9章 生まれたこの世界は 70話-闇に潜む者達
〈70-1 魔族〉
俺は.....俺達は何のために存在しているのだ
長く続く魔王の時代が終わり
人と他種族が平和に暮らしていた時代も終わり
国同士の争いの時代も終わった
人も・・・エルフも・・・ドワーフも・・・
竜人も魔物も魔族も・・・
争いを好み戦い続けてきた生き物だ・・・
争いが始まり・・・終わり
また争いが始まり・・・終わり
その連鎖が続く・・・
この世界に生きる命は
いったい何処に向かっているのだ
俺には何も分からないが
魔族の生き残りの俺達には
人族から身を隠し生きて行くしか術は無かった
▶︎28年前
リーネア
『いつまでもこんな場所で隠れて居られない!!
私達も大人達と同じく戦うしか無いのよ!!』
ユーリム
『僕達にはそんな力は無い!!
人間の魔装機に殺されるのが落ちだ!!』
俺達魔族は
人里から遠く離れた秘密の洞窟で
身を潜め 息を凝らし隠れ生きていた
前の隠れ家は人間達に見つかり
大人の魔族は魔装機と戦い
子供の俺達を逃がした
仲間は皆死んだ
世話をしてくれた者や
昨日まで楽しくして生きていた者も...
生き残ったのは
子供の魔族の俺達4人だけ、
年長者の俺とリーネアは
人族と戦うべきかそうで無いか
その事で言い争っていた
マリイズ
『どうして
お姉ちゃんとお兄ちゃんは喧嘩してるの?』
アリスシア
『リーネアさん・・・ユーリムさん・・・』
幼いマリイズとアリスシアは
俺達の口喧嘩を見て怯えていた
もう俺達には
人間から見つからぬよう祈りながら
生きて行くしか方法は無い、
そんな簡単な事
リーネアも気付いているハズだ
リーネア
『私はここを出て行く、修行して魔力を高め
1人でも多くの人間を殺す』
ユーリム
『待てリーネア!!』
俺はリーネアを追い掛けると
身に付けていたペンダントが外れ
中に入っていた写真が飛び出した
もっと小さい子供の頃だった、
俺は人間の使う道具を好み
人が山に捨てていった機械を集めていた
その中には姿を映し
フィルムに焼き付ける不思議な道具があった
俺は幼馴染のリーネアと
その道具を使った
最初は魂が抜き取られる道具だと
怯えていたリーネアだったが
それが安全な物だと分かると
リーネアも
人間の道具を興味深そうにいつも見ていた
俺もリーネアも
いつか人間と仲良く暮らせる時代が来るのだと
そう思っていた
・・・・・・・・・・
俺とリーネアが映る写真を拾い
俺はペンダントの中に閉まった
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-2 魔族ⅱ〉
・・・・・5日・・・・5日が過ぎた
リーネアが居なくなってから5日の時が経った
人間から身を潜め
隠れ家で息を凝らすように日々を過ごしていた
魔族の子供の俺やアリスシアとマリイズ
俺より幼いアリスシアとマリイズは
仲間のリーネアが
帰って来ない事を不安に思っていた
アリスシア
『ユーリムさん・・・
リーネアさんの事なんだけど...』
言いにくそうにアリスシアは
俺にリーネアの話題を振った
俺はその話題を出されると
少し不機嫌になり
睨むような目付きで2人を見てしまった
なんでもない ごめん
そう言葉で言われるのが俺の胸に何かが刺さる
・・・・・分かっている.....
このままリーネアを放っておく訳にはいかない
不安に思う2人に
俺は重い足を上げその場に立ち言った
マリイズの事はアリスシアに任せる
必ずリーネアを連れ帰ってくると
マリイズ
『お兄ちゃん何処行くの....』
アリスシア
『大丈夫マリイズ、ユーリムさんは
必ずリーネアさんを連れて帰って来てくれます』
マリイズより年上だったアリスシアに
俺は目で合図を送り外の世界に足を踏み出した
暗くジメジメとした洞窟の隠れ家とは違い
外の世界は
酷く明るく無駄に広い空間が広がっていた
俺には
そんな外の光や匂いが肌には合わなかった
人通りを避け
森の中や隠れ家の周りを見て回ったが
リーネアの姿は何処にも見当たらなかった、
何処か遠くに行ったとしたら
見つける事が俺には不可能だと感じた
だが・・・
探すしか無かった
リーネアを連れ帰り
アリスシアとマリイズの喜ぶ顔を
リーネアに見せてやりたかった
それに俺は・・・・
・・・・・俺はリーネアの事を愛していた
1日が過ぎ 2日が過ぎた
魔族の体は
魔力を体内でエネルギーに変える事が可能
10日は飲まず食わずでも生きていける
2日間探し回ったが
リーネアの姿は何処にも居なかった、
もしかするとリーネアは
人族に攫われたのかも知れない....
最悪な可能性を考え
俺は人通りの多い場所を探してみた
ユーリム
『駄目だ...もうリーネアは何処にも...ん?』
地面に目を向けると
山の方角に続く人間の足跡が3つ
方角的に俺達の隠れ家の場所だ
アリスシアとマリイズが危ない
リーネアを探していた優先順位を変え
俺はその足跡を追いかけ
アリスシアとマリイズを守ろうと考えた
足跡を追いかけ数時間
道中で足跡は途切れていて
俺はその足跡の正体の人物達を見失った
ユーリム
『ハァー、ハァー....奴らは近くにいるハズなんだ
俺がアリスシアとマリイズを守り
リーネアを連れ帰らないと』
そう決意した直後
近くから人間達の声が聞こえ
俺は咄嗟に物影に身を隠した
大柄な男
『魔物1匹いやしねぇ』
顔の悪い女
『いいから探しな、
私達には金が必要なんだからさ』
武器を持った人間の男が2人に
何も持っていない人間の女が1人....
片方は魔女だ
魔法を使える人間がいる....
