9章 生まれたこの世界は 73話-貴族の事情
〈73-1 極秘調査〉
▶︎ディナガード城 ネル視点
ネル
『調査?』
デルク司令に呼ばれた俺は
デルクに極秘の調査をしてくれないかと頼まれた
どうして俺に?
調査なら機士の人に頼めば良いと思っていたが、
どうやら調査を行う対象は
その機士達だとデルクは言った...
俺の訓練用魔装機を盗まれたあの日
明らかにディナガード国の警備を潜り抜け
学園の地下にある魔装機倉庫まで侵入された
ここまでの手筈が出来ていたと考えると
ディナガード国の中に
手引きをした者がいるのでは無いか?と
デルクは考えていた
国の中や外を
自由に行き来できる者はそう多くは無い、
初めに
機士団の中から調査する事にしたそうだ
ネル
『なるほど・・・それで極秘の調査・・・』
デルク
『考えたくは無いが、もしもの可能性がある
部外者のお前なら適任の仕事だと思ったからな』
調査とは言うが
具体的に何をすれば良いんだ?
そう俺はデルクに聞くと
デルクは何かの鍵を俺に渡した、
鍵? 何の鍵だ?
デルク
『寮のマスターキーだ、それを使えば
全員の部屋に入る事ができる』
ネル
『・・・魔法の鍵って事ですね・・・・・』
なんて恐ろしい物を俺に渡すんだ...
デルクが言うには
機士の部屋の中を調べ
部外者との連絡をしていたと思われる物や
怪しい物が有れば持ち帰って欲しいと言った
女性の部屋なんかに忍び込みたく無いが
もしそんな人物が居るのなら見過ごせないし
でもこんな事がバレたら
俺の地位はドン底まで下がるし・・・
てか!!男の俺にこんな物を渡して
本当に大丈夫なのかよ!?
俺はデルク司令に文句を言うと
デルク司令は
信頼した者を見る目付きで俺に言った
デルク
『お前はエレノア姫の事を愛しているのだろ?
お前の愛は本物だと俺も知っている、それに
機士の中に
裏切り者が居ると俺も考えたくは無い、
お前なら適任だと俺は考えた、
手を貸してくれるか?』
ネル
『うぅぅぅん』
確かに
このまま誰かを疑い続けるのは居心地が悪い
機士の皆が潔白なのだと
調べる事は悪い事では無い
・・・・・ハズだ!!
俺はその極秘調査を引き受け
学園にある寮に向かった
ネル
『まずはナラの部屋を調べるか』
機士団隊長のナラ
エレノア姫を守るナイトで
俺が初めてこの世界に来た時に会った
1番最初のディナガード国の機士だ
ナラにはお世話になったし
黒だと思いたく無いが、
もしナラが敵と通じている者だったら
エレノアは凄く悲しむだろうな....
魔法の鍵を使い
俺はナラの部屋に侵入した
丁度今の時間は
学生は授業中だし 機士の皆は外に出ている
だから誰にも邪魔される事無く
俺は調査に専念できた
ネル
『怪しい物は無さそうだな』
整理整頓された机にも
片付けられた部屋の中にも
変な物は何1つとして無かった
ナラは日頃から
清潔感のある心まで綺麗な女性なんだな
ネル
『一応向こうの棚も調べるか・・・』
衣類が入った棚を俺は調べた
綺麗に折り畳まれた服がズラリと並んでいる
流石にこの中に
敵と連絡をする物があるとは思えないが
もしもの事が有るかも知れないからな
ネル
『こっ・・・コレわ・・・』
ナラは潔白で白だと思っていたが
まさか真っ黒だったとは・・・・・
って!!何を言ってんだ!!
コレはその怪しい黒い物とかじゃ無くて
普通に黒い物と言うか!!
何故か手に持っていた黒い下着を棚に仕舞い
俺はナラの部屋を出た
ネル
『・・・・・なるほど、
調査をするって事はこう言う事なのか・・・』
罪悪感を感じたが
コレは皆の為でもある....
ヨシ!!ワカッタ!!
それならトコトンやってやろうじゃないか!!
俺はやる気を燃やし
次の部屋に調査に向かった
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈73-2 極秘調査2〉
▶︎ディナガード国 学園の寮 ネル視点
次はマルの部屋に侵入した俺は
辺りを見渡した
寮の中は
2人部屋と1人部屋で分けられていたが、
マルの部屋は学園の生徒と同部屋だったと
部屋に入って知った。誰と一緒の部屋なんだ?
チラリと確かめて見ると
同部屋の相手は俺と同じクラスのカゲコだった
マルとカゲコって一緒の部屋だったのか・・・
今日1番驚かされた・・・
生徒のカゲコは調査の対象外だ!
マルの机やベッド周りを調べよう!
ネル
『なんだコレは・・・』
とても汚い
お菓子の粉や衣類が脱ぎ散らかされている
とんでもなく清潔感の無い奴だ...
引出しを調べても
グシャグシャの服が投げ込まれていた。
コレじゃ
男の貰い手はいないだろうな・・・
チラリと目に付いた下着は
真っ白なブリーフが沢山並んでいた
・・・・・
女性の下着にケチをつけるのは良くないが
少しはオシャレに拘るべきじゃないか?
俺はマルの部屋を後にして
次はレイナとノノカの部屋に入った
2人の部屋はとても綺麗に片付けられている、
コレだと直ぐに調べ物も終わりそうだ
レイナやノノカの机や棚には
美味しそうなお菓子や飲み物を作る葉がある、
日頃3人で飲み食いしてるのだろうな
一応引出しを確かめると
レイナもノノカも
マルと同じ白のスポーツブラと白の下着が!!
幸いにも
下着は可愛らしい物を2人は持っていたが・・・
アイツら、
下着も同じ物を着用してるのかよ....
それはそれでどうなんだ?
レイナとノノカの部屋を出て
俺は溜息を吐くと
左から誰かの視線を感じ
は!!っとさせながら俺は左を向いた
ヴァルゴ
『・・・・・』
ネル
『・・・・・』
え!?誰!?
学園の制服を着ていると言う事は
学園の生徒なのだろうが・・・・・
ヤバイ!!完全に
レイナ達の部屋から出てきたのを見られた!!
コレではただの変質者だ!!
何か言い訳をしないと
ネル
『じっ実は...
機士の皆さんに部屋の掃除を頼まれてて
今日は部屋のクリーニングをしてるんです』
ヴァルゴ
『・・・・・』
ジーっと見つめてくる彼女の視線に
俺の胃はキリキリと音を鳴らしていた
耐えられないこの空気に
俺の体が悲鳴を上げていたんだ
誰でも良い 俺を助けてくれ〜
ヴァルゴ
『お疲れ様です』
女生徒はコクリと頭を下げ
何処かに行ってしまった
・・・・・助かったのか?
ともかく
後はレベッカの部屋と
サラサとフタナの部屋だけだ!
こんな事さっさと終わらせないと
皆んなが帰ってきてしまうぞ!
レベッカの部屋に入った俺は
綺麗で飾り付けられた部屋を色々と調べた
豪華そうなティーカップに
何に使うか分からない物まで沢山ある、
それに
この部屋だけ凄く良い匂いがする
この仕事で薄汚れた俺の心を
綺麗に洗い流してくれるそんな香りだ...
イカンイカン!!
危うく我を忘れる所だった!!
