようかとライルに相談すると

 ルーチアは主人のネルに頭を下げ

 頼み事を言ってきた



ルーチア

『お願いが有りますネル様、

 この方を屋敷で雇ってくれませんでしょうか』


ネル

『そう言われてもな...』


ルーチア

『お願いですネル様』



 ネルが悩んでいると

 エレノアもルーチアと同じ事を言った


 この人が本当に悪い人だと自分も思わない

 ルーチアさんと一緒なら

 この人は変われるのではないかと...



ライル

『僕は反対だけど、ここは君の屋敷だ

 ネル君の判断に任せるよ』


ネル

『う〜ん』



 悩みに悩んだネルは

 とても深い溜息を吐き言った


 少しでも危険な目に合ったら

 次は機士の人達に突き出すからな と


 ルーチアは主人のネルに感謝し

 エレノアは心の広いネルをもっと好きに成った


 泣き続けるチュイの側に近寄り

 ルーチアは言った


 貴方はもう1人じゃありません

 私達と一緒にこの屋敷で暮らしましょう


 チュイは泣きながら

 ルーチアに抱き付いた



チュイ

『ありがとう、お前』


ルーチア

『お前では無く、ルーチアと言います』


チュイ

『ありがとうルーチア!!』



 ネル達の元に

 また1人新しい家族が増えた


 ナナミやエレノアは

 とても嬉しそうな顔をしていたが

 ネルとアケミは

 少し不安そうな顔をしていた


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