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-3 魔族ⅲ〉
アリスシアやマリイズが待つ隠れ家の近くに
人間達がやって来た、
俺は物影に隠れ その者達を見ていた
魔女が1人に武器を持った男が2人
このまま隠れ家の場所が見つかれば
アリスシアやマリイズの命が危ない
だけど.....
細身の男
『姉さんはそう言いますが
何も持ち帰れず帰るハメになりそうですよ』
大柄な男
『最近魔族の集落が見つかり
魔族狩りを
レインオラクル国の機士達がやったと聞いた。
もしかすると、まだそのお仲間が
何処かに隠れてるかも知れねぇな』
顔の悪い女
『魔族を見つければ
当分飯には困らないだろうね』
足が動かない
子供のアリスシアとマリイズを
守らなければいけないのに
俺は人間に怯え その者達に挑もうとする
度胸も戦う勇気も無かった
魔法も上手く扱えない俺が
人間3人に勝てるかも分からない、
それに魔女の人間も居る
力も魔力も低い俺では殺されるのが落ちだ
アリスシアとマリイズを守ると誓った、
なのに俺は.....
自分が無力だと実感し
体の震えを必死に止めようと頑張り
なんて情け無い男なんだ
女性のリーネアは
人間と戦うと言って隠れ家を出た
女性で子供のアリスシアやマリイズも
俺の事を信頼して待ってくれてる
ジリジリと俺は動かない足を動かし
人間達と戦おうと体を震えさせていた
そんな時だった
俺の気配に気づいた魔女の女は
「誰だ!!」っと大声を上げ
俺が隠れていた場所を見ていた
細身の男
『ガキです...どうしてガキがこんな場所に?』
大柄な男
『おら坊主!!痛い目見たく無かったら
とっとと家に帰るんだな!!』
顔の悪い女
『いや.....コイツはもしかすると.....』
俺は右手を人間に向け
炎の魔法を使い人間達に攻撃をした
大柄な男は剣を取り出し
俺が放った炎の玉を切り裂いた、
俺の魔力程度では
剣にすら魔法が負けてしまったのか
俺が魔法を使った事で
人間達は俺が魔族だと言う事に気付いた
細身の男
『コイツ、魔族のガキですよ!?』
大柄な男
『こりゃツイてるぜ!!
今日は美味い酒が飲めそうだ』
魔女の女は辺りを見渡し
ガキの魔族が居ると言う事は
近くに魔族の隠れ家があると言い当てた
ヤバイ...、このままでは
本当にアリスシアとマリイズの命が!!
俺は魔法を何度も放ったが
人間達に何の効果も与えられなかった
魔力切れを起こし
俺は地面に手を付け倒れた
大柄な男
『魔族って言っても、ガキはガキなんだな』
顔の悪い女
『首は落としときな、まだ何かされたら面倒だ』
人間達が俺に近付いてくる
力も無く魔力も低い 弱い俺では
守りたい者も護れず 俺は死ぬのか....
目を閉じ
死を覚悟したその時だった
男の悲鳴が聞こえ俺は目を開けると
人間の男が
闇の魔法で体を燃やされ
その場でもがき苦しんでいた
大柄な男
『んだ!?どうした!!』
顔の悪い女
『後ろだよ!!』
俺を殺そうとした男の首を
魔力の刃で切り落とした者が
俺の目の前に立っていた
後ろ姿だが
それが誰なのか俺は直ぐに気付いた
ユーリム
『リーネア...』
顔の悪い女
『子供相手に!!』
魔女の女は
土の魔法を使いリーネアに攻撃したが、
リーネアはそれを避け
魔女の女の体に
魔力の刃を突き刺し倒していた
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-4 魔族ⅳ〉
人間の大人達を倒し
俺の命を救ってくれたリーネア
リーネアの後ろ姿を
俺は地面に手を付き見ているしかなかった
ユーリム
『・・・・リーネア.....』
リーネアには言いたい事が山程ある
俺達の居場所に帰る事や
アリスシアとマリイズの事
俺を助けてくれた事も
・・・・・リーネアが好きだと言う事も・・
リーネアは人間達の体を燃やし
跡形も無く処分した
人間達から
金目になりそうな者を奪い
何も言わず、何処かに行こうとした
ユーリム
『待ってくれリーネア!!』
俺はリーネアを呼び止め
アリスシアとマリイズの元に戻ろうと叫んだ
リーネアが居なくなった事を
アリスシアとマリイズは心配している
だから・・・・帰ってきてくれ・・・・
リーネアは
俺の顔を見る事なく
背を向けたまま話し始めた
リーネア
『私ね、ここに来るまで人間を5人殺した』
ユーリム
『なっ何を....』
リーネア
『弱いユーリムじゃ
人間と戦っても殺されちゃう、
魔族の仲間を殺した人間の復讐
私には私の役目がある
ユーリムには
アリスシアとマリイズを守るって役目がある、
私達は私達の道を進むべきだと思うの』
ユーリム
『待てリーネア!!』
リーネア
『好きだったよユーリム、貴方の事が...』
リーネアの顔を一度も見る事無く
リーネアは何処かに行ってしまった
強い雨が俺に打ち付ける様に降り
俺の涙を濡らした
こんなにも弱く情け無い自分自身が
こんなにも嫌で虚しくなったのは
その時始めて知った
数分間は俺はその場所から
動く事も動ける事も出来なかった
雨が止み
俺はアリスシアとマリイズが待つ隠れ家に帰った
アリスシアとマリイズは
嬉しそうに俺を出迎えてくれたが
リーネアの姿が無いと分かると
そんな表情も何処かに行っていた
マリイズ
『うそ....お姉ちゃんは....』
アリスシア
『・・・・・』
俺は2人に嘘をついた、
リーネアは人間に殺され
もう戻ってくる事は無いと
マリイズは泣き
アリスシアは顔を伏せ何も言わなかった
好きな相手に好きとも言えず
何も守れず無力な俺が
アリスシアとマリイズを
守る事ができるのだろうか
リーネア・・・俺は・・・
▶︎20年後
マリイズ
『ねぇユーリム、
今日はホーンウルフの肉が取れたよ!』
アリスシア
『マリイズ、少しは静かにしろ
お前はいつも落ち着きが無い』
アレから20年
俺達は人間と関わる事無く
息を潜め続け生きていた
人間界では
色々な事が合ったそうだが
そんな事は俺達には関係無かった
成長と共に魔力が上がった俺達は
魔物レベルなら
自分達の力で倒せるぐらいには成長していた
騒がしい2人を横目に
俺はペンダントの中にしまっていた
リーネアとの写真を見ていた
20年経った今でも
俺はリーネアの事を愛していた
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-5 魔族ⅴ〉
アリスシア
『コレは!?』
黒服に身を隠したアリスシアは
人里に降り、何かを見つけ驚いていた
アリスシアは特別な魔法を使い
人間達から魔族である事を隠す事ができた、
その力を使い
アリスシアは人間の少ない村や町に入り込み
世界の状況や情報を調べていた
今の世界は三ヵ国の対立で
いつ始まるか見えない戦争に人々は恐れている
それ以外にも
魔物の増加や生き残った他種族が
人間を殺して回ると言った事例も....