こんな所で時間を無駄にする訳には・・・
急いで周りを調べ
怪しい物が無いか確認して
最後にクローゼットの中も調べた
貴族のお嬢様らしい衣服の数々が並んでいる
可愛らしい夜の寝巻きまである
引出しを調べると
他の機士には無かった大きな物がそこには合った
ネル
『こっ・・・これは・・・』
俺の小さな手を覆い隠すレベルの物が・・・
顔に近付けて見ると
俺の顔ぐらいのサイズがあるぞ
そう言えばレベッカは
ディナガード国の機士の中で
1番大きいのか・・・
レイナ達はともかく
サラサやナラでもこのサイズは無いだろう
顔に近づけた時に
ほのかに香る良い匂いが....
顔をニヤつかせ
デレデレしていた俺は我を取り戻し
持っていた物を地面に叩きつけた
ネル
『って!!こんな事してる場合じゃなーい!!
コレではタダの変態じゃないか!!!!』
レベッカの下着には男を魅了する
チャームの呪いでもかけられているのではと感じ
男の欲を抑えられなかった自分を悔い
俺は最後の調査する部屋
サラサとフタナの同部屋に向かった
ネル
『コレで最後か・・・
何故かこんなに疲れるとは・・・』
サラサとは長い付き合いだし
フタナには前に優しくしてもらった事もある
機士の女性陣は
ナラを省いて皆俺に厳しい奴らだ、
俺の寝床をアケミに取られた時、唯一
俺を部屋に泊めてくれたのはフタナだけだった
あんなに心優しい人物が
敵と繋がってる悪い奴なハズが無い!!
俺は自分の中で
フタナは白だと決めつけていた
サラサとフタナの部屋に入り
辺りを見渡すと、俺が前にサラサを怒らせ
仲直りにと取ってきた花が瓶の中に入れられ
机の上に置かれていた
それを見た俺は
何だか嬉しい気持ちになっていた
花は手入れされていて
今も大事に育ててくれていると見て分かる
ネル
『サラサ....』
サラサとは
初めて機士の依頼で魔物と戦った時も合った
レイナとの決闘の時も
サラサは俺の事を助け応援してくれた
あんなに喧嘩したりした仲だけど
サラサも俺の事を大事に思ってくれてると思えた
もし
俺がエレノアの事を好きでは無かったら
サラサの事を愛していたのかも知れない
俺はそんな事を考え
笑みを浮かべながらサラサの机や棚を調べていた
機士の仕事が忙しいのだろうか
服は綺麗に畳まれていなく
急いで片付けをしたと思える畳み方だ
俺はお婆ちゃんみたいに床に座り
顔をホンマリとさせながら
サラサの服を綺麗に畳んであげた
ネル
『まったく・・・あの子こんなに適当にして、
私が綺麗にしてあげなくちゃね〜』
完全にお婆ちゃんになっていた俺は
部屋の扉が開いている事に気付かずにいた
部屋の外から
「あっアンタ」と声が聞こてきて、
俺はお婆ちゃんの顔をさせながら
え?っと言い振り向いた
そこには
サラサやレベッカ
フタナやレイナ達の姿が・・・
俺の顔は徐々に元の顔に戻り
今の状況に合う顔付きになっていた
ネル
『どうしてお前達が・・・』
レベッカ
『ハヤトさんから、不審者が寮で
部屋を調べ回っていると
友達から聞いたと報告があって....』
レイナ
『来てみればアンタが居たって訳よ』
ハヤトの友達・・・・・まさか!?
あの時の女生徒か!!
しまった〜、完全に油断した
あんな静かそうで脳天気そうな顔で
しっかりと不審者だと思っていたのかよぉ
とんでもなくヤバイ状況に
俺の思考は動かないバルブの如く停止していた
ノノカ
『ネルさん・・・今貴方が持ってるのって・・・』
マル
『うわ〜』
ん? 今持ってる物?
俺は右手を見ると
さっきまで畳もうとしていたサラサの下着が....
可愛いピンクの下着を振り回しながら
誤解だと俺は言い訳をしていた
サラサ
『この変態がああああ!!!!』
サラサの右ストレートからの
左アッパーが直撃して
俺は寮の廊下に投げ飛ばされた
目の前にいた
唯一俺に優しいフタナに
誤解なんだと言うと
フタナは笑顔のまま俺に言った
フタナ
『流石に気持ち悪いな〜』
そっ....そんな....
その後
レイナや他の機士達の部屋に
侵入していた事もバレ
機士の人達にボコボコにされた俺は
寮の外に追い出されていた
目が覚めた時
俺はゴミ捨て場の中にいた
その後
デルクにこの事を報告すると
ご苦労の一言だけを言われ
俺は納得できず
ボコボコに変形させた顔を氷水で冷やしていた
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈73-3 お互いの秘密〉
▶︎サラサとフタナの部屋
ネルを寮から追い出した後
フタナは急いで引出しにしまっていた
内部者との連絡していた紙を
胸ポケットに閉まった
この場所なら見つからないと思っていたが
危うくネルに知られる所であった
汗だくのフタナは
後ろにいる人物に気が付き振り返った
そこに居たのは
学園に潜入していたヴァルゴだった
フタナは取り乱しながら
彼女に何か用かと聞いていた
ヴァルゴ
『危うく裏切り者が見つかる所だったな。
その紙は捨てろと言われていただろ?』
フタナ
『貴方には関係無いでしょ....』
その紙は
妹の姿をしたジェミニから受け取った物だった
フタナはその紙を捨てられ無かった
そう、フタナには
妹のフタマしか家族と呼べる人間はいない
フタマは自分が命に替えても
守らなければいけない存在
自分の生きる糧だった..
ヴァルゴ
『ネルに指示を出した人物が居る』
フタナ
『・・・いったい誰なの?』
ヴァルゴ
『分からない・・・デルクと呼ぶあの男か
機士の中に居る者かそれ以外か....』
今後注意するようにと
ヴァルゴはフタナに言い残し
何処かに歩いて行った
フタナは汗を拭きとり
妹からの手紙を握っていた
▶︎酒場 ネル視点
アケミとナナミの3人で
食事をしていた時に言われた
機士の人達から
ネルの悪評が広がっている
アンタ何やらかしたんだと
デルクに頼まれた極秘の任務で
俺は機士の部屋を調査した
結果は
敵と繋がる怪しい物なんて見つからず
俺だけが不審者だと皆に思われ
顔の原型が無くなるぐらいに痛めつけられた
半日で顔は戻ったが
今も顔がヒリヒリして痛い、
こんな仕事引き受けるんじゃ無かった
アケミ
『もしかして、
本当に女子の部屋に侵入したかっただけなの?』
ネル
『ちっ・・・違う・・・・・』
極秘の調査を頼まれたと
アケミやナナミにも教えるべきだろうか?
しかし
誰にもこの事は知られてはいけない
アケミとナナミが
敵と繋がる人物だとは思わないが
もしもの時がある・・・・・
だが
このままアケミ達に教えず
信頼してもらえ無い関係で良いのか?
俺達は仕事をこなすチームだ
一緒に山賊や魔業教団にも立ち向かった仲間だ...
もういいと
アケミは怒りながら食事を食べ始めた
怒るアケミと不安そうにするナナミに
俺はデルクから教えられた
外部の者と繋がる人物が居る可能性を教えた
アケミ
『え!?どう言う事よ!!』
ネル
『何故か分からないが
俺の訓練用魔装機を盗んだ者を手筈した者が
このディナガード国に居ると
デルクは考えている。
それが誰なのかは分からないが
魔装機大会で
ローズストーン国に居た俺達にはアリバイがある
だからデルクは俺にその調査を頼んだんだろう』
アケミとナナミは驚きながら俺の話しを聞いた
確かに
そんな怖い人物が身の回りに居ると思えば
怖くなるのも無理は無いが・・・
あくまで可能性の話しだ!!
