2-21話 少女のケツイ
『未来を守るのは君だ! 零番隊加入者募集! 申し込みは各街にある討魔師協会まで!』
その日、シャウン王国全土に伝えられた知らせに、討魔師として活動した者はおろか、そうでない一般市民もざわついていた。今や零番隊と言えば、王の名の下に活動する、討魔師の中でも選ばれた存在。それだけの地位と名誉があるのだ。
「なあなあ、あの知らせ見たか……? 零番隊募集の!」
「見た見た! しかも受験資格は誰でも何でしょ!」
フリスディカの街も、街中その噂で持ちきりだった。そして、街角でその張り紙に張り付くように、夢中になっていた少女が1人。
「……零番隊募集…… 合格すれば、私も……」
その少女にとって、零番隊とはまさしく憧れそのものだった。自分の最も尊敬している人、そして同じパーティとして一緒に活動していた人が所属している零番隊。かつて、ヴェネーフィクスというパーティで活動していた頃は、ずっと一緒に入れると思っていたはずなのに、気が付けば2人とも遠くの世界に行ってしまったような…… 少女はずっとそんな寂しさを感じていたのだ。
だけど…… これなら私も……
また、私もイーナ様やルートと肩を並べて生きていける。私だって、何もしてなかったわけじゃない。あのときより…… ずっと、ずっと…… 強くなっているんだから!
気が付けば、少女の足はフリスディカの討魔師協会へと向かっていた。
――こんなチャンス逃すわけにはいかない。私だって、零番隊の一員として、イーナ様と、ルートと、それにミドウさん達と一緒に戦いたい。
「すいません! あの張り紙!」
「ああ、零番隊の募集の…… ってルカじゃない!? あなたも受けるつもりなの?」
討魔師協会の受付には、かつてヴェネーフィクスというパーティだった頃、良く任務を受けていた顔なじみのお姉さんがいた。
「うん! 受けるよ! そして絶対、零番隊に入るんだ!」
「……うん。きっとルカなら大丈夫ね。なんと言ってもあの『ヴェネーフィクス』のメンバーだったんだし……」
かつてルカ達が所属していたヴェネーフィクスというパーティは、現在の討魔師、要はギルドのハンターとして活動していた者で知らないものはいないとまで言われている。アレナ聖教国での一件の噂、それにかつてヴェネーフィクスのメンバーだったうちの2人が、現在の零番隊の核として活躍しているのだ。それも『炎の魔女』やら『風狼』やら、大層な通り名まで付いているときている。
「おお、ルカじゃねえか! 姉御は元気か!」
「あ、アルト! 元気してた? イーナ様も元気にしてるよ!」
討魔師協会の受付にいたルカの元に近づいてきたのはアルト。かつて、サンダーウィングというパーティで活躍していたハンターだ。
「そうかそうか! 姉御の活躍の噂は毎日のように聞いているからな! 一番弟子として俺も鼻が高いぜ!!」
「えー…… 一番弟子は、私だけど……」
「それよりだ! ルカ、お前もここに来たって事は受けるつもりなんだろ? アレ……」
「もちろん! アルトも受けるつもりなの!?」
「そりゃあな! 俺だってここ最近は討魔師として結構名前が売れてきたんだぜ! いつまでも姉御や…… それにルートの野郎において行かれるわけにもいくまい! そしてこんなチャンスときたもんだ! これは絶対に運命だ!」
意気揚々と語るアルト。そして、ルカもアルトの意見と同じだった。
「じゃあ、私達、ライバルだね! アルト! 私は負けないよ!」
「俺だって負けるわけにはいかねえ! 見てろルカ! 進化した俺の姿をな!! じゃあな!!」
そして颯爽とその場をあとにしたアルト。俄然ルカに気合いが入る。そう、今回の試験は、間違いなく自分の腕に自信のある、強者達が集うものになるだろう。そこで、見事零番隊に選ばれると言う事になれば、それはすなわち、自分の力を認めてもらえると言う事になるのだ。憧れの人に。
「……よーし! 私も絶対…… 選ばれてみせる!!」




