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40話 大神との戦い


「おい、ヤキネ…… 聞いたか? どうやら、お前も奴らの敵になってしまったようだぞ?」


 冷静にヤキネに語りかけるシナツ。ヤキネは少し不機嫌な様子でシナツに言葉を返す。


「連れてきたのはお前達だろ? お前達で何とかしろ。勝手に来たうえに、敵まで連れてこられたのではシャレにならん」


「そんな事をいっていられるような状況ではないと思うが……? 俺達がやられたら、お前1人でどうやって奴らに立ち向かうつもりだ?」


「マガヒを倒すと言っていたくせに、部下にやられているようでは話にならないな。もしお前が本当にマガヒを倒せると言うのなら、いくら数が多かろうとあの程度の奴らくらいなら余裕で倒せるはずだ」


「変わらないな、ヤキネ。どうなっても知らんぞ」


「……俺だって自分の身がかわいいのには間違いない。大神のいざこざに巻き込まれて命を失うわけにはいかないのでな。もし、お前達が確実にマガヒを打ち破れるというのなら協力してやってもいい。その力を俺は見させてもらう」


 ヤキネは相変わらず淡々とした様子でそう言葉を発したが、ヤキネの言葉の意味するところを理解するのは私にとってもそう難しいことではなかった。ヤキネの言葉が意味するところ…… つまりは、目の前にいる奴ら、私達を目の敵にしている奴らを退けることが出来れば、協力してやってもいい。そういうことである。


 そして、先ほどまでヤキネに向けて淡々と言葉を返していたシナツの表情が少し緩む。シナツもヤキネの言葉の意味する所をもうすでに理解していた。少し明るい声色で私達に問いかけてくるシナツ。


「……イーナ、ルート、それに皆、申し訳ないが…… 協力してもらえないだろうか?」


「今更言うまでもない。どうせ奴らを倒せなければ俺達も死ぬ」


「もちろん!」


 もうすでに、私達の返事も決まっていた。目の前に立ちはだかる大量の大神たちに向けてハインから託された剣を構えた私。そんな私達の様子を見て、笑う大神達。大神たちの先頭に立っていたスガネは笑みを隠しきれない様子で、私達に向けて口を開く。


「お前ら、この数の大神を相手に本当に戦う気か? 降参するなら楽に死なせてやるつもりだったんだがな……」


「さあ、あなたたちこそ私達のこと…… 舐めすぎなんじゃないの? 炎の術式…… 炎渦!」


 そう言いながら私は、掌に溜めていたマナを一気に放った。私の詠唱と同時に、目の前に大きな炎の壁がせり上がる。大神の最も恐ろしいところは、目に見えぬほどの速さで移動する、あの風切という魔法である。つまり、まずは大神の機動力を封じること。そのために、私が密かに考えていた対抗手段である。


………………………………………


「くっ…… なんだ!? 急に炎が……」


「どうなってるんだ…… 人間がこんな魔法を……」


 バチバチと音を上げながら燃えさかる炎。その炎の壁を前に、すっかり相手を舐めていた大神たちは一瞬パニックを起こした。だが、流石に歴戦の大神の猛者は、その程度では焦らなかった。慌てる部下達に向けて高らかに叫ぶスガネ。


「慌てるな! 数の上ではこちらが有利! 敵はたかが数人。シナツさえ倒してしまえば、後は人間のみ…… どうせ炎の壁もすぐに消える。その時が奴らの最期の時だ」


 スガネの一言で落ち着きを取り戻す大神たち。次第に収まっていく炎の壁を前に、大神たちは一斉に攻撃をする準備を整える。


「しょせん時間稼ぎだ!あの炎が消えれば奴らも終わり!」


 大神たちの読み通り、目の前に立ちはだかっていた炎の壁はすぐに小さくなっていった。奥からちらりと人間の姿が見え隠れする程度まで炎が収まると、再び大神たちは余裕を取り戻していった。次第に炎の奥に見えた人影が鮮明になっていく。最初は頭だけだったが、次第に顔、そして身体と見えるようになっていく。


………………………………………


「……準備は出来たぞ、イーナ」


「了解!こっちもいけるよ! 大神の2人は、ナーシェとルカのことをお願い! 前線は私とルートで引き受ける!」


 私だって闇雲に、炎の魔法を使ったわけではない。あそこで時間を稼いだのは、シナツがルートに憑依する為である。そして、私の思惑通り、大神たちの動きが止まった。それだけで、私達にとっては十分だった。私達を包み込んでいた炎の壁はだんだんと小さくなっていき、炎の奥に大量の大神たちの姿が見えはじめる。いよいよ交戦の時というわけだ。


「2人? 人間が、たった2人で我らに立ち向かおうというのか? 舐められたものだな!」


 こちらの姿を見た大神たちが声を上げる。同時に数匹の大神がこちらに向かって一気に飛びかかってくる。奴らの目標は、私ではなくて…… ルートのようであった。あのときに見た技と同じ技。「風切」と呼ばれる技である。


「まずは、お前だ! あの厄介な術を使う女は後回しだ!」


「シナツ!」


 シナツの名を叫ぶルート。途端、ルートの周囲を一気にマナが渦巻く。ルートに向かって突っ込んできた大神はそのまま、ルートの喉元めがけ噛みつこうとしていたのだ。だが、その刃はルートに届くことはなかった。


「なっ……」


 ルートの目の前、足元の何もないところから、急に現れたシナツ。ルートめがけ一気に突っ込んできた大神の首元にシナツの鋭い牙が突き刺さる。シナツに貫かれた大神はそのまま力なく地面へとその大きな身体を沈めた。


「な、何だ! 何が起こった!?」


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わたし、九尾になりました!のテーマソング?なるものを作成しました!素敵なMVも描いて頂いたので、是非楽しんで頂ければと思います!

よろしくお願いいたします。 ツギクルバナー
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