誰も敵なんていないと俺は思っているし
俺の魔装機を盗んだのも
魔族の連中に違いないと俺は考えている
だが
何のために訓練用魔装機なんかを盗んだのかは
見当が付かないが・・・
アケミとナナミも少しは考えてくれたが
結局答えなんて分からなかった
アケミは飲み物を一口飲み
呆れた顔で俺の顔を見てきた
アケミ
『それにしても...
アンタって女性陣から人気無いわよね、
この国の機士の人達でアンタのこと好きな人って
誰もいないんじゃ無いの?』
ネル
『そんな事無いだろ!
俺の事が好きな奴だって・・・・イヤ待てよ?』
確かにアケミの言うとおりだ
俺の事を何とも思ってない人や
冷たい態度を取る人は多くても
優しくしてくれる人間は少ない
アイナやココ
体の小さな女性から好かれてはいるが....
唯一ディナガード国で優しくしてくれたフタナも
あの一件で完全に信用を無くしただろうし....
酒場のテーブルに頭を乗せガックリとしていると
それを見たアケミは何故か笑い
ナナミは心配そうに見てくれていた
▶︎ライルの研究室 ネル視点
翌日
俺はライル博士に呼ばれ
ライルの研究室に来ていた
マナリリアンの調子はどうかとか
そんな話しをしていた時に
ライルはあの事を話し始めた
ライル
『大変だったんだね、調査で
機士の皆んなから嫌われちゃったんだろ?』
どうしてライルがその事を!?
驚く俺にライルは教えてくれた
ナナミのメンテナンスをしてる時に
脳の回路を修理していると
ナナミの記憶や思い出がデータとして流れてきて
知っていたのだと....
ネル
『極秘の任務だったんだ、誰にも言うなよ!!』
ライル
『ごめんごめん、この事は秘密にするから』
俺は呆れながら辺りを見渡すと
白い服を着させられ
メディカルチェックをしていた女性が目に付いた
アレは?っとライルに聞くと
ディナガード国に現れた魔業教団と戦った時に
レベッカが連れ帰った魔女だと教えてくれた
魔業教団に脳を洗脳され
記憶や自分の名前すらも忘れた彼女を調べ
元に戻せないかと検査していたらしい
ライル
『人間を洗脳して戦わせる....
こんな恐ろしい力を使う者が居るなんて
僕は怖いよ・・・
力の使い道を誤った者が
この世界からいなくなって欲しいと
僕はそう願ってる』
ネル
『同感だな...』
しばらく
記憶を失った女性を見て気付いた
確かアイツは
デッドデスターに捕まった時に居た....!!
俺はその女性がデッドデスターの山賊
チュイと呼ぶ魔女だとライルに教えた
まさか
デッドデスターの生き残りが居るとは・・・
他の仲間は魔業教団に洗脳されて
全員死んでしまったが・・・
ライル
『彼女の精神はとても不安定なんだ、
名前を教える事で何か混乱を招くかも知れない
今は様子を見て、
大丈夫そうなら教えてあげよう』
・・・そうだな
目が何処か遠くを見つめ
全ての記憶が消えたチュイを見て俺もそう思った
そう言えば・・・
ライルはナナミの記憶を覗き
その情報で俺の極秘任務の事も知っていたよな?
って事は・・・・・
常にアケミと一緒に居るナナミは
アケミの着替える姿も
見た事があるって事だ・・・
俺は淡々とその事を口に出し考えていると
ライルは席を立ち上がり扉の鍵を閉めた
ネル
『・・・・・おいライル、まさかお前・・・』
ライル
『君にも秘密があるように僕にも秘密があるのさ、
この事はお互いの秘密にしよう...
安心してくれネル君、
僕はそんな変な事は考えていない
ちゃんと弁え方は知っているよ・・・・』
メガネを輝かせ不気味に笑うライルに
俺は何も言えなくなり 唾を飲み込んでいた
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈73-4 貴族で無い男〉
▶︎ディナガード領 南西 ネル視点
今日はライル博士に頼まれた仕事
薬草を採取する為に
ディナガード国から南西に離れた場所に来ていた
アケミもナナミも別の仕事でいないので
今回は俺とマナリリアンの2人だけだ
薬草が多く取れる平野で薬草を集め終え
俺はディナガード国に戻ろうと
マナリリアンを飛ばしていた時だった
地上で大人の男2人が
1人の男をいじめている様に見えた
仕方ないと思い
俺はマナリリアンを地上に下ろし
可哀想な男を助けてやる事にした
ネル
『ちょっとちょっと、いい歳した大人が
2人掛かりで見っともない、何やってるんだ!』
体の大柄な男性は
子供のお前には関係無い、何処かに行けと言った
俺はディナガード国の機士だと名乗ると
大柄な男と背の低い男は
俺の顔とマナリリアンを見て
貴方が噂の世界を救った!?っと驚いていた
ジャイオ
『ごめんなさい英雄様、私はジャイオ
こっちのはスネアンと言います』
スネアン
『イジメてたんじゃ無いですよ、
コイツが無茶苦茶な事を言うから
現実って奴を教えてあげてただけでして』
英雄と分かるとヘラヘラしだした2人に
俺は疑いの目を向け2人を睨んでいた
それにしても
ジャイオとスネアンなんて
国民的アニメの
イジメっ子みたいな名前じゃないか
2人はマナリリアンを見て
触っても良いですか?っと
嬉しそうに言ってきたので
汚すなよと俺は2人に言った
あの2人があんな名前なら
倒れているコイツはもしかすると
ノビから始まる名前なのでは!?
俺は少しワクワクとさせながら
倒れていた人を起こし 名前を尋ねてみた
シズカワ
『ありがとうございます、
自分はシズカワと言う普通の人間です....』
ネル
『ノビじゃ無いのかよ!!』
大声で叫んでしまった俺に
シズカワさんは疑問符を頭の上に出していた
よりによって
国民的ヒロインに近い名前なんて・・・
それより
普通の人間って言ってたよな?
アレってどう言う意味だ?
マナリリアンを見終わり
満足そうなジャイオとスネアンは
シズカワに言った
ジャイオ
『お前が貴族のダンスパーティーに参加するなんて
100億万年早いんだよ!!』
スネアン
『そうだそうだ!!
アンナさんは俺達のどちらかと踊るんだ!!
平民のお前は何処かの掃除でもしてろ』
2人はそれだけを伝え何処かに行ってしまった
はは〜ん なるほどね
だから普通の人間って訳なのか
シズカワには好きな人物が居るらしく
それは貴族のアンナと呼ぶ令嬢だった
しかし
平民の自分と貴族の彼女とでは釣り合わない
貴族のジャイオとスネアンに
彼女が取られてしまうと焦っていたそうだ
ネル
『なるほどね〜、そんな事が・・・』
シズカワ
『そうなんです。だけど、
自分はアンナさんの事を心から愛している!!
ジャイオとスネアンに
彼女を取られたく無い!!』
そうは言うが
異世界の貴族事情は俺には良く分からん
変に足を踏み入れても周りを混乱させるだけだ
今にもこの人は俺の足を掴み
ネルエモンと泣きついて来そうだと感じ
そうなんですね 大変ですねと
薄っぺらい返事をして
マナリリアンに戻ろうとした
シズカワ
『お願いです英雄様!!自分がアンナさんに
告白できる準備を手伝ってください!!』
ネル
『ホラきた..』
シズカワ
『聞くところによれば、英雄様は
ディナガード国のお姫様の心を
撃ち抜いたと聞き及んでいます!!
その秘訣を
自分にも教えてくださりませんか!!』
俺がエレノアの心を撃ち抜いたと言うか
エレノアが俺の心を撃ち抜いたと呼ぶべきか....
前にも恋愛絡みの手伝いをした事もあったし
・・・・でもアレは同性同士だったし
なんか一方的だったような....
ともかくだ!!