アリスシアが掴んだ情報は
自分達と関わりのある者だと考えていた。
もしかすると その者は・・・
アリスシアは隠れ家に帰り
村の掲示板に貼られていた貼り紙を
ユーリムの前に叩きつけた
アリスシア
『どう言う事ですか!!
説明してくださいユーリム!!』
ユーリム
『・・・・・』
▶︎ユーリム
アリスシアが俺に見せてきたのは
魔族の女が人を殺していると言った
レインオラクル国からの忠告が書かれた物だった
俺はアリスシアの顔を見る事無く
それがどうした?と聞き返した
アリスシア
『どうしたかじゃ無いです!!
貴方は何かを私達に隠しています、
本当の事を教えてください!!』
アリスシアが何を言いたいのかは分かる、
俺もそこまで愚かでは無い
しかし
もしそうだとしても
俺の口からはリーネアの事で話す事は無い
リーネアが居なくなったあの日から
俺達はリーネアの事を口にするのをやめた、
死んだと言う嘘の証言で
アリスシアとマリイズは凄く悲しんだ
好きだったリーネアの事を
俺も忘れようとしていた
だが
忘れる事など一度も無かった、
幼い時リーネアと一緒に撮った写真が
捨てられていないのが何よりの証拠だ
アリスシアは薄々何かに気付いていたのだろう
リーネアが生きている
俺がお前達に嘘を述べたのでは無いかと...
黙っている俺にアリスシアは
アレから1度も口にしなかったあの事を
口に出し俺に言った
アリスシア
『リーネアさんの事です!!』
ユーリム
『!?』
あの日から20年
俺達は何もせず生きていた訳では無かった
生き残っている魔族の仲間が
この世界にはまだ何処かに居るかも知れない
苦しんでいる仲間が居るのなら助けてやりたい、
仲間を多く集め
人の居ない魔族の楽園を作る
それが俺達の小さな夢だった
だが
魔族の仲間は何処を探してもいない
20年の月日で
もう魔族は自分達だけなのではと分からされた
アリスシアはその事を言い
今生きている可能性がある魔族は
リーネア以外有り得ないと俺に言った
本当の事を教えて欲しい
真実を話してと感情的に言うアリスシアに
俺は立ち上がり
アリスシアを殴ろうと手を上げた
アリスシア
『ん....』
アリスシアは目を閉じ 怯えていた
仲間のアリスシアに
自分がやろうとした事を知り、
俺は上げた手をゆっくりと下ろした
リーネアの事を
誰にも言われたく無かった、
俺が自分で溜めていた不満を
仲間のアリスシアにぶつけようとした
俺は・・・・弱いままだ・・・・
▶︎魔族の隠れ家
マリイズ
『アレ〜、2人とも何してるの?』
無言で立ちすくむユーリムとアリスシア
マリイズは2人に
何をしてるのかと聞くが
「何でも無い」とアリスシアに言われた
ユーリムが何処かに行ったのを確認して
マリイズはあの事に付いてアリスシアに聞いた
2人で何かをやってたのは明白
それにアリスシアは....
マリイズ
『何してたのよアリスシア、
もしかしてユーリムに告白したの?』
キャッキャッと嬉しそうにマリイズは
アリスシアにそう聞いた
アリスシアはユーリムの事が好きだった、
だが
好きだと言う事を
アリスシアはユーリムに話せずにいた
2人の進展が合ったと勘違いしたマリイズは
魔族同士の恋愛が生で観れると喜んでいた
アリスシア
『何か勘違いしてる様だけど、
ユーリムは私の事なんて見てくれて無い
まだあの人の事だけ考えてるから....』
言葉の意味を理解出来なかったマリイズは
疑問符を浮かべながら頭を傾けていた
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-6 魔族ⅵ〉
▶︎ユーリム
アリスシアとマリイズを守るとリーネアと誓った
最後にリーネアと会ったあの場所で
俺は呆然と遠くを眺めていた
もしあの時
リーネアが俺の事を助けてくれなければ
俺やアリスシア達は死んでいた
リーネアは1人で
まだ人間と戦っている
ユーリム
『・・・・・レインオラクル国か』
俺はレインオラクル国に向かい
リーネアを探す事にした
国の周囲には流石のリーネアも居ないだろう、
レインオラクル国から少し離れた場所を探す
そう考え俺は歩き続けた
そして
俺はリーネアを見つけた、
人間の男と嬉しそうに笑うリーネアを....
