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119話 敵の本丸へ


 前から迫る大量の魔道士達。それでも、あのくらいの敵なら私一人で十分だ。なにせ見知らぬ私達のことを信じてくれ、行くあてもなく困っていた私達を助けてくれた、フリーフェイスや、9番地区の皆のため、アレナ聖教会の魔道士達には申し訳はないが、最初から全力で行かせてもらう。


「侵入者だ! 各自魔法の準備を……!」


 魔道士達の慌てふためく声が聞こえる。だが、もうすでにこちらの準備は整っている。遅い。今更、魔法を発動しようとしたところで、もう遅いのだ。


「炎の術式、炎渦!」


 門をくぐり抜けた先、本部の前にある広場を一気に炎が包み込む。急激に目の前を炎に包まれた魔道士達は、一気に混乱に包まれたようだ。


「なんだ!? 敵にも魔法使いが……!」


「それも、この力…… 並大抵の奴じゃないぞ……!」


 動揺に包まれた兵士達へとむかって、一気に距離を詰めたのは仲間達とフリーフェイスの面々。大量に向かってきていた魔道士達も、指示系統が乱れ、こうなってしまえばただの烏合の衆。普段から荒くれ共が集う9番地区のいざこざの対応にも慣れているフリーフェイスの面々の前では無力に近かったのだ。


 そう、以前、妖狐の里でハインから言われたとおり、『接近戦においては、魔法よりも剣の方が速い』。ましてや普段から魔法に頼り切りの魔道士達は、闇夜の中、現場の混乱により指示系統が乱れた今、接近戦でまともに力を発揮することが出来なかったのだ。


「……イーナ、お前…… やるなあ!」


 私のすぐ後ろにいたブラックが、厳つい顔をくしゃくしゃにしながら微笑む。そんなブラックに一瞬笑顔を送った私。


「まだまだ、こんなもんじゃないよ!」


「ああ、頼りになるぜ! このまま一気に聖教会の本部を制圧する。内部には、聖教会の幹部共…… シュルプ本部のマーズ大司教がいるはずだ!」


 聖都シュルプを仕切るアレナ聖教会シュルプ本部。その中でもトップに君臨するのが、アレナ聖教会に5人しかいないとされる大司教の一人、マーズ大司教だ。所詮魔道士達なんて私達にとっても、フリーフェイスの面々にとってもどうでもいい。本命はそのマーズ大司教。そして、大司教と言うだけあり、魔力については他の魔道士達よりも遙かに優れており、そう簡単にはいかない、今回の作戦におけるボス的な立ち位置になる男である。


 だが、それでもこちらには勢いがある。リーダーのザイオン達が頑張ってくれているからか、シュルプの市街地の方から応援の魔道士達が到着するような気配はない。それにもう少しすれば、街の外で待機してくれていたエンディアからの援軍も到着するはずだろう。攻めるなら今しか無い。


 本部へと押し寄せていくフリーフェイスのメンバー達。彼らに遅れないように、私達も一気に本部へと向かう。そして、本部の扉が開き、荘厳な教会のような内装の広間へとたどりついた。その最も奥に、一人立っていた男は、深夜で襲撃の備えも満足に出来ていなかったのだろう。ローブの隙間からは、部屋着のようなラフな格好が顔を覗かせていた。


 だが、そんな状況でさえ、断じて引く様子を見せない初老の男。男からは今までの魔道士達とは比べものにならないほどの圧倒的な魔力を感じる。それだけで私達には、その男の正体は明らかであった。


 そう、アレナ聖教会の大司教の一人、マーズである。


「……おぬしら、自分らのやっていることの愚かさ、自覚しているのだろうな?」


 こちらを威嚇するように、マーズ大司教はそう言葉を放つ。流石大司教と言うだけあり、全く動揺しているような素振りもない。服装は…… 動揺というか、急ごしらえではあったが……


「てめえを倒して! このシュルプを開放する! てめえをやるのは俺だあ!」


 フリーフェイスのメンバーの一人が、マーズ大司教に向けて単身つっこんいく。


「まて!」


 制止したブラックであったが、既に時遅し、魔法の発動の準備を整えていたマーズ大司教は、自らへと迫ってきた若き男に向かって、静かなる怒りの刃を向ける。


「愚かなり…… 死して償え」


 マーズ大司教の足元から、強大なマナの力を感じた私。間違いない。あれは…… 私達がやっているのと同じ…… 召喚である。つまり、彼も私達と同じ。巫人であると言うことに違いない。


 大司教へと突っ込んでいった男は、足元から突然に現れた大きな炎に一瞬にしてその身を飲まれたのだ。そしてマーズ大司教を取り囲むように、上がった炎の隙間から、光る目が顔を覗かせる。炎を巻き起こした正体。それは、トカゲのような生き物であった。


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FOXTALE(Youtube書き下ろしMV)
わたし、九尾になりました!のテーマソング?なるものを作成しました!素敵なMVも描いて頂いたので、是非楽しんで頂ければと思います!

よろしくお願いいたします。 ツギクルバナー
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