ここでこの人を見捨てるのは可哀想だ!!
俺にも出来る事があるか分からないが
何か手伝える事があるはずだ!!
シズカワさんは俺の顔を不思議そうに見ていた
どうしたのかと尋ねると・・・
シズカワ
『ごめんなさい・・・何故だか
英雄様と会った事があるような・・・
そうじゃ無いような不思議な気持ちを感じて...』
ネル
『は?何だよそれ?』
でも
シズカワさんの言った事は
何となく俺も分かっていた
心がポカポカするような温もりを感じる・・・
・・・・・いや、
俺じゃない俺の気持ちがそう感じている・・・
変な気持ちだ・・・なんだコレ?
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈73-5 女神の様な女性〉
シズカワさんに言われ
まずは令嬢のアンナさんに会って見る事にした
大きな屋敷の前に着き
シズカワさんは指を向け
アレがアンナさんですと教えてくれた
とても美しい女性だ
花に水をあげる彼女の姿は
美しい女神と見間違えるレベルだった
シズカワさんはアンナさんを遠くから見つめ
その場から動けずにいた
ネル
『コソコソしてても仕方ない
ちょっと話しかけてくる』
シズカワ
『英雄様!?』
こんにちはと元気に挨拶すると
アンナさんは優しい笑顔で挨拶を返してくれた
ディナガード国からやって来た機士で
今はこの辺りの調査をしていると
俺は適当な事を答えた
アンナ
『まあ、ディナガード国から!?遠くから
起こしてくださりありがとうございます』
ネル
『この辺りの街はどんな街なの?
大きな屋敷が多いみたいだけど』
アンナさんは心優しく教えてくれた
この辺りの街は貴族が多く住む場所で
平民と貴族が交わる
ディナガードで2番目に大きな街なのだと
なんでも
機士のレベッカの実家
アスフォルテ家もこの場所にあるそうだ
色々教えてくれていたアンナさん
ふと俺の顔を見てポカンとしていた
なんだ?シズカワさんと同じ反応して?
ポカンとしていたと思いきや
アンナさんは涙を流し始めた!!
ネル
『アンナさん!?』
アンナ
『ごっごめんなさい、
機士様の顔を見ていたら何故か涙を・・・
変ですよね私・・・』
確かに変だ・・・
変なのは俺もだ・・・
シズカワさんに初めて会った時と同じ
変な感覚を感じる・・・・・どうしてだ?
泣いているアンナさんを見て
シズカワさんはアンナさんの名前を
大声で呼びながら駆けつけて来た
シズカワ
『大丈夫ですかアンナさん!!』
アンナ
『シズカワさん...いらしたのですね
お恥ずかしい姿を....』
何処からともなく
綺麗な布を取り出したシズカワさんは
それをアンナさんに手渡した
2人は知り合いなのかと俺は聞くと
どうやらシズカワさんは
時々庭の手入れをしてくれる優しい人なのだと
アンナさんが教えてくれた
それだけ聞くと
シズカワさんがストーカーなのではと?
俺は思ってしまったが
何も言わないでおいた
アンナ
『そう言えば、シズカワさんも
ダンスパーティーに参加なさるのですか?』
シズカワ
『自分には.....』
無言のシズカワさんを見て
アンナさんは首を傾けていた
コレからダンスの練習があるので
私はコレでと言いアンナさんは何処かに行った
後ろ姿のアンナさんを見ても
俺の心は何処か懐かしく寂しくも感じていた。
何だこの気持ち?さっきからズッと変だ!
心がモヤモヤするようなそうじゃ無いような...
モヤモヤする俺に
シズカワさんはまさかと顔を青ざめさせ
俺に聞いてきた
シズカワ
『英雄様もアンナさんの事が・・・』
ネル
『違うよ!!』
そうじゃ無い
コレは好きだとかそう言う感覚とは違う
家族の温もりに近いそんな好きの感覚だ....
とにかくだ!!
ダンスパーティーに参加して
アンナさんと踊るのが今回の目的に成る!!
ダンスを成功させ告白も成功させる!!
コレで全て丸く収まる・・・多分!!
俺はシズカワさんに
ダンスの経験があるのかと尋ねると
シズカワさんは顔を赤らめ
まったくと答えていた・・・・・
コレはめんどくさい事を引き受けてしまった
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈73-6 ダンスパーティー〉
シズカワさんをマナリリアンに乗せ
俺達はディナガード国に向かう事にした
ネル
『しっかり掴まっててくださいよ』
シズカワ
『英雄様!!そっ空を飛んでる!!』
怖がるシズカワさんをディナガード国に運び
まず始めに俺達は
1番貴族っポイ機士のレベッカに会いに行った
レベッカはあの一件以来
俺をゴミの様な顔で睨んできたが、
俺は必死に頭を下げ
この人にダンスを教えて欲しいと頼んだ
凄く下手に回る俺を見て
大丈夫なのかとシズカワさんは心配していた
シズカワ
『英雄様・・一体何をやらかしたのですか?』
ネル
『ちょっとね....』
困っているシズカワさんを見て
レベッカは仕方ないと
ダンスを1から教えてくれる事になった
▶︎数時間後
暇な時間を使い
ライルに頼まれていた薬草を届けた俺は、
ダンスの練習をする
レベッカとシズカワさんの元に戻った。
レベッカ
『全然ダメですわ!!
腰の使い方が成っていません!!』
シズカワ
『ごっ・・・ごめんなさいっ・・・』
息を切らせたシズカワさんを横目に
俺は順調そうなのかとレベッカに聞いた
レベッカ
『この調子なら
後10年は練習しないと行けませんわね』
ネル
『10年!?』
そんなに待ったら
アンナさんが他の人に取られてしまう
何とか早く練習を終わらせられないのかと
俺は無茶を言っては見たが、
無理だとレベッカは言い切った
シズカワ
『自分はいつもいつも勇気を出せず
アンナさんにも告白できない臆病者だった!!
今回はそんな自分を捨て
ダンスを綺麗に踊れる男になりたい!!
お願いします!!
もう少し練習に付き合ってください!!』
真剣な眼差しでそう言うシズカワさんに
レベッカは2つ返事で了解してくれた
レベッカ
『ただし!!今からはハードに教えますわよ!!』
シズカワ
『お願いします!!』
こうして
ダンスパーティーまでの月日が過ぎた
そして・・・・・
▶︎ダンスパーティーの会場 ネル視点
シズカワさんは
レベッカが用意してくれた紳士用の服を着て
俺はエレノアが用意してくれた服を着て
貴族のダンスパーティーの会場に来ていた
髪型もカッコよく整えていた俺達を
さっきまでの平民と子供の男とは
見間違える者は居ないだろう!!
貴族の女性A
『ちょっと見てあの子!!
凄く幼そうなのにカッコよくオシャレして』
貴族の女性B
『背伸びしてる感じが可愛い!!
色付きたいとか思ってるのかな?』
・・・・・まあいい
今回の主役は俺じゃなくてシズカワさんだ!!
俺はシズカワさんに
もう俺に出来る事は無い!!
頑張れ!!練習の成果を見せてやれ!!
そう言って元気付けた
俺に出来る事って言ったが
やった事と言えばシズカワさんを
レベッカに会わせただけだが・・・
ジャイオ
『やっぱりお前も来たのか』
スネアン
『何だその格好は?
服でも盗んで来たのか?』
シズカワ
『ジャイオ・・・スネアン・・・』
この2人も来ていたのか
大丈夫だシズカワさん!!
今のシズカワさんは一皮剥けた
スーパーシズカワさんだ!!