プルネン
『明日はもっと美味しいお菓子を持ってくるよ』
リーネア
『あぁ、楽しみにしてるよ』
リーネアは人間の男と別れの挨拶をして
森の中にある
自分が住んでいる家に入ろうとした時だった
後ろから魔力の気配を感じ
リーネアは振り返り
俺の顔を見て驚いていた
リーネア
『ユーリム・・・・』
ユーリム
『久しぶりだなリーネア』
無言のリーネアは
家の扉を開け 俺を家の中に招いた
家の中は
人間が暮らしているような空間を感じさせ
この場所で
さっきの人間の男と何かをしていたのだろう
椅子に座った俺達は 何も口に出す事は無く
言葉を発しないまま時間は過ぎていった
リーネアは困ったような顔で
「見ていたのか?」っと第一声を述べた
ユーリム
『知らなかったよ、
お前が人間と楽しくしていた事を....
人間達を殺して回っていると聞かされたが』
リーネア
『それは違う!!』
リーネアが言うには
20年前のあの日から
誰一人も殺していないそうだ
レインオラクル国は
魔族の生き残りを炙り出そうと
リーネアが昔殺した人間の事を
今の事のように村人達に情報を流しているそうだ
リーネア
『悪夢を見るんだ....』
ユーリム
『悪夢?』
リーネア
『人間を殺した私も、
魔族を殺した人間と変わらない
私が人間を殺せば殺すほど
ユーリムやアリスシア達が危険に侵される
そんな悪夢が....』
怯えるリーネアを見て気付いた、
彼女に復讐は荷が重すぎる
心優しいリーネアには 人を殺す事など
本来あるべき未来では無かったのだろう
あの人間の男と仲良くなったのも
森の中で魔物に襲われているのを助け
成り行きに過ぎなかったと、
リーネアはそう言った
俺はリーネアに言った、
アリスシアやマリイズの元に帰ろう
お前には血で汚れた手は似合わないと
リーネア
『大きくなったなユーリム』
リーネアは俺の体を見てそう言った
リーネアの体も 昔と違い
大人の魔族になっていた
ユーリム
『俺の事をまだ愛してくれているのか?』
リーネアは小さく「分からない」と言った
分からない・・・・・
その言葉の意味を 俺は確かめた
さっきの男の事を
リーネアは考えている
そう思ったから......
ユーリム
『あの男か?』
リーネア
『プルネンは良い人だよ
人間も魔族も変わらない・・・そう教えられた、
人間と魔族が楽しく暮らせる未来が
いつかくるかもと考えさせられる』
人間と魔族が?
そんな言葉をリーネアが・・・・・
ユーリム
『そんな未来など来ない、夢を見過ぎるな』
リーネア
『ユーリムもプルネンと会えば分かるよ、
人間にも優しい人は居る
私はプルネンに魔族だと教えていない、
魔族だと言う事を教えても
プルネンは私を大切に思ってくれる』
顔を赤らめ 楽しそうにそう話すリーネア
それを見て俺は確信した、
リーネアはあの男の事を考えている
リーネアには俺の姿は映っていない...
また来る・・・・そう言い残し
俺はリーネアの元を離れた
ユーリム
『人間は魔族を見つけると必ず殺す、
お前もその事は知っているのだろ?』
リーネア
『・・・・・』
ユーリム
『・・・・また来る』
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-7 魔族ⅶ〉
▶︎魔族の隠れ家
ユーリムが隠れ家に帰ってくると
マリイズは「おかえり」と
元気よくユーリムに言った
あの事で
ユーリムの顔を見れなかったアリスシアは
そのまま何処かに行こうとすると、
ユーリムがアリスシアに近づき
耳元で小さく言った
ユーリム
『リーネアを見つけた、
アイツを俺達の元に連れ帰る』
アリスシア
『え!?』
ユーリム
『マリイズには黙っていろ、
協力してくれるか?』
アリスシアは
ユーリムの顔を見て「ハイ」と返事を返した
▶︎ユーリム
俺はアリスシアに
魔族の生き残りがレインオラクル国周辺に居る
そう噂を流すよう命令した
アリスシアは魔法を使い
レインオラクル国に侵入して
酒場や街で噂を流した
時期 リーネアの場所にも
レインオラクル国の機士がやってくる、
機士がくると知れば
リーネアも俺達の元に帰ってくる
そう俺は考えていた
リーネアの住む家に
俺とアリスシアはやって来ていた
泣きながら人里に降りて行く人間の男と
その人間を追い出したリーネアの姿が目に付いた
俺はアリスシアに
この場所で待つように言い
俺1人でリーネアを連れ帰ろうと
リーネアの家に入った
凄く落ち込むリーネアは
俺がやって来た事にも気付かず
ただ椅子に座り下を向いていた
俺は落ち込むリーネアに
この場所に 時期
レインオラクル国の機士がやってくる事を教え
俺達の居場所に戻ろうとリーネアに言った
ユーリム
『人間と魔族は交われない、
お前にこの場所は相応しく無い 戻れリーネア』
リーネア
『・・・・・私はプルネンの事を愛している、
あの男に酷い事を言ってしまった、
だから私はプルネンに謝らないといけない...』
時間だけが過ぎて行く
この場所に機士はやってくる
リーネアは俺達の場所に戻るしか選択肢は無い
なのに何故リーネアは・・・
・・・・・考え過ぎかも知れないが
死を覚悟しているのか?
人を殺めた自分を
罰しようとしているのか?
