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31話 調査開始!


 ナリス -Naris-


 シャウン王国の中央部、ちょうど、王都フリスディカから北に向かった場所に位置する街である。農業都市として発展したこの街は、フリスディカへの食糧の供給の拠点として、古くからフリスディカと共に発展してきた。またナリスより北は、寒冷な気候へと変わることもあり、大きな街というのはあまり存在していないようだ。


 ナリスの街中央部に位置する、ギルドの支部。ナリスの街へと到着した俺達がまずはじめに向かったのは、他でもなくギルドの窓口であった。


 移動中にルートとナーシェに教えてもらったが、ギルドの依頼に赴いた際に、最優先でやらなければならない事は2つある。一つは、任務の内容について詳細を聞くこと、そしてもう一つは、滞在先の確保である。両方とも、ギルドの支部でできる事である以上、最初に行うべき事は、ギルドの支部に向かうと言うことで間違いは無い。


「俺達はヴェネーフィクスというパーティだ。野犬討伐の任務とやらの詳細を聞かせてもらいたい」


 ギルドパスを見せながら、窓口に座っていたおじさんに語りかけたルート。だが、おじさんは、ルートの後ろから会話を見ていた俺、そしてルカ、テオに一瞬目線を送った後に、ルートに向かって言葉を返した。


「おいおい冗談だろ? ペットまで連れて、ピクニックにでも行くつもりじゃないだろうな?」


「まさか? それならばもっと気の休まるところにいくだろう?」


「違いないな。だが、いつの間にヴェネーフィクスはお嬢様達の集まりになっちまったんだ? 昔、俺も何度か見たことがあるが、もっと強そうな男達が多かったはずだが…… これじゃスイーツショップかブティックにでも向かうとしか思えないぞ」


「新陳代謝が活発なのは良いことだろう? それに見た目で侮ってもらっては困る。新たに加入したこの2人…… イーナもルカも相当な力の持ち主だぞ」


 完全に俺達の事を舐めて見ているおじさんに堂々と言葉を返すルート。その言葉を聞いたルカは、ふふんと得意げな顔を浮かべながら、おじさんの方を見返していた。だが、おじさんは、ルートの言葉など全く信じていないようで、相変わらず俺達を子供扱いしたままこちらに向けて口を開いた。


「そうかそうか! 怪我をしないように気をつけてくれよ! せっかくの可愛い顔に傷でもついてしまったら大変だからな!」


「ご忠告ありがとう。それで任務の詳細は? どんな状況になっているの?」


「ナリスの街の外れ、農業地帯の先には、ナリス森林と呼ばれる大きな森林が広がっている。野犬共…… 奴らはその森を根城にしているようで、時折畑の方まで降りてきては、作物を食い荒らして行くんだ。農家達も、いろんな対策をとってきたが、結局どれも効果は無かったようで。最終手段と言う事で、ギルドに頼ってきたというわけだ」


「なるほどな、だが、そいつらは本当にただの野犬なのか?」


 おじさんの説明を聞きながら、ルートが言葉を返す。任務について、野犬討伐としか聞いていなかった俺は、てっきり相手は犬であると思い込んでいたが、確かにルートの言うとおり、凶暴なモンスターである可能性だってある。


 というか、この世界に来てから出会った動物たちは、妖狐といい、ケット・シーといい、見た目こそ俺のいた世界の動物に似てはいるが、皆不思議な力を使うのだ。今回の相手の犬だって、何らかの特殊な力を持っていることは十分に想定しておかなければならないのは間違いない。


 だが、おじさんもあくまで又聞きのような形でしか、任務の情報については知らされていなかったようで、それでも、少し困った様子をしながらも、ルートの問に答えてくれたのだ。


「報告では、特に凶暴なモンスターの類いといったような様子ではなさそうだ。農作物こそ被害が出ているようだが、今のところ人が襲われたというような報告はない。だが、いかんせんすばしっこい上に、森に姿を隠すので、なかなか対処にも苦労が尽きないようだな」


「……まあ、そりゃそうだろうね……」


 野犬とやらが、なにかしらの能力を持っているのか、はたまた普通の野犬であるか、正体については詳細を調べてみなければわからないが、確実に言えることは、正面から犬たちに向かって言ったところで、効率よく対処するというのは困難を極めると言うことである。