ダンスまでは時間がある
パートナーを探しに
男性陣達は貴族の女性に挨拶をして
ダンスの相手にとアピールしていた
ネル
『言って来いシズカワさん、
アンナさんのハートを射止めるんだ!!』
シズカワ
『ハイ!!』
カッコ良く返事をしたシズカワさんは
アンナさんに近づいて行った
そこだ!!イケ!!
そう俺はヤジを飛ばし続ける
食事を食べる素振りを見せ 近寄り
服の皺を綺麗にするフリを見せ 近寄り
数歩下がって 近寄り・・・・・ん?
シズカワさん元気良く返事はしたが
アンナさんに声を掛けられないでいる....、
何やってんだ!!
そんなんじゃアンナさん取られてしまうぞ!!
ふと何かに気が付き
俺はジャイオとスネアンを見た
2人は飲み物に何か薬を入れ
それをウェイトレスに手渡した....まさか!?
ウェイトレスがシズカワさんに
お飲み物をと渡そうとしたので
俺は慌てる子供の真似をして
ウェイトレスにワザと体当たりをした
飲み物がアンナさんの服に飛び散るのを
シズカワさんはアンナさんの手を引っ張り
アンナさんを助けた
アンナ
『あっありがとうございます』
シズカワ
『服が汚れなくて良かった』
アンナ
『シズカワさん!?』
割れたグラスの中から
丸くて怪しい薬の様な物が・・・・
あの野郎共!!やりやがったな!!
コレをシズカワさんに飲ませて
何かさせるつもりだったんだろ!!
ジャイオ
『コレでアイツも終わりだな』
スネアン
『数秒後には腹が痛くなって
今夜はトイレでダンスパーティーですよ』
俺はバレないよう
ジャイオとスネアンのグラスに
粉々にした白い薬を入れた
そうとは知らない2人はグラスの飲み物を飲み
数秒後にはトイレから出てこなくなっていた
ザマァ見やがれ!!
今夜のお前らのお相手は
自分の尻と踊るんだな!!
シズカワ
『僕と踊っていただけますか?』
アンナ
『喜んで』
ダンスの時間が始まった
貴族の人達は皆
ある2人の男女に目を奪われていた
キレキレの踊りを踊るシズカワさんは
完璧にアンナさんの踊りをサポートさせていた
貴族の女性
『なんて美しい踊り・・・・
まるでアスフォルテ家さんの令嬢さん見たい....』
貴族の男性
『あぁ・・・完璧なダンスだ・・・』
当たり前だろうよ
そのアスフォルテ本人様が
叩き込んだ踊りなんだからな
後から知ったんだが
レベッカは毎年、ダンスパーティーで
踊りの賞を取っていたそうだ
そんな凄い人に教えられ
シズカワさんも嬉しかっただろうよ。
まぁ
そんな事知らずに俺がレベッカに頼んだんだが
曲の終わりが近づくと
シズカワさんはアンナさんに告白をしようとした
シズカワ
『アンナさん・・・・・
自分はアンナさんの事を・・・!?』
その時だった
アンナさんはシズカワさんの口にキスを交わし
私もそうでしたと答えた
2人のキスでダンスパーティーは幕を閉じ
今夜のベスト男女の受賞者は
シズカワさんとアンナさんに決まった
2人のカップルの誕生に
皆は拍手を送っていた
アンナ
『アンナ・プーリオ、
この名を受け取って貰えますか?』
シズカワ
『もちろんだよ』
この世界では
男性が女性の苗字を受け継ぐ
平民のシズカワさんは
貴族のアンナ・プーリオの苗字を貰い
シズカワ・プーリオって名前になるのだ
ん?プーリオ?
何処かで聞いた名だな?
・・・・・・・・・・まぁいいか!!
今夜は喜ばしい日なんだ!!
2人の夫婦に乾杯だ!!
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈73-7 悪役令嬢〉
プーリオ夫婦はダンスパーティーの後
直ぐに結婚して籍を入れるそうだ。
コレでハッピーエンド、全て解決!!
そう思われていたのだが・・・
▶︎アンナさんの屋敷 ネル視点
俺はアンナさんに呼ばれ屋敷に招かれていた、
俺に感謝の言葉でもくれるのかとそう思っていた
いたのだが・・・
態度の悪い令嬢
『アンナさん!!あの夜はよくも
私のダンスパーティーの
邪魔をしてくださいましたわね!!』
ネル
『・・・・・』
この怒ってる貴族の女性は
ベアリス・ハッシュバトンと言う名の
貴族の令嬢だ
何でも
あの夜のダンスパーティーで
賞を取るハズだった貴族の女性だったらしい
ベアリスとその婚約者は完璧なカップリングで
貴族の皆からも一目置かれているそうだ、
シズカワさんと
アンナさんの完璧なダンスを見るまで
この2人が賞を受け取るのだと
皆そう思っていたそうだったらしい・・・・・
詰まるところ
ベアリス令嬢はアンナさんとシズカワさんに
完璧なダンスをして自分達の賞の邪魔をしたと
イチャモンを言いに来た訳だ...
良く言う悪役令嬢って奴だな・・・・
まぁこう言うタイプの人間は
何処かで
痛い目を見て悔しがる人生なのだろうが...
イヤ待てよ?
最近の悪役令嬢は主役級の才能が有り
最終的に美味しい所を
掻っ攫うタイプだったような・・・・・?
ネル
『悪役令嬢・・・
コレは最強の相手と言える・・・』
アンナ
『機士様?どうかなさいました?』
アンナさんは
悪役令嬢ベアリスと
仲を深めたいと言っていたのだが
ある一言が気に障り
その言葉を取り消して欲しいのだと言った
ベアリス
『アンナさん!平民の汚らしいあの人は
アンナさんに相応しくはありません!
結婚を取りやめるべきですわ!!』
アンナ
『シズカワさんの悪口は言わないでください!
私は絶対にシズカワさんと結婚します!!』
ベアリス
『無理ですわ、私が教会の人にも
貴方の親や身内にも根回しをしました。
ハッシュバトンの名を言えば
誰も私に反対する人なんていませんですわ。』
アンナ
『お願いです機士様!!私と一緒に
ベアリスさんを説得してくださいませ!!』
っと 今回の依頼主は
貴族のアンナ・プーリオさんからだ
この悪役令嬢を説得させ
アンナさんとシズカワさんの結婚を
全員に認めさせるのが俺の役目って訳か・・・
無理だと言いたいけど
2人の恋を取り持ったのも俺だし・・・
なにより、
アンナさんとシズカワさんには
心の奥底から幸せになって欲しい
そう思う謎の感情を感じる
それにこの2人が結婚出来なければ
自分の存在が消滅してしまうと何故か思っていた
ネル
『悪役令嬢さんはどうしたら
2人の結婚を認めてくれるんですか?』
ベアリス
『アクヤク?何ですって?』
ネル
『ごめんなさい、言い間違えました』
2人の結婚をどうしたら認めてくれるのかと
俺はベアリスに質問するとベアリスは言った、
殿方は強く賢く有るべきだと・・・
つまり?
ベアリス
『私のフィアンセと
チェイスの勝負をしてください。
もし勝負に勝つ事ができれば
貴方達の結婚でも何でも認めて差し上げますわ』
ベアリスが言ったチェイスってのは
この世界のチェスに似たボードゲームの事だ、
その勝負に勝てば
結婚を認めてくれると言っていたな
なんだ簡単そうじゃないか!
物覚えが良い努力家のシズカワさんなら
この勝負勝てるんじゃないのか?
そう落胆的に考える俺とは真逆に
アンナさんの顔色は凄く良くなかった
ネル
『どうしたの?』
アンナ
『ベアリスさんの婚約者さんは
チェイスの全国大会で2位の実力者なんです...
そんなの・・・・無理です・・・・』
ベアリス
『オーホッホッホッ!!』
チェイスの全国大会2位!?