そんなハズは無い
魔族には魔族の場所がある、
リーネアも分かっているハズだ
ユーリム
『外で待つ....』
リーネア
『ユーリムは私の事を・・・
愛してくれていたか?』
・・・・・・
その返答で、
俺とリーネアの未来は違ったのかも知れない
俺は・・・・・・
ユーリム
『待っている....』
何も言わず
アリスシアが待つ場所に戻った
数時間が過ぎても
リーネアは俺達の元には来なかった
レインオラクル国の機士が
リーネアの居場所を見つけ、
リーネアは・・・人間達に捕まった
レインオラクル国の中央広場で
リーネアの首は切られ 処刑された
その光景を見ていたアリスシアは
涙を浮かべながら手を握りしめていた
・・・・・俺は・・・・・
魔力を手に集め
この場所に居る人間共を皆殺しにしようと
俺は殺意を高めていた
それに気がついたアリスシアは
俺の手を握り
涙を流しながら首を横に振っていた
ユーリム
『アリスシア....』
そうだった、
俺はリーネアと約束した
アリスシアとマリイズを守ると
・・・・・だが
俺はまた
何も守れなかった
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-8 魔族ⅷ〉
私達と同じ魔族の仲間だったリーネアさんは
レインオラクル国の機士に捕まり処刑された
ユーリムはリーネアさんを私達の元に帰そうと
ワザと魔族の情報をレインオラクル国に流し
リーネアさんを連れ戻そうとした
だけど
私とユーリムの考えは
最悪な形で終わりを告げた
人間達に復讐しようとする
ユーリムの手を取り止めてしまった
あの場で私がユーリムを止めなければ
今のユーリムは居なかったかも知れない
▶︎アリスシア
あの惨劇から8年
ユーリムはもう人間達と関わろうとはせず
息を潜め
私達魔族は人間から隠れるよう日々を過ごした
あの日から
ユーリムは何処か遠くを見つめ
心だけがこの場所からいなくなっている、
そう私は感じていた
ユーリムはもう・・・・・魂だけが死んでいる
そんなユーリムの姿は見たくなかった
だけど 私とマリイズでは、
ユーリムの心の穴を埋める事は出来なかった
世界はこの8年で大きな変化を見せた
国同士の戦争は終わり
ディナガード レインオラクル ローズストーン
の三ヵ国は、同盟国として新たな道を歩み始めた
聴くところによれば
戦争を終わらせた魔装機乗りの中には
人間達とは違う他種族の
エルフやフェアリー 魔族も居たそうだ
人族や他種族...魔族が手を取り合い
戦いを終わらせ今の世界がある、
私達が思い描いていた
人と魔族が平等に生きられる世界が
目の前に広がっていたのかも知れなかった....
だけどユーリムは
人間は愚かな生き物
人の考えは時を重ねても変わらず
またいつ争いの時が来るのか分からないと言い
私達は外の世界に行く事は無かった
ユーリムはまだ、
人間達への復讐を考えているのかも知れない....
マリイズ
『ウゲ〜、またこの美味しくないレーション?
もうコレ食べたくないよ〜』
アリスシア
『ワガママを言うな!!
食べられるだけありがたいと思え』
大きく変わった事といえば、
この世界から魔物が消えた事だ
レインオラクル国のドルズと呼ぶ者の仕業で
世界中の魔物の力を
魔装機に吸収させ戦ったのだと言う
その結果、私達は魔物を狩り
魔物の肉を食べられなくなった
幸いにも
使われていない軍事基地の中に
大量のレーションを見つけ
食料には困らなくはなっていた、
マリイズは凄く不機嫌そうにしているが
マリイズ
『レーションも無限じゃ無いでしょ?
どうにかするべきだよ〜』
アリスシア
『食事制限をすれば200年は生きられる』
マリイズ
『そんなのお婆ちゃんになっちゃうよーー!』
アリスシア
『魔族は500年生きられるそうだ、
200歳では人間の大人と変わらない』
マリイズ
『でも人間は
三十路を過ぎるとオバサンに成るって聞いたよ
アリスシアも41歳なんだから
人間の世界ではオバサンなんだよ〜』
私はマリイズの頭を叩くと
マリイズは嘘泣きをしながらユーリムに駆け寄り
アリスシアが私を打ったと言い出した
ユーリムは私の顔を見て
マリイズと仲良くしろ言われ怒られた
37にも成るマリイズは
まだ幼く子供の様な言動を取る、
少しは落ち着きと言う物を覚えて欲しい
マリイズ
『そうだ!!私達も人間の世界に行こうよ!!
魔族とエルフが暮らせる時代なんでしょ?
それなら私達だって受け入れてくれるよ!!』
アリスシア
『マリイズ!!』
私はマリイズの名を叫んだ
ユーリムはその事に余り触れない
彼には人間への憎悪がある
人間と魔族は愛入れぬ存在 そう何度も口にした
マリイズの発言でユーリムを
怒らせるのでは無いかと心配していたが・・・
ユーリムは何も言わず
本を読み続けていた
私はマリイズを連れ
別の場所でマリイズを叱った
人間と共存したいと言うマリイズ、
私もそうしたいと願っている
だけど・・・・・
ユーリムには私達が必要だ・・・
私達もユーリムを必要としていた・・・
ユーリム・・・・・
私達は何処に向かおうとしているのですか?
その次の日
白いローブに身を隠し マナも魔力も持たない
人でも魔族でも他種族でも無い
謎の女達が現れた
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-9 魔族ⅸ〉
その者達は突如現れた
白いローブに身を隠した2人組の女性
私のマナと魔力を探知する魔法を使い
その者達が人なのかそうで無いのか調べると
その者達はマナも魔力も持たない
私達の知る生き物とは別の生き物だと分かった
ローブの女性達は素顔を明かし
アクエリアスとピスケスと名乗った
アクエリアスは私達に言った
貴方達魔族の怨みや憎悪を全て解決し
人と分かり合える新たな世界を作ると・・・
そんな事が可能なのか?
この女は私達に何をさせようとしている?
更にアクエリアスは
レインオラクル国が開発した
魔力で動かせる魔装機を盗み
魔業教団と名乗る組織と手を組むように言った
そんな馬鹿げた事
ユーリムが賛成するとは思えない!!
そう私は願っていた・・・
だけど私の願いは叶わなかった
アクエリアスは最後に
私達の障害となる人物の名を教えてくれた
それは
レインオラクル国の機士
私達と同じ魔族のアランと呼ぶ名だと...
