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116話 仲間との再会


 夜のバーの営業が始まり、店の手伝いに勤しんでいた私。最初こそ、ちょっと恥ずかしさもあったが、やってみれば酒の席での接客というのもなかなかに楽しいものだ。それに、半分はアリアの趣味もあるだろうが、コスチュームも沢山ある。


 どうせこのままずっとアレナ聖教国で生きていくと言うわけではないし、仲間達もいない今、何も恥ずかしがることなく、可愛いコスチュームを着られるのだ。そう、私はいろんな可愛い衣装を着ると言う魅力に、すっかり取り憑かれていたのである。


 そして、何より店のおじさん達がちやほやしてくれるというのが、想像以上に楽しいのだ。やっぱり可愛いねとか、美人だねとか、そう褒めてもらえるというのは嬉しいのだ。

褒められて嬉しくない女の子はいない。それが自然の摂理である。


「イーナくん、お疲れ様! アリア君と交代で、ちょっと休憩してきてかまわないよ!」


 しばらく働いた後に、笑顔を浮かべながら私にそう伝えてくれたマスター。お言葉に甘え、休憩から戻ってきたアリアと交代で、私はバックヤードに向かった。


 椅子に腰掛け、ふうっと息をつく。ここで働きたいと言った理由、もちろんマスターに対し少しでも恩返しをしたいという気持ちも大きかったが、一番の理由、それは、何か身体を動かしていないと、仲間達の事を思いだし焦りや不安といった感情が芽生えてきてしまうということだ。


 ルカや皆は無事なのか。ひもじい暮らしを送っていないか、そう思うと、いても経ってもいられなくなる。だが、今の私にはどうすることも出来ない。だからこそ、こうして、働くことで、忙しい環境に身を置くことで、働いている間だけは忘れられる。それがある意味では私にとって心地が良かった。


 それに、何度も言うがここならば、普段だったら到底恥ずかしくて着られないような衣装というのも着られる。女の子らしい服が着られる。ひらひらのついたちょっと短いスカート。それに可愛いジャケット。ちょっと露出は多いかも知れないが、ここならばさほど気にしなくても良いのだ。それもまた、私にとっては新鮮な経験で、そして、すごく楽しかった。


「そろそろ戻ろうかな……」


 少しだけ息をついた私は、再び客席の方へと戻る。ちょうど戻ったタイミングで、バーの扉が開く音が店内へと鳴り響く。また新しいお客さんが来たようだ。笑顔を浮かべたまま、私は扉の方へと顔を向ける。


「いらっしゃいま……」


「イーナ…… おまえ……」


 扉の方を向いた瞬間、そこにいたのはルートの姿。いやルートだけではない。フリーフェイスのサブリーダー、ブラックと共に、ルート、ナーシェ、ルカ、それにアマツとテオ。仲間達が全員集合している。皆元気そうだ。何よりである。


「おう、イーナ! お前の仲間達だろ? 見つかったぞ!」


 おおらかに笑いながら、大きな声を発したブラック。よかった。皆が無事で、本当に良かった。うん…… 良かった…… できれば、もうちょっと…… いつもの格好の時に会いたかった。


「イーナ様!? 何その格好!?」


 目をきらきらと輝かせながら、そう口にしたのはルカ。頭に血が上ってしまいそうな、顔が一気に熱くなるような、そんな感覚が私を襲ってくる。


「イーナちゃん……」


「いや…… あの……」


「まあせっかくだし、ちょっと飲んでいくとしようか! マスター! こいつらは俺のおごりだ! 酒を頼む!」


 ずかずかと豪快に店の中へと入っていくブラックに、付いていく仲間達。全く目を合わせてくれないルート。そして、私の方をちらちらと見てくるナーシェ…… 気まずい。本当に気まずい。


「イーナ様! 大丈夫だった!? ルカ、心配していたんだよ!」


 ルカだけはいつもと全く変わらない様子で接してくれる。うん、私も皆が無事で良かったよ。本当に。


「イーナくん、せっかくだから接客は君に頼んでも良いかな? 久しぶりの仲間との再会だろうし!」


「……はい」


 気を利かせてくれるマスター。だが、こんなひらひらの、露出の高い制服で、皆の元に向かうというのが、私にとっては何よりも気まずかった。だが、マスターの気遣いを無下にするわけにも行かない。私はそのまま少し重い気持ちで、久しぶりに会う仲間達の待つテーブルへと向かったのだ。


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FOXTALE(Youtube書き下ろしMV)
わたし、九尾になりました!のテーマソング?なるものを作成しました!素敵なMVも描いて頂いたので、是非楽しんで頂ければと思います!

よろしくお願いいたします。 ツギクルバナー
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