そんな相手にシズカワさんは勝てるのか?
大きな声で高笑いするベアリスに
凄く悲しそうな顔をするアンナさん
クソ〜悪役令嬢め!!
徹底ぶりの悪役ムーブだぜ!!
ベアリス
『勝負は明日の午前、
それまでに少しは鍛えるのですわね!!』
ネル
『明日だって!?時間が少な過ぎる!!』
ベアリス
『貴方達が勝てばいいだけなのですから
コチラも条件を付けさせて貰っても
何も不公平だとは思いませんわ?』
ネル
『グヌヌ』
さらに大きな声で
高笑いする悪役令嬢ベアリスは
その事を伝え終わると
屋敷を出て帰って行こうとした
ここまで意地悪な相手に
俺も何だかムカムカして来たぞ!!
世間の悪役令嬢大人気ムーブなんか知るか!!
俺はあの女の泣きっ面を拝んでやりたい!!
コテンパンにしてギャフンと言わせたい!!
そう思いながら目の内に炎を燃やしていると
悪役令嬢ベアリスは玄関で転び
鼻を床に直撃させ「ギャフン‼︎」っと言った
アンナ
『大丈夫ですかベアリスさん!!』
ベアリス
『痛いですわアンナさん、
鼻がヒリヒリとしますわアンナさん』
涙目の彼女に
アンナさんは優しくベアリスを別室に運んだ
ありがとうとか私の友達はアンナさんだけだとか
言っていたベアリスを見て
2人とも仲の良い友達なんだなと俺は思っていた
それより明日の午前までに
シズカワさんをチェイスマスターにしないと
この勝負始まる前から終わってしまうぞ!!
タイムリミットは今日だけ
何とかなるのか?・・・・・
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈73-8 チェイスマスター〉
シズカワさんに会いに行った俺は
早速チェイスが
どれぐらいできるのかと聞いてみた
ルールは知っているが
そこまで対戦をやった事無いと言っていた、
なるほど・・・コレはアレだな・・・
ネル
『ローズストーン国に行くぞ!!』
シズカワ
『ローズストーン国にですか英雄様??』
そう、ローズストーン国は人口も多く
チェイスを最初に作られた場所だと聞いた
そこに行けばチェイスに詳しい誰かに
レクチャーしてもらえるかも知れない
シズカワさんをマナリリアンに乗せ
ローズストーン国まで飛ばしたが
空を飛ぶ感覚に慣れていなかったシズカワさんは
また凄く怯え叫んでいた
▶︎ローズストーン国 ネル視点
ネル
『ローズストーン国に来たわ良いものの・・
さて、どうするか・・・』
勝負の時間まで残り少ない
多くの時間を練習に費やしたい・・・
乗り物酔いで倒れているシズカワさんを横目に
俺はどうするか
コレからの事を考えていた
キサラギ
『どうしたのこんな所で?』
そう言って現れたのは
ローズストーン国最強の機士のキサラギだった
キサラギは機士の中では最強かも知れないが
頭脳戦で戦うボードゲームでは最強とは限らない
俺は冗談半分で
「チェイスって強かったりします?」
っと聞いてみた
分かっている、
キサラギがボードゲームをやる
タイプの人間じゃ無いって事は・・・
キサラギ
『ゲームがやりたいの?』
ネル
『チェイスが強い人を探してるんです、
大丈夫です...自分達で強い人を探しますから』
キサラギ
『それなら私に着いて来なさい』
ネル
『え?』
まさかキサラギはチェイスも最強なのか!?
俺とシズカワさんは
ダイヤモンド隊の寮に案内され
フリースペースにチェイスの盤を置き
キサラギは誰かを呼びに行った
ん? キサラギがやるんじゃないのか?
連れて来たのは
ダイヤモンド隊のタナミア副隊長だった
ネル
『タナミアさんがやるの?』
タナミア
『あぁ、隊長に言われたからな』
オイオイ・・・・・確かにタナミアは強そうだが
俺達が戦はなければいけない相手は
全国2位の男だぞ!!
こんな所で暇している時間は無いのだが・・・
仕方ないと思った俺は
シズカワさんに練習だと言って
チェイスをプレイさせてみた
タナミア
『チェイスの経験は?』
シズカワ
『少し触った程度です....』
タナミア
『分かった』
黙々と2人は駒を動かし
チェスに似たボードゲームをプレイした
チェイスには
ルークとキングの駒が無いチェスと同じゲーム、
3回相手の駒を取れれば
取られた駒を1つ戻せるといった
特殊なルールもあるそうだ
将棋やチェスはそこまで詳しく無い
静かに駒の置く音が響くその場所で
俺は昼寝をしながら待たされていた
1時間近くが経過してやっと勝負は終わった
結果はシズカワさんが勝ち
タナミアは驚いた表情で負けていた
時間は今日1日だけだ
この国で1番チェイスの上手いプレーヤーを
探さなければいけなかった俺は
シズカワさんの手を取り
この場を後にしようとした
ネル
『もういいでしょ、時間が無いから俺達は行くよ』
タナミア
『もう一回勝負させろ!!』
ネル
『だから時間無いんだって俺達は』
タナミア
『もう一回勝負させろと言ってる!!!!』
ネル
『あっ...ハイ...』
なんて迫力のある言葉なんだ・・・
驚きビビってしまった俺は
何も言わず また2人の試合を見ていた
さっきと同じ雰囲気で駒を動かすシズカワさんと
さっきとは違い
真剣な瞳で時間を掛け駒を動かすタナミア
オイオイ・・・
これはさっきより時間がかかりそうだぞ・・・
仕方ないと思った俺は
また昼寝をしていた
どれくらい眠っていたのかは分からないが
とても良い夢を見た
大人になったエレノアは
俺の好みの女性になっていて
美味しい食事をあ〜んさせてくれた
どうやら
楽しい新婚生活を送っているようだ
夢の中のエレノア
『食事の後は何になさいますか?』
夢の中のネル
『食事の後?』
エレノアは席を立ち上がり
着ていた服をシュルシュルと脱ぎ始めた
俺はゴクリと唾液を飲み込み
目を大きく開かせながらその光景を見ていた
エレノアはあと少しの所で服を脱ぐのを止め
続きは寝室で...っと言った!!
俺は満面の笑みで
ベッドに横たわるエレノアにダイブする所で
タナミアの大声で夢から覚めた
タナミア
『何故だ!!』
ネル
『は!!、ここは!!俺のエレノアは!?』
良い夢を見ていたのに起こされてしまった・・・
てか寝てる場合じゃ無いだろ!!今の時刻は!?
時計を見てみると
もう既に時計の針は夜の時刻に変わっていた!!
マズイ!!こんな所で
時間を無駄にしてる場合じゃ無かった!!
俺はシズカワさんに
直ぐに次の対戦相手を探すように言うが、
シズカワさんは凄く眠たそうな顔をして
ムニャムニャと返事にならない返事を返した
ネル
『バカ!!寝てる場合か!!
コレじゃあ
明日の対戦相手に負けちまうぞ!!!!
アンナさんを悲しませるつもりか!!!!』
シズカワ
『ごめんなさい英雄様・・・
自分はもう限界見たいです・・・』
シズカワさんは完全に眠りに就いた
ダンスの練習の時は全力で取り組んでいたのに
今回はどうしてそう簡単に諦めるんだ!!!!
俺は情け無く思い
自分で自分の頭を叩いていた
タナミア
『大丈夫だネル、
その男は明日の試合には負けない』
ネル
『明日の対戦相手は全国2位の男なんだよ!!