ユーリムはアクエリアスの言葉を聞き入れ
私達はレインオラクル国に侵入して
魔力でも動かせる魔装機を探していた
▶︎レインオラクル国
戦後のレインオラクル国は
いとも簡単に侵入する事ができた
気配を消す魔法を使い
私達は誰かの実験室にやって来ていた
魔装機以外に
何か使える物が有るのではと・・・
蓋が閉まったフラスコに
青い液体の入った何かを見つけた
アリスシア
『神聖適合剤と書かれています』
ユーリムは置かれていた
実験資料のような物に目を通し言った
コレは人間に魔力を付与させる薬だと
私とマリイズは驚いた、
この薬を使えば
人間を魔族にする事が可能なのだと思い
ユーリム
『他に目ぼしい物は無いな、
魔装機を盗み この場所から離れるぞ』
私達は魔力を動力にして動かす
フィルプスシリーズと呼ぶ魔装機を盗んだ
フィルプスと呼ばれる魔装機は4機存在した
一号機 二号機 三号機 四号機と
番号付けられていた
私達が盗み出したのは
一号機から三号機の3機、
四号機だけ残し 私達は隠れ家に戻った
マリイズ
『あと1機残ってたけど?』
アリスシア
『私達に必要な物は3機だけだ、それに
もう戻っても警備が警戒になって
盗み出すのは困難だろう』
魔族でも扱える魔装機を手に入れ
次に私達は
魔業教団を名乗る者達の場所に向かった
アクエリアスの情報通り
その場所には 黒いローブに
身を包んだ魔業教団を名乗る者達がいた
3機の魔装機を見て
魔業教団の黒服達は驚き
警戒すると思っていたが...
魔業教団員
『ようこそ魔族の皆様、
教主様が貴方達をお待ちしております』
魔業教団は
私達が現れるのを予知していた
魔業教団の教主ラプラス成る者が
私達がこの場所に訪れる事を
特殊な力を使い未来を知っていたそうだ
ユーリムはマリイズに
魔装機の中で待機するように命令した
もしもの時の為にマリイズを
この場に残して置こうと考えたのだろう
私とユーリムは
魔業教団の教主ラプラスが居る部屋に案内され
その部屋に足を踏み入れた
ラプラス
『ようこそ、世界から切り離された者達よ』
アリスシア
『コイツがラプラス....』
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-10 魔族ⅹ〉
ラプラスの部屋には
裸の女達がラプラスを囲い
異様な匂いを感じさせる煙が辺りに充満していた
魔業教団の黒服は
この部屋には
衣類を持ち込んではならないと言った
ユーリムに裸を見られてしまうのではと思い
私はこんな時なのに顔を赤らめていた
ラプラス
『構わぬ、この者達は私の客人だ
お主らは気を楽にしてくれたまえ』
アリスシア
『そうなの.....』
私は教主のマナを探知してみると
教主からはマナを感じず魔力を感じた
その事をユーリムに教え
教主ラプラスは
私達も同じ魔族の仲間なのではと私は言うと
ユーリム
『違うな、コイツは人間だ
普通の人間と違う特別種の生き物なのだろう』
ラプラス
『御名答』
教主ラプラスは、魔力の力を使い
青い羽が付いた魔力の生物を作り出し
その魔力生物に触れ 体に取り込んだ
謎の生物を体に取り込むと
私達の素性を言い当て
仲間達がどのように人間に殺されたのか
何処を隠れ家にしているのか
全てを言い当ててみせた
勿論....リーネアの事も....
私は心配そうにユーリムの顔を見た、
だけどユーリムはいつもの落ち着いた表情で
ラプラスの話しを真剣に聞いていた
ユーリム
『俺達に助言を言った者達もお前達の仲間か?』
ラプラス
『分からぬ』
ユーリムは
私達の隠れ家に現れた
アクエリアスとピスケスと名乗る
白いローブに身を隠す謎の女性達に付いて
教主ラプラスに聞いた
だけど
教主ラプラスでさえ
その者達の正体は分からないのだと言った、
どう言う事?
過去や未来を見通す力で
あの女達の正体を探れないの?
私は教主ラプラスにその力で
アクエリアスとピスケスの正体を
見破れないの?と質問をすると
教主ラプラスは言った、
「この世の理を超えた者達、
別次元の存在かあるいわ....」
あの者達は今の所この世界に干渉しない存在
私達の敵になり得る存在では無いと言った、
そんな怪しい存在
放置していて大丈夫なのかと私は心配に思ったが
私達の目的は
アクエリアス達の正体を確かめる事では無かった
ラプラス
『世界を大きく変化させる、
王の玉座に座った我は
お主ら魔族が望むより良い未来を作り上げる。
それが我の見た未来の光景
未来のこの世界なのだ!!』
ユーリム
『・・・・・』
教主ラプラス・・・・本当にこんな怪しい奴達に
私達は協力して大丈夫なの?
そう心配に思いながらユーリムを見たけど
ユーリムの表情はいつもと変わらなかった...
ユーリムは...あの日から
人間の復讐だけを考えているの?
そんなの・・・・イヤだと思ってしまう
自分がイヤだった・・・
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-11 魔族ⅺ〉
マリイズ
『星が綺麗ぃ』
私達は
教主ラプラスに言われた座標に向かっていた
そこでは魔業教団員達が
召喚の儀式と呼ばれる魔法を使い
次元の門を開く実験を行われているらしい
徒歩での移動中マリイズは
夜空を見上げ星が綺麗だと目を輝かせていた、
私も綺麗な夜空を見てそう感じた
ユーリム
『目標地点が近いな』
マリイズ
『ラプラスから頼まれた事って何なの?』
教主ラプラス・・・・彼女は私達に
召喚の儀で
自分の魂を媒体として次元の門を開いた
魔業教団達の後始末...つまり
自分の命を犠牲にして魔法を使った
人間達の死体を跡形も無く消し去る事だ
魔業教団は自分の命を軽く投げ捨てる
そう言う人物達なのだろう・・・
マリイズ
『えぇぇ!!、死にたく無いから
戦ったり息を吸ったりしてるのに
目的の為に自分の命を犠牲にするなんて
どんな意味があるのー!?』
アリスシア
『自分達の目的を達成させる、
例え自分の命を失う事になっても...
