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80話 アマツ


「また会ったね~~! よろしくね~~! ヴェネーフィクスのみなさん!」


 私達の姿を見つけるやいなや、相変わらずの特徴的な口調で話しかけてきた少女。あのとき聞けなかった彼女たちの正体について、開口一番私は問いかけたのだ。


「……ねえ、あなたは一体? 今まで何処かで会ったことあったっけ?」


 少女の今までの態度から察するに、私達のことを知っていると言うのは明らかである。だけど、私は彼女たちに会った覚えはない。もしかしたらルートやナーシェの知り合いなのかもと思い、酒場での騒動があった夜に2人に聞いては見たものも、2人とも彼女たちとの面識はないとのことであり、そうなるとますます彼女が私達のことを知っているということが謎で仕方無かったのだ。


「面識かあ~~ 面識はないね~~! でも私達はあなたたちのことを知っているよ~~ イーナ~!」


「……! どうして!?」


「まあまあ~~ もう出発するみたいだし~~ どうせ、グシア村まで時間はたっぷりあるんだから、これからゆっくり話そうよ~~!」


 少女は、そう言うと私達に背を向けてすでに出発の用意が整った馬車の方へと歩き出した。完全に少女のペースに乗せられてしまいなんだかもやもやした気持ちを抱きつつも、私達も少女に遅れて馬車へと乗り込む。


「準備は出来たようだな! 出発するぞ!」


 私達の乗り込んだ馬車を操ってくれるであろうおじさんが、私達へと声をかけてくる。馬車の数は何台かあったが、どうやら私達が乗っているモノ以外はすべて荷物が積み込まれているようで、グシア村へと向かう客というのは私達ヴェネーフィクスのメンバーと、謎の少女達しかいないようだ。


 ゆっくりと動き始めた馬車。馬車なんて初めて乗ったが、想像していたよりは乗り心地も悪くはない。もっと揺れるかとは思っていたが、道路が整備されているということもあり、ずいぶん快適に過ごせそうではある。今私達が直面しているこのもやもやを除けばの話だが。


「ねえ……」


「ああ、さっきの話の続き~~?」


 少女の言葉に黙って頷いた私。彼女が一体何者であるのか、そしてどうして私達のことを知っているのか、結局今のところ何もわからずじまいである。


「あ、でもその前に…… 私はあなたたちのことはもう知っているけど、あなたたちは私達のことを知らないんだもんね~~ それもフェアじゃないし…… 私の名前はアマツ。そしてこっちがセンリ。よろしくね~~」


「センリと言います。何卒お嬢様共々よろしくお願い申し上げます」


 アマツと名乗った少女に紹介されたセンリは丁寧に深々と頭を下げる。せっかく向こうも自己紹介をしてくれたのだ。仮に向こうが私達のことを知っているとは言っても、こちらも挨拶の一つもしないというのも無礼な話でもあるし、一先ずは社交辞令的に挨拶を返すことにする。


「あらためて、私はイーナ。もう知ってるかも知れないけど、ヴェネーフィクスのメンバーだよ。そして……」


「うん。ルートにナーシェさんに…… あとルカちゃんとテオくんだよね~~ もう知ってるよ~~ 話は全部お父様から聞いているからね~~」


「お父様?」


 アマツの言葉に、ナーシェが疑問を投げかける。声には出さなかったが私も同じことを思っていた。そして、すぐにアマツの父親が誰であるのか、私がずっと心の中でもやもやしていた問の答えが明らかになったのだ。


「そう私のお父様はミドウっていうんだ。あなたたちも良く知ってるよね~~?」


 ミドウ…… ミドウ……? ミドウさん?


 アマツのつかみ所の無い話し方に、混乱していた私ではあったが、アマツの言葉に少し遅れてようやく私の思考も追いついた。ミドウと言えば、使徒の中でも第1席に位置する言ってしまえば私達のボスみたいな存在でもある人物だ。


「ミドウさん!?」


 ようやく皆もアマツの言葉を理解したのか、一斉に驚いた声を上げる。アマツがミドウの娘!? まあ年齢から言えば納得も出来る話だが、アマツは見た目も小悪魔系美少女と言った雰囲気で可愛らしく、ごつくて体格の良いミドウとはいろんな意味で似ても似つかないようなそんななりをしていたのだ。


 驚く私達を尻目に、マイペースを保ったまま言葉を続けるアマツ。


「そうだよ~~ ここに来たのも、お父様から極秘の任務を授かってね~~ まあ、そういうわけだからあなたたちとしばらく一緒に行動させてもらうから~~ よろしく~~!」


「極秘の任務って?」


「そりゃあもう極秘だからね。極秘なんだよ~~」


 上手いんだかごり押しなのかわからないが、相変わらずの口調で私の問いかけを躱したアマツ。どうやら、目的までは聞かせてくれないようだ。極秘の内容がどんなモノなのか、気にはなるが、そうは言っても、アマツがミドウの娘とわかった以上、別に私達と敵対するような事もなさそうだし、この先の旅路に何か支障を来すような心配は必要なさそうである。一先ずはそのことだけでも十分だ。


「わかったよ。こっちの目的についてはもうアマツ達は知っていると言うことで…… 大丈夫なんだよね?」


「賢者の谷に行って、魔鉱石の流通ルートを確保する…… アレクサンドラの婆さんからの依頼だよね~~? もう情報は仕入れ済だよ~~」


「それって、アマツ達がここに来た理由にはアレクサンドラも絡んでいると言うこと?」


「絡んでいると言えばそうだし、そうじゃないと言えばそうじゃないし~~ でも、安心してよイーナ~~! あなたたちが変なことをしなければ、別に私達だってあなたたちと敵対しようだなんて気持ちはさらっさらないからさ~~」


 少し引っかかる言い方である。何よりずっと笑顔を浮かべたまま淡々と話し続けるアマツは、悪い子ではなさそうではあるが、どこか不気味というか…… こっちのようすを探っているというか…… とにかく、油断だけはしない方が良さそうである事は間違いなさそうだ。


 そのまま、特に話に花が咲くこともなく、なんとなく重苦しいような雰囲気のまま、私達を乗せた馬車は目的地であるグシア村に向けて、動き続けていった。


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FOXTALE(Youtube書き下ろしMV)
わたし、九尾になりました!のテーマソング?なるものを作成しました!素敵なMVも描いて頂いたので、是非楽しんで頂ければと思います!

よろしくお願いいたします。 ツギクルバナー
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