こんなんじゃ勝てっこ無い!!』
タナミア
『そうか・・・・・それは明日が楽しみだな』
ネル
『楽しみなもんか!!!!』
こうして夜は更け
絶望の朝がやって来た
▶︎チェイス会場 ネル視点
ベアリスが用意してくれた会場には
多くの貴族達が集まり
シズカワさんとベアリスの婚約者の試合を
楽しみにした様子で集まっていた
ベアリス
『アンナさん、美味しいお菓子を用意してますわ
どうぞ食べてくださいまし』
アンナ
『ありがとうございますベアリスさん』
楽しそうに
試合が始まるまでの時間を過ごす2人
オイオイ 相手は敵同士だろ?
そんなに仲良くしてていいのかよ?
俺はその事を口に出し2人に言うと
2人はキョトンとした顔になっていた
ベアリス
『どうして?私達は仲の良い親友ですわよ?』
アンナ
『ベアリスさんは私の彼が認められないだけで
私を嫌いになった訳じゃありませんから』
ネル
『は?』
ベアリス
『こんなに可愛いアンナさんを、
何処の誰かも分からない
馬の骨なんかに渡せませんわ!!、
だから確かめる必要があったのですわ!!』
ネル
『・・・・・』
この勝負・・・
勝っても負けてもどうでも良くなってきた
って言っても
相手は全国2位のチェイスマスター
こっちに勝ち目なんて最初から無いけどな
俺の考えと同じ事を
周りの貴族達は口に出し言っていた
試合の時間が近づくと
タキシード姿のシズカワさんが現れ
対戦相手のベアリスの婚約者も現れた
フィンセ
『初めまして、ベアリスのフィアンセの
フィンセ・アスフォルテです。』
シズカワ
『どっどうも、シズカワです...』
ベアリスさんの婚約者の人
清々しいほどのハンサムだ
それに比べ
シズカワさんはオドオドとして情けなく見える
チェイスが始まると
観客達は皆無言で試合を観ていた
俺も呑気に試合を眺めた
用意された食事を食べながら
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
そして時間は過ぎ
観客達はザワザワと静かに騒ぎ始めた
ん?どうした?
もう負けたのか?
そう思っていると
どうやら俺の考えは全て間違っていたと分かった
フィンセ
『参りました』
ネル
『え!?』
俺の中の時間は止まった
周りはザワザワと騒いでいたが
周りより人一倍大きな声で俺は叫んだ
「ええぇぇぇえええ!!!!」
驚いていたのは
アンナさんとベアリスもだった
ベアリス
『どう言う事ですの!?』
シズカワ
『それが・・・』
シズカワさんは
昨日俺が寝ていた時の事を教えてくれた
シズカワさんが対戦していた相手は
全国大会1位のチェイスマスターだったらしい
最初は手加減してくれていたが
あまりのシズカワさんの強さに
徐々に本気を出していったのだそうだ
勝ったり負けたりを繰り返しながら
最終的にはシズカワさんの圧勝!!
最強のチェイスマスターを倒していた.....
ネル
『まさかタナミアが全国1位の奴だったとは....』
シズカワ
『ありがとうございます英雄様!!
自分に最強の相手を用意してくださり!!』
ネル
『・・・・・まあね....』
アンナさんとシズカワさんの結婚は認められ
ベアリスとフィンセとも仲良くなったそうだ...
・・・・・・・・・・
まあ全て丸く収まり コレでこの話しはおしまい
俺はもう2度と
シズカワ夫婦とは会う事が無いだろうと思い
ディナガード国に帰った
そして次の日....俺はまた
シズカワさんとアンナさんに呼ばれたのだった....
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈73-9 孤独の貴族〉
▶︎ディナガード領 南の土地 ネル視点
ディナガード国より遥か南
小さな集落があるその場所より少し進んだ場所に
海の見える崖の上に、大きな屋敷が佇んでいた
屋敷のメイド
『お待ちしておりました、コチラにどうぞ....』
屋敷のメイドに連れられ
大きな部屋に案内され
この場所で少し待つようにと言われた
コチコチと古時計が時を刻み
耳を傾けると波が岩山にぶつかる心地良い音も..
コレは昨日の出来事だった
▶︎昨日 ネル視点
ネル
『え?、会って欲しい人?』
アンナさんとシズカワさんに呼ばれた俺は
唐突に会って欲しい人が居ると言われた
もうこの2人に関わりたく無いと思っていたが
2人はどうしても俺に頼みたいと言っていた
シズカワ
『お願いです英雄様、アンナの頼み事を
聞いて貰ってはくれませんか?』
アンナ
『どうかお願いします英雄様』
ネル
『・・・・・』
嫌だと言ってやろうと思ったが
俺の感情とは別に
俺の魂が聞き入れろと言ってるように感じた
ハァァァァー、仕方ない
今回も面倒事に巻き込まれてやるかぁぁぁー
・・・・・それより
シズカワさん、
アンナさんの事を呼び捨てにしていたな
呼び捨ての事に付いて俺は2人に質問すると
ネル
『なんで?』
シズカワ
『それは・・・・・ねぇー』
アンナ
『ウフフ』
アンナさんはお腹を優しく触り
シズカワさんもアンナさんのお腹を触っていた
まさかコイツら!!やったのか!?
俺より先に卒業したってのか!!??
熱く見つめ合う2人は
次の瞬間 口と口を重ね合わせた
濃密なキスをする2人
俺は恥ずかしくなり顔を赤らめた
なんだろ、親同士のキスを
見させられている感覚がして気持ち悪い
何故だか2人の口から
クチュクチュと音が聴こえ
俺は2人の口と口の間にチョップをして
キスを辞めさせた
ネル
『やめーーーい!!』
アンナ
『キャッ!』
シズカワ
『どうしたのですか英雄様!?』
どうしたもこうしたもあるかい!!
子供の姿の俺の前でなんて物見せつけるんだ!!
俺は話しを戻し
誰に会ったら良いのかと質問した
アンナさんは言った、
この場所より遠く離れた場所に
貴族の老人が1人で住んでいる屋敷がある、
その人は人と変わる事はせず
もう寿命も残りわずか
可哀想なその人は
心優しく何でも引き受けてくれる者が居たら
教えて欲しいのだと言っていたそうだ
▶︎老人の屋敷 ネル視点
っと言う訳で
心優しいネルさんは
そんなバカな頼み事を引き受けたって訳だ
・・・・・何やってんだ俺って...
それにしても・・・
こんなに大きな屋敷なのに
人はさっきのメイドだけなのか?
他に人影らしき者は見受けられないが・・・
そうこうしていると
またさっきのメイドが現れ
準備が出来たので
コチラへと俺を何処かに案内した
大きな階段を登り
沢山の扉が並ぶ長い廊下を進み
奥の部屋にたどり着いた
その場所には
ベットの上に横たわり
窓から海を眺める年終えた老人が・・・
屋敷のメイド
『お客様を連れて参りました』
貴族の老人
『・・・・・通せ』
俺は部屋に招かれ
メイドが用意してくれた椅子に
ありがとうと言って座った
老人は俺の顔を見る事無く
名前は?っと聞いてきたので
ネルと俺は名乗った
貴族の老人
『・・・・・』
ネル
『・・・・・?』
貴族の老人
『・・・・・』
ネル
『貴方のお名前は?』
貴族の老人
『何故お前に教えなければならない』
えぇぇー
歳を取ると頑固になると聞いた事があるが
この人はそう言う人なのだろうか?
だが
年寄りには優しくしろと
親や会社の上層部の人達から言われていた
ここは我慢して
人探しをしていた理由を聞いてみよう!!