それが人間のやり方なんでしょう』
不思議とマリイズは思っていた
私だってそう思う
生きる為に必死だった私達だからこそ
・・・でもユーリムは
自分の命を犠牲にしてまで何かを成し遂げる
そう感じる・・・まるで人間達見たいに・・・
ユーリム
『到着したな』
魔業教団が儀式を行われている場所に到着した
魔業教団員達らしき者達が
魔法陣の外に倒れ死んでいる
私達は
本当に死んでいるのか確認を始めると
魔法陣の中央に
人間の女性が倒れているのを見つけた
苦しそうに倒れている
心臓は動いている・・・・だけど・・・・
私はユーリムに言われ彼女のマナを探知した
すると驚く事が、
この人間からはマナも魔力も感じない
まさか
あの白い女達の仲間なのかと考えたけど
明らかに彼女は普通の人間だった
魔物化の予兆が始まり
今にも魔物になりそうだった彼女に
ユーリムはレインオラクル国から持ち出した
青い液体の薬を取り出し彼女の口に含ませた
液体を飲んだ彼女の体には
小さな魔力が深まり始め
やがて大きな魔力へと変わっていた
人間が魔力を得た、
私達と同じ魔族になったのか?
それとも教主ラプラスと同じ特別種なのか..
私達の仲間にするの?
っと私はユーリムに質問すると
ユーリムは言った
ユーリム
『そう成るか成らないかはこの薬しだいだ
だが... 俺達はこれ以上 コイツに干渉はしない』
どう言う事?
どうしてユーリムは人間を助けたの?
もしかして・・・・・まだユーリムの心には
リーネアさんと同じ優しい心が残っているの?、
だとしたら
ユーリムは人間達を滅ぼすとは考えて無いハズ
私達も
人間達と仲良くできる未来が有るのかも・・
私達は魔業教団の人間達を燃やし
彼女だけを残し教主ラプラスの元に戻った
▶︎ユーリム
どうして俺はあの女を助けたんだ....
人間に興味は無い....
滅ぼしたいとも思っていた....
リーネアは人間を助け
自分の中の悪夢と戦っていた
俺も悪夢を見る・・・・
リーネアが処刑されたあの日の悪夢を・・・・
あの女を助けたら
俺の悪夢は終わるのではと思ったのか
それとも仲間にしようとそうしたのか
自分には分からなかった・・・・・
だが1つ気になる事がある
ラプラスはあの女の事を予言してはいなかった
外からの者は過去や未来を見通せない
そう言っていた・・・だとすると・・・
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-12 魔族ⅻ〉
▶︎アリスシア
教主ラプラスの元に戻り
私達は言われた仕事をこなした事を伝えた
ラプラスは嬉しそうに
良くやったと私達を上から目線で褒めていた
あの倒れていた人間の事を
言わないのかと私はユーリムの顔を見ると、
ユーリムはその事を何も言わなかった
ラプラス
『どうした?何か言いたい事がありそうじゃな?』
アリスシア
『い...いえ...』
ユーリム
『・・・・・それで、
お前の予言は何処まで見通せている?
この後は何をする?』
教主ラプラスは言った
人の魂を使い魔界の門を開く儀式を考えている
大召喚と呼ばれる魔法を使えば
三ヵ国は魔の手に落ち
私達の時代が来るのだと
大召喚には
強い魔族の血と人間の魂が沢山必要と言った
アリスシア
『私達をその儀式に利用しようとしてるの!?』
ラプラス
『安心しろ、お主達より打って付けの人物が居る』
ユーリム
『誰だ?』
ラプラス
『我の口より、
あの者の口から聞いた方が早いだろう』
あの者?
ラプラスは私達を地下の大空洞に案内した
その場所には
見た事もない機械の獣や大きな魔法陣が・・・
更にその奥に
私は魔力の力を感じユーリムに報告した
アリスシア
『誰か居ます・・・・魔力を持つ人物が』
ラプラス
『お主達の仲間だ』
ユーリム
『仲間?』
地下深くのその場所には
とても年老いた老婆が待っていた
その老婆からは
ラプラスとは違う魔力の力を感じた
間違いない....この老婆は魔族だ!!
魔族の老婆
『数百年・・・長い時を待たされた・・・』
ユーリム
『お前は誰だ?』
ブーゼベルン
『ブーゼベルン・・・
魔王様にお仕えしていた者だ・・・』
ブーゼベルンと名乗った老婆は
魔王の事を口にして
お仕えしていた者だと名乗った
年齢から見るに
500歳は過ぎている、
本当に
魔王が生きていた時代を生き延びた魔族なの!?
私は何も言えずタダタダ驚いていた
何故この場所に
私達を連れてきたのかと
ユーリムは教主ラプラスに質問を問い掛けると
その答えをブーゼベルンが語り始めた
ブーゼベルン
『魔王様亡き後・・・
私はとある人間の元に訪れた・・・、
その者は神聖種族と呼ばれる・・・
魔族とは別の魔力を扱う人間達だった・・・』
魔力を扱う神聖種族の人間は
身勝手な人間に滅ぼされた、
ブーゼベルンは
そんな神聖種族や
身勝手な行いを続けた人間と戦う
同じ理念を持つ物を集め魔業教団を作った
そう 今にも朽ち果てそうな老婆は語った
ブーゼベルンが作った魔業教団は
次第に勢力を増し拡大した、
レインオラクル国の機士や
他国の機士とも戦ったそうだ
ブーゼベルン
『魔王様には・・・複数の愚妻が居た・・・。
多くは・・・戦いの中で人間に殺されたが・・・
ある者だけが生き残った・・・』
アリスシア
『ある者?』
ブーゼベルン
『オルタと呼ぶ少女・・・魔王様の子供・・・、
オルタは逃げ延びた先で子を産み・・・
その子供も子を産んだ・・・』
アリスシア
『それってつまり・・・』
ユーリム
『・・・・・』
ブーゼベルン
『魔王の血を受け継ぐ・・・
兄妹がこの世界に居る・・・』
ブーゼベルンはその者達の名を言った、
アランとアイナと・・・・・
その者達の力を使い 魔王復活の儀式を行い
暗黒の時代を蘇らせろとブーゼベルンは言った
私はどうするのかと
ユーリムの顔を見る事しかできなかった
ユーリム
『くだらん』
ブーゼベルン
『なんじゃと・・・』
ユーリム
『魔王を復活させて俺達に何の徳がある?
