2-32話 わたし、『恋』しちゃいました!
第2部1章完結です!
陸の座ルート、そして漆の座リンドヴルム、㭭の座スクナと紹介は続いていった。そして、ここからは新たに零番隊に加わる2人の紹介。
元々私が位置していた零番隊玖の座。そこに座ることになるのは、この試験で優勝したルカ。そして、拾の座、最後の席に座るのが、グレンというわけである。会場にいた観客誰しもが納得し、惜しみない拍手を2人へと送ったのだった!
紹介も無事に終了し、全ての行事を終えた私達。無事に試験も終了したと言う事で、安堵していた私とルート、そしてルカの元に、ミドウが近づいてくる。
「ご苦労だったなイーナ! ルート! それにルカ! 無事に試験も終了し、新たに零番隊に加わる者も決定した! ルカ、これからはおぬしも立派な零番隊の一員だ。よろしく頼むぞ!」
「うん! ミドウさん! 私頑張るよ!」
気合いを入れ直したルカは、目を輝かせながらそう口にした。豪快に笑みを浮かべるミドウ。ミドウに釣られて笑みを浮かべていた私達に、どこか緊張したような強張った表情を浮かべながらルートが言葉をかけてきた。
「……ルカ。それにイーナも……」
「?? どうしたの? ルート?」
ルートは自らの懐にごそごそと手を突っ込み、小さな箱を取り出した。その箱をルカに向けて差しだしたルート。きょとんとした表情でルカがルートに問いかける。
「ルート? これって?」
「……お前達2人のお陰で、ヴェネーフィクスという俺の居場所は今日まで残ってこれた。2人には感謝してもしたりない。せめて、何か…… 俺から感謝の気持ちを送りたくてな。なかなか渡せなくて…… 遅くなってしまったが、こうしてルカも零番隊に加わることになったしちょうど良いかなと……」
少し照れくさそうに、しどろもどろになりながらも、そう口にしたルート。ルートなりに私達のことを考えて、選んでくれたプレゼントなのだろう。ルカはすぐに笑顔を浮かべ、ルートに向かって頭を下げる。
「ありがとう! ルート! すっごくうれしいよ!」
「……イーナ、イーナにもあるんだ!」
そして、もう一つ、ルカに渡したものと同じくらいの箱を取り出したルート。そのまま私の方に、ルートはその小さな箱を差しだした。
「……ありがとう! ルート! あけてみてもいい?」
「ああ」
視線を逸らしながらそう小さく言葉を漏らしたルート。ルートがくれた小さな箱を開けると、そこにはキラキラと光り輝く石が埋め込まれたネックレスがあった。私とルカ、それぞれ赤色と青色のお揃いのネックレスだった。
「すごい! これすごく可愛いねルート!」
「すごーい! イーナ様とお揃いだ!! ありがとうルート! わざわざ私達のために選んでくれたの!?」
「……何を渡したら喜んでもらえるか、わからなかったから、色々と街を見て回ったんだ。そしたら、贈り物にはぴったりだと、店員にお勧めされてな。魔鉱石で出来たネックレスで、何でも幸せを呼び込む力が宿っているとか何とか……」
少し照れくさそうに、そう言葉を告げたルート。私の脳裏に、あのとき街で女性と楽しそうに買い物をしていたルートの顔が思い浮かぶ。
――それって…… あのとき、ルートが街で女の人と楽しそうに買い物をしていたのって……
そんな事情など露知らず。ルカは嬉しさを隠せない様子で声を漏らした。
「幸せかあ~~ じゃあその人の言葉は正しかったんだね! だってルカ今すっごく幸せだもん!」
「本当か!?」
ルートの表情がぱあっと明るくなる。きっとルートも不安だったのだろう。まあ、ルートもこういうプレゼントとか…… そういうのを誰かに送るような性格でもないのはわかっていた。それも相まって、私にとってはすごく驚きだったのだ。
「ねえねえイーナ様! つけてみようよ!」
そして、自らの青色のネックレスを手にしながらルカが私へと話しかけてくる。
「うん!」
ルートが選んでくれたネックレスを首へとつける。きらりと赤く光る魔鉱石が、すごく可愛らしい。
「ねえねえ! ルートどうかな?」
「似合ってる。2人ともな」
似合ってる。たったそれだけの言葉。だけど、それは私にとってすごく幸せになる、そんな言葉だった。それはまさに、その店員さんが言うとおり、幸せを呼び込むネックレスに他ならなかった。
「ありがとう大事にするね!」
「がっはっは! 若いって言うのは本当に良いものじゃのう!」
そんな私達のやりとりを黙ってみていたミドウは、豪快にそう笑い飛ばす。ミドウの声にこの場にいた皆が釣られて笑う。私の首元で赤く輝くネックレスからは、私達のことを真剣に考えて選んでくれたルートの優しさ、そんな暖かさが伝わってきたのだった。
いつもお読み頂いている皆様へ!
ここまでお読み頂きありがとうございます!
本来は、第1部で完結の予定だったのですが、まだ私自身書き足りないと言う気持ちが強く、気が付けば、第2部という形で、物語を紡いでいました。
この作品は私にいろいろなものを与えてくれました。書いていて辛いと思ったことは一度も無く、今にも続きを書きたい、そんな衝動に駆らせてくれるような、私にとって間違いなく一番大切な作品です。
だからこそ、このキリの良いところで、一度物語を締めたいと思います。私事で恐縮ですが、自らの作品と向き合い、考えをまとめる時間が必要だと判断したからです。きっといつかまた、イーナの物語の続きを描けることを信じて、読者の皆様に感謝の気持ちを込めて、ここまでお読み頂いた皆様への私の挨拶とさせて頂きます。
ここまでお読み頂いた皆様、本当にありがとうございました! そして、またお会いできる日を心より楽しみにしております。
惟名 水月