「だが、人に対して直接、被害が出ていないというのは不幸中の幸いだな」


「どっちにしても、現場を見てみないことには何とも言えないよね……」


「そうですね! 宿舎の方を確保したら、早速現場の方に向かってみましょうか!」


 ナリスの宿舎に荷物を置いた後に、俺達は早速街外れの畑が広がる農業地帯へと赴いた。本格的な調査は明日以降になるが、この後の計画を立てるという上でも、早めに現場は直接この目で確認しておきたかったのだ。


 ちょうど近くにいた農家から話を聞きながら、俺達は現場を早速確認していた。


「ちょうど、あっちの方からですね! 主に早朝や夜に畑の方には出てきているようです。こちらもカカシを置いたり、ネットを張ったりしたり対策をいくつか考えては来たのですが、どれもあまり効果が無くて……」


 元々ナリスの近くの森では野犬が生息していたらしいが、こんなに人里の方まで出てくるようになったのは、ここ最近のことらしい。だからこそ、対策にもなかなか苦慮しているとのことだが、それでも彼らだってなにもしないと言うわけにはいかない。せっかく育てた作物を、野犬に食い荒らされるのをただただ見ているだけということはあり得ない話で、ナリスの住民達も四苦八苦してきたようだ。


「本当は、こちらだって駆除なんてしたくは無いんです。でも、こっちも生活がかかっていますから……」


「うん! 私達も同じ気持ちだよ! 何とかして皆の力になりたい!」


「お、イーナ! ずいぶんとやる気に溢れているじゃないか!」


 笑顔を浮かべるルート。やる気に満ちあふれるのも当たり前だ。なんと言っても、今回の任務は完全に獣医師としての経験が生きる可能性が高いのだ。


「そりゃあ、私の専門の仕事だからね! やる気も出るってもんだよ!」


「イーナ様! ルカも頑張るよ!」


「おうおう、ヴェネーフィクスの皆さんじゃありませんか?」


 すっかりやる気に満ちあふれていた俺達だったが、不意に何処かで聞いたことのあるような声が響き渡ってきた。あんまり良く覚えていないが、なんだかとっても不快になる声…… 


 そうだ、ギルドで俺達に絡んできた連中だ。


 確か名前は……


「あ、さんだーうぃんぐ!?」


 彼らの姿を見たルカが唐突に叫ぶ。確かそんな感じの名前だったことだけは覚えていたが、詳細までは全く覚えていない。ただ、正直滅茶苦茶ださい名前だった、そのことだけは俺の脳裏にはっきりと残っていた。


「そうだ、俺達も野犬退治の任務に携わることになってな!」 


 ……。


「……好きにすれば?」


「ふん、俺達が先に討伐をさせて貰う。お前達の出番はない。良かったな! 怪我をしなくて!」


 そう言いながら高らかに笑い声を上げて、森の方へと歩いて行った男達。何というか…… これ以上彼らについて言及するのはやめておこう……


「えー! イーナ様! ルート! ナーシェ! 大変だよ! このままじゃ先を越されちゃう!」


「ま、まあ…… 大丈夫じゃないかな?」


「イーナ、ああ見えても奴ら腕は確かだ。もしかしたら本当に先に任務を済ませてしまう可能性だってゼロとは言えないが……」


「もし、他の人達が解決できたら、別にそれでいい話でしょ! それにせっかくサンダーなんとかの皆さんが森に行ってくれると言うんだから、その間にこっちはもう少し調査をするべきかなとは思うけど!」


「そうだな。少なくとも相手がどんな奴かまだ情報が少ない今、下手に森に突っ込むというのでは思わぬ危険が待っている可能性もある。俺達はもう少し調査を続ける。ナーシェとルカはどうだ?」


「そうですね! いいと思います!」


「うん!」


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FOXTALE(Youtube書き下ろしMV)
わたし、九尾になりました!のテーマソング?なるものを作成しました!素敵なMVも描いて頂いたので、是非楽しんで頂ければと思います!

よろしくお願いいたします。 ツギクルバナー
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