俺達は俺達のやり方をするだけだ』
ブーゼベルン
『魔族の面汚しめらが!!』
ユーリム
『行くぞアリスシア、
俺達にこの場所は不要だったようだ』
アリスシア
『ハイ!』
私達はブーゼベルンの元を去ろうとすると
ブーゼベルンは咳き込みながら
私達を見て倒れていた
彼女の魔力はもう少なく
寿命が尽きたのだろう・・・・
教主ラプラスは私達を見て
「お主らの未来は変わらぬ、何処に逃げようがな』
そう言葉を述べた
ユーリム
『お前達の元にアランを連れてくる、
それで俺達との関係は終わりだ』
ラプラス
『・・・・・まぁ良い、魔王の血を持つ者が
手に入ればお前達は用済みだ』
私達はラプラスの元を離れ
外で待つマリイズの元に帰った
その道中
ユーリムは私に言った
ユーリム
『気付いたかアリスシア』
アリスシア
『魔王の事ですか?』
ユーリム
『俺達が助けた女の事だ、
ラプラスはその事を何も知ってはいなかった
未来や過去を見る力で
あの女に干渉できないって事だ』
アリスシア
『確かに!!』
ユーリム
『奴の見えている未来と
この先の未来は必ず同じ未来とは限らない、
既に未来の変化は起きているハズだ』
未来の変化を・・・・
ユーリムは何を考えているの?
私には何も理解できない・・・
アリスシア
『ユーリムは・・・今の人間達をどうするの?』
ユーリム
『確かめる・・・
強さ以外の、真の強さを持つ者達なのか』
◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
〈70-13 魔族.....〉
アレから月日が過ぎ
教主ラプラスに言われた最後の任務が始まった
魔王の血を受け継ぐアランと呼ぶ魔族を
魔業教団の元に届ける
それが教主ラプラスが言った
私達に飾られた最後の任務だった
▶︎ローズストーン国
マリイズ
『うわーあ!!凄く良い匂いがする〜』
ローズストーン国では
魔装機大会と呼ばれるお祭りが行われていた
私達は黒いローブで身を隠し
余り人目に付かないよう行動していた
マリイズは
屋台の美味しそうな良い香りに
とても騒がしくしていた
アリスシア
『マリイズ、遊びに来た訳じゃないぞ』
マリイズ
『だって〜』
コロシアムと呼ばれる場所では
魔装機の試合が行われていた。
その場所で
ターゲットのアランは
最終試合をしているそうだ。
ローズストーン国の人達は
その話題ばかり口にしていた
「凄いよな、魔族なのにあんなに強くて」
「アランカッコよくて好き、私も魔族になりたい」
「キサラギさんやリオン君を
倒したあの子もかなり強そうだけど
アラン君大丈夫なのかな?」
マリイズ
『皆んなアランの話しをしてるね』
アリスシア
『どうしますかユーリム?
大会が終わるのを待ちますか?』
今この状況で
アランを連れ去るのは不可能だった
チャンスは必ず訪れる、
私達はコロシアムに侵入して
アランが1人に成る機会を伺っていた
大会はアランが優勝し
勝者のアランは場室でお色直しをしていた
機士の女がいなくなったのを確認して
ユーリムの魔法でアランの気を失わせ
簡単に連れ去る事ができた
教主ラプラスから渡された
置き手紙をその場に残し
私達はローズストーン国を去り
魔業教団の場所にと目指した
マリイズ
『ねぇ...ユーリム、アリスシア』
元気の無い声で
マリイズは私とユーリムの名前を呼んだ
美味しい食事が食べられず
不満なのかと思ったが、そうではなかった
マリイズ
『私達のやってる事って本当にコレで良いのか?
私には分からないよ・・・・・』
アリスシア
『マリイズ・・・それは・・・』
私はユーリムの進む道に付き合っているだけだ
もしユーリムが
人間達と戦い滅ぼそうと考えるのなら
マリイズを私達と一緒に居させる訳には・・・
ユーリム
『マリイズ、少しアリスシアと2人にしてくれ』
マリイズ
『え?・・・・・いいけど・・・』
マリイズはアランを連れ先に進んだ
私は何かと
ユーリムに尋ねると・・・
ユーリム
『アリスシア...マリイズを説得しろ』
アリスシア
『どう言う意味ですかユーリム....』
嫌な予感を感じていた
ユーリムの考えが分からなかった私だけど
その時だけはわかった、
ユーリムは人間達と戦うつもりだ
私とマリイズも戦闘に巻き込むつもりなのだと
ユーリム
『俺の事が好きか?』
アリスシア
『え!?』
ユーリムの突然な発言に私は動揺した
動揺した私にユーリムは近づき
どうなのかと更に私を問い詰めた
アリスシア
『どうしてそんな事を...』
私は顔を逸らしユーリムに言った
私の気持ちを知っていた?
でも何故このタイミングなの?
ユーリム
『俺にはお前が必要だ、わかってくれ・・・』
アリスシア
『変です!!、どうしてそんな事・・』
私が動揺して
そう言った時だった・・・
ユーリムは私を抱きしめてくれた
温かい...ユーリムは私の事を...
どうでも良くなっていた
好きな人のために戦う
それだけで良くなっていた
気がつくと
私もユーリムを抱きしめていた
好きだったユーリムの事を・・・・
▶︎ユーリム
アリスシアは俺の手に落ちた
マリイズも俺達の言う事ならば理解してくれる
あの人間を助けても
俺の悪夢は終わらなかった
そうする事で
悪夢は覚めると思っていたが・・・・・
俺の目的はあの日から変わっていなかったんだ
人間達に復讐をする
それが俺の・・・・
リーネアを殺した人間達への復讐だ
それが
仲間のアリスシアとマリイズを使ってでも....
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