2-23話 集う討魔師達
「……これで最後かな!」
各協会から続々と送られてきた推薦人物も、このフリスディカの討魔師協会からのリストで最後になる。カムイ、ナリス、トゥサコン…… シャウン国内にある主要都市の協会からは、既に計25名の候補者達の志願書が送られてきていた。そして、残るフリスディカ討魔師協会、ここから推薦される11名を合わせ、計36名での最終選考となると言うわけだ。
「これって……」
そのリストを見て、私は思わず口元が緩んでしまった。
「お、何か良いことでもあったのか?」
そして、リストを私から受け取ったルートも、どうして私が微笑んだのか理解したようだった。フリスディカ討魔師協会から送られてきた、一次選考合格者の中には、ルカの名前もあったのだ。
「ルカ…… あいつも受験していたんだな!」
「うん! ルカにとっても零番隊に入るのが、ずっと夢だったらしいから……」
「……イーナ、いくらルカも受験しているとはいえ、試験は試験だぞ」
「わかってるよ! 大丈夫。大丈夫。特別扱いはしないって!」
まあ、そもそも特別扱いなんてしようと思ったところで出来るようなものでも無い。今回の試験…… 王都フリスディカにある、王立競技場と呼ばれる場所で開催される。観客として一般市民も見に来る他、王の直属の舞台である零番隊の選抜行事というだけあって、王や一部の大臣までもが見に来るという一大行事になってしまっていたのだ。
ミドウ曰く、広く零番隊の実力を市民に見せることによって、堕魔に対する抑止力を高めると言う狙いらしいが……
ともかくだ。試験は一般市民や王の前で盛大に行われる。そんな場で不正なんて出来るわけがない。私達は、公正、公平に新たに零番隊の一員となるメンバーを選抜するだけだ。
それに今回の注目はルカだけではない。受験者には、既に名が売れているような討魔師も沢山応募している。あのサンダーウィングのリーダーであったアルトもそうだし、若手の討魔師の中でもホープと呼ばれているような者達が沢山いるのだ。
特に注目は、討魔師グレンと呼ばれる男。最近、トゥサコン方面を中心に活動している討魔師の1人であり、何でも氷の魔法で多くの堕魔達を打ち破ってきた、最近話題の討魔師であるらしい。私は直接会ったことはないが、よく協会との会話でも名前が挙がる人物である。
「討魔師グレンか…… 俺も会ったことはないが、よく名前は耳にするな……」
「ね! 私も良く聞くよ! 今回直接グレンの力を目の当たりに出来るというのが楽しみで仕方ないんだ!」
「それで、イーナ? ルカは受かりそうなのか? お前の目から見てどう思う?」
ふと、真面目な様子でそう問いかけてきたルート。何だかんだで、ルートもルカの事を心配してくれているのだろう。まるで娘の事を心配するような父親かと錯覚してしまうような、そんな様子だった。
「……うん、大丈夫じゃないかな」
確かに今回の受験者達は、討魔師の中でも、選ばれた討魔師達である事は揺らぎようのない事実。相当な実力者達が集う試験となるだろう。だけど、それでも…… 私はルカなら、ルカの力なら零番隊の座を勝ち取れる、そう確信に近い思いを持っていた。
「皆すごいけどさ! ルカだって私達と一緒に旅してきたんだし…… それにルカだって妖狐の一族だからね!」
「……ああ、そうだな!」
色んな人の思いが詰まった討魔師選抜試験。そしていよいよ、討魔師選抜試験の本戦の日が訪れたのだった。




