表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

1日と3分しかない夏という季節

作者: タカヒロ

ありがとうございます

今年の夏は1日と3分で終わるらしい。時間になおすと24時間3分だ。天気予報がおかしくない限り、夏はこの期間しか来ない。


20✖︎✖︎年は春と秋が異様に長い。だから過ごしやすいといえば過ごしやすい。


しかし、世の中の学生はこの予報を聞いて喜ぶ者は少数だろう。現に俺もこの気候に嘆いている。


中学時代はろくに友達もおらず、家に引きこもっていたが、高校生になってから友達ができて夏休みの予定も立てていた。プールに行ったり、スイカを食べたり、海水浴に行ったり、花火大会などといったイベントに心を躍らせていた。


普段は1ヶ月ほどある夏休み。例年であればこれらのイベントをこなすことは造作もなかったのだが、今年は三十分の一である。どう考えても短すぎる。


しかし、俺はこの短すぎる夏を満喫すべく秒刻みでの予定を立てることにした。全てはこんなめちゃくちゃな気候にした神に抗うためだ。



23時59分59秒

俺は目を覚ました。明日の1日とちょっとしかない夏を満喫すべく友達を家に呼び、お泊まり会をしている。みんな一斉に起き出して俺らの夏は始まった。



0時10分30秒

俺らは家を出て人気のない河原へ行き、花火をした。時間に余裕がないので、ここでスイカ割りもした。暗すぎて誰も指示できない中目隠しした友達がくるくる回っているのは怖かった。



1時03分45秒

家の裏にある山に登り、頂上に着く。夏休み企画といえばどうなのかわからないが、天体観測をした。オリオン座?みたいなのがあって綺麗だった。



3時33分33秒

隣の市までサイクリングをした。夏のそよ風を感じながらペダルを漕ぐのは快感だった。空が暗いこと以外は特に言うことはない。



5時15分08秒

一足早く海水浴に行った。周りには人一人おらず、快適に楽しめた。奥の方の釣り人には目を丸くされたが、そんなことに構っている余裕はない。後18時間47分52秒しか夏はないのだから。



7時55分31秒

朝食でバーベキューをした。元から準備していた魚介や肉を焼いた。朝食としては重かったが、朝から動きっぱなしだったので休憩を取れて力が戻った。



9時20分26秒

プールが開いたのでみんなで行った。朝食後だったこともあり、派手には遊べなかったが、流れるプールに身を任せるのは有意義な時間だった。



ここまでは前日に立てた予定通りだった。しかし、友達のもちやんが腹痛を訴えた。


もちやんは一人で帰るからみんなは予定通り夏を過ごしてくれと言って帰ろうとした。


俺らは話し合ってもちやんをどうするのか考えた。そして出た答えは正露丸服用によってもちやんと共に戦うことだった。


もちやんは涙を流していた。俺を置いて行ってくれと。しかし俺らは彼を見捨てることはできなかった。なぜならここまで夏を過ごした仲間だったからだ。




11時15分49秒

思わぬアクシデントで俺らは15分34秒ほど遅れをとったが、映画館に着いた。映画は既に始まっており映画泥棒を少し超えたあたりだった。ちなみに正露丸の威力は絶大だった。



13時10分18秒

映画が終わり、フードコートで昼食をとることにした。各店舗そろって夏メニューを売り出しており、今日売り切ると躍起になっていた。それはそうだもう半分もないからだ。



16時30分00秒

映画館から帰った俺たちは家で課題を進めてから浴衣に着替えて夏祭りに備えた。外は少しずつ日が落ち始めており、夏の終わりを表しているように感じた。



18時10分52秒

屋台を一通り周った後俺たちは花火を見るために穴場スポットへ向かった。このスポットは到達が困難なために人は誰一人いなかった。傷だらけで進んだ先には小さなお堂があり、花火がよく見えた。そして俺たちはここにきた証を残すためお堂の柱に「神に抗った少年団」と彫った。



21時08分03秒

祭りの灯火は消え始め、夏の終わりを感じさせるものだった。あと少ししたら夏は終わり、秋が来る。俺たちは夏を楽しめたのだろうか。この短すぎる夏を満喫できたのだろうか。



24時02分59秒

あと1秒経てば夏は終わる。この夏を振り返ってみる。


すると自分がやりたかったこと、夏のイベントはほぼ完遂できたのではないだろうか。いろんなとこに行き、いろんなところで遊んで、祭りにも行けた。


しかし、何かが足りない。いや足りないのではなく、元々ないものだ。


ここで俺は気づいた。大事なのは夏のイベントや行事ではなく友達と一緒にいる時間なのだろうと。


その点では俺たちは夏を楽しめたとは言えない。来年の夏はもっと長くしてください。俺は無数に溢れる流れ星の中願った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 来年以降の夏はセミは鳴かなそう。そもそも、こんな世界ならもうセミは絶滅してるか…… [気になる点] 何をもって夏は一日と三分と。その日の日の出日の入りはどうなのか。勢いで読み飛ばすには三分…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