俺はアンナさんから聞いた事をそのまま言うと
そうだったなと老人は言って
ベットの下をゴソゴソと何かを探していた
ジャン!!と言って取り出したのは
文字が書かれたフリップだった
フリップを取り出すと同時に
メイドは口で効果音を鳴らしていた
貴族の老人
『ジャン!!どうだ?』
屋敷のメイド
『ドンドンパフパフ〜』
ネル
『・・・・・』
フリップにはこう書かれていた
【海辺で世界1綺麗な石を拾ってこい】
どう言う意味だ?
ネル
『えっと・・・どう言う意味なのですか?』
貴族の老人
『いいから早く探しに行け』
なんだコイツ!!
そのまま帰ってやろうか!!
俺はプンスカとさせながら
海辺の近くで綺麗な石を探していた
ネル
『まったく意味が分からねぇ!!
世界1綺麗な石って何々だよ!!』
ブツブツと言いながら数分後
そこそこ綺麗な石を見つけた俺は
コレでいっかと考えていた
ネル
『・・・・・』
俺はその石を捨て
他の石を探し始めた
あんな事を言われ
適当な石なんか持っていけない・・・
いや!!
もっと凄い石を探しだして
とんでもなく驚く顔を拝んでやる!!
そうしないと気が済まない!!
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈73-10 人に必要な物〉
夕日がゆっくりと沈んでいく海辺で
俺は世界1綺麗な石を探し奮闘していた
そこそこ綺麗な石は見つかったが
まだこんな物では満足できない、
あの老人を驚かせるような石を探さなければ
石を探していると
近くの村の漁師が俺を見つけ声をかけてきた
漁師の叔父さん
『あれま〜お前さん、
まさかあそこの家の貴族に
石を探せと言われ本当に探してるのかい?』
ネル
『え?そうだけど・・・・
叔父さん何か知ってるの?』
漁師はやめとけやめとけと2度言葉を繰り返し
あんな変わり者の相手をしても
時間の無駄だぞと言った
あそこに居る貴族の老人は
少し有名な人物らしく、
誰にでも冷たい態度を取り
雇っていた執事やメイドにも厳しく
皆あの老人の元を離れてしまったらしい
ディナガード国に住まないかと機士の人達に
話を持ちかけられた時もあったそうだが
その人達を追い返し
今もあの場所で1人寂しく暮らしているそうだ
1人だけメイドも居るが
あの変人に付き合うメイドも薄気味悪いと
村の人達から言われていると漁師は言った
漁師の叔父さん
『何も良い事なんかありゃせん、
お前さんも酷い目を見る前に
帰った方が良いわい』
ネル
『教えてくれてありがとう』
漁師は帰って行ったのを見て
さてと と言葉を吐きながら俺は立ち上がった
ネル
『・・・・・』
帰ろうか・・・・・とは思わなかった
酷い態度をとるならとるで構わない!!
俺は任された依頼を
最後までやり遂げるだけだ!!
そうして
夜の砂浜で石を探す俺
夜の光に照らされ1つの石が翡翠色に輝いていた
ネル
『コレは・・・・・!!』
俺はその石を持ち
あの老人の部屋に向かった
ネル
『コレでどうだ!!世界1かは分からないが、
この辺りで1番綺麗な石を見つけたぞ!!』
自信満々の俺の顔を見て
チラリと翡翠に輝く石も見て
老人は窓の外を眺めながら言った
「そんなゴミを持ってきて何を騒いでいる」...と
は!?
探せって言われて探してきたんだろうが!!
俺は老人に文句を言った
確かにこの石は
世界1綺麗な石では無いかも知れないが
それでも
ここまで頑張った人間に言う言葉なのかと
何が納得できなくて
何が気に食わないのかは俺には分からない、
アンタが心を開いてくれないと
こっちだってその扉の中に入れないのだと!!
貴族の老人
『ハッキリと自分の気持ちを
伝える事もできると.....なるほど....』
老人はゴホゴホと苦しそうに咳き込み
大丈夫なのかと俺は側に駆け寄った
ヲルフ
『ヲルフ・グレット・・・名前だ・・・』
ネル
『え?』
ヲルフ・グレット そう老人は名乗った、
下に居るメイドはルーチアと教えてくれた。
どうして今名前を?
そう俺は考えていると
老人は昔話を話し始めた
⭐︎
この辺りには大きな町や村が多く
ヲルフ・グレットは
領主として土地の管理をしていた
他の町や村から食料や木材
鉱石や糸などといった物資を買い
自分の町や村の人々の暮らしを豊かにしていった
しかし その時は突如現れた
ローズストーン国から流れてきた
大型の魔物の群れに
町や村は次々と破壊されていく・・・・・
ヲルフ邸で雇っていた機士に
魔物の討伐を依頼したが、
既に
残された物は何一つ残されてはいなかった...
妻も子も
その時に亡くなった
ヲルフさんはその時から
人に厳しく接するようになった
残された執事やメイド
町や村の人間はヲルフの元を離れた
残ったメイドは
孤児だった時に拾ったルーチアだけだった
ルーチアはヲルフに拾われた恩を返すため
一生を捧げ尽くした・・・・だが、
ヲルフは既に70を超えた老人
ルーチアはまだ若かった....
誰にも優しくする事を辞めたヲルフ
そんなヲルフに愛を尽くし世話を続けるルーチア
自分の寿命が残り僅かと知ったヲルフは
自分の財産や屋敷を引き継ぎ
貴族としてルーチアを預けられる者を探していた
⭐︎
ネル
『ルーチアにこの屋敷を
引き継がせようとは考えなかったのか?』
ヲルフ
『ルーチアは孤児だ...孤児だった者が
私の後を引き継ぎ貴族になったとしても
周りの貴族からは冷たい目で見られる....』
そう言う事だったのか・・・・・
人に優しくしても
その者が死ねば何も残らない、
ヲルフさんに近付く人物達は
ヲルフさんの財産に目が眩んみ近寄る者にしか
見えなくなっていたのかもな・・・・・
心優しい人を探していたのも
自分の全財産・・・ルーチアさんを
任せられる人物を探していたって事だったのか
ヲルフ
『聞くところによれば、
お前は金を必要としているらしいな?
窓の外から必死に石を探すお前を見ていた...
お前なら私の全てを任せても良さそうだ』
ネル
『全て知ってたのかよ』
ヲルフ
『頼む・・・私の屋敷を引き継ぎ
貴族としてこの土地を守ってくれ....
ルーチアを1人にさせないでくれ』
ヲルフさんが死ねば
この土地は他の者に渡るのかも知れない
無条件で金が手に入り
貴族になれるのなら俺にとって最高の展開だ
だが・・・・・
ネル
『グレットの名は受け継げない、
この場所はずっと貴方だけの物だ』
ヲルフ
『・・・・・残念だよ』
ネル
『金も屋敷も貴方の物だ、
機士として俺を雇い その報酬として
屋敷を使わせてくれるなら構わないけどな』
ヲルフ
『お前.....!!』
ヲルフさんが死んだ後も
俺はこの屋敷とルーチアさんを守る代わり
残された遺産を給料として少しずつ貰っていく
こんな豪華な屋敷に住むヲルフさんなら
俺を雇う金には困らないハズだ
部屋もいくつもあるし
ルーチアさんだけじゃ掃除だって大変だろう
アケミやナナミを連れ
この屋敷を綺麗にしてやるよ
ヲルフ
『・・・・・好きにしろ』
ネル
『ヲルフさんの金が無くなった時、
その時は俺がこの屋敷を買い
俺が貴族としてこの屋敷に住まわせてもらうよ』
ヲルフ
『フフ....』
ヲルフは少し笑いながら
目を閉じ深い眠りに就いた
しばらくすると
メイドのルーチアが部屋に入ってきて
眠りに就いたヲルフの手を握り涙を流していた
グレット邸の機士として
俺はこの場所に住む事になった
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