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幽体離脱-夢の世界を旅する二人-  作者: 砂風(すなかぜ)
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Episode12/考察

 旅館に泊まって一泊した僕は、一縷の望みにかけて目覚めないかを賭けたが、結局目を覚ましたのは旅館の一間であった。

 瑠奈もちょうど目を覚ましており、既にテーブルの左右に置いてある座布団に座っていた。


「起きるの遅い」

「いや……」もしかしたら現実で起きられるんじゃないかと期待していたとは、口が裂けても言えない。

「いや、心駄々漏れだから」

「ああ。そっか」

「で、きょうは包帯男の正体と、どうして現実に戻れないかをここで話し合うよ」

「ここで……か……」


 いつ包帯男が襲ってくるかわからない恐怖があるから、あまり同じ場所に長居はしたくないんだけど……。


「大丈夫。ここはあそこからだいぶ離れているからそうそう簡単には追い付けないわよ」


 とはいえ、包帯男は全身回りを包帯で包んでいるし、目元と口元しかわからない。そんな人物の正体をどうやって暴くというんだ。


「本来、NPC……要約すると、砂風とわたし以外の住民には意思がない。だから、誰か一人に固執するということはないの」瑠奈はつづけた。「なのに、あの包帯男は、砂風にだけやたらと執着を見せていた」

「そうは言われても……」

「だから、現実での砂風の知人、友人、トラウマ、嫌いな人とかなら、まだ理に叶っている。そういう人物に心当たりはない?」


 それを僕は否定する。


「現実での僕は、高卒で、職業後すぐに工場に勤めたけどすぐにやめてニート生活になり、友達と呼べる人間はひとりもいないよ」言っていて悲しくなってきた。「孤独な人生を歩んできた。怨まれたり、恨んだりする相手は誰ひとりもいないはずだよ」


「……」


「ああ、親は恨んでいるかもね。ああ、きっとそうだ。親には恨まれてる! こんなクズに育ってしまったのだから! 生きてる価値はない。なにをするにもダメ。おやにも否定される。いっそ死んだほうがマシなじんせーー!」


 バシンッ!

 と、一瞬なにをされたのかわからなかった。


 一時遅れて気づいたのは、僕は、瑠奈にビンタされたということだ。

 痛みはない。が、驚きのあまりキョトンとしてしまう。


「なら、わたしは、そのクズから生まれたタルパってことになるの!? つまりわたしもクズだと言いたいの!?」


 瑠奈は激昂していた。いまだかつてないほどの怒りを感じる。


「いや、そうじゃなくて……」


「砂風はやればできるのに、やろうとしないで現実から目を背けているだけじゃない! もっと現実を見ようよ……?」


 現実を見る?

 こんなグズ人間が現実を見たって何になるというんだ。


「わたしのマスターとして、相応しい人間になってよ!」


 瑠奈の瞳には涙が溜まっていた。


「どうせ僕はクズなんだよ! 金もない! 親のすねかじり! ニートに引きこもり! おまけに合法だけど薬物もやった! こんな人間生きていたって!」

「なら死にたいの!? わたしのいるこの幽界が壊れるんだよ!?」

「……」


 幽界が壊れる。それは嫌だ。

 でも、僕なんてグズなうえ、脱法ドラッグに手を出した人間……。

 ん?

 待てよ?

 本当に脱法ドラッグで昏睡状態なのか?

 なにかが引っ掛かる。


『砂風が離脱に気づいたのは地面に落下したときだよ?』

 瑠奈の言葉を思い返す。


 脱法ドラッグで昏睡状態になって離脱したのなら、布団からスタートするはずだ。


「……ん? た、たしかに」


 瑠奈も同意してくれた。

 待てよ?

 本当に僕は脱法ドラッグで昏睡状態になったのか?

 もしかしたら僕は、なにか大きな勘違いをしているのかもしれない。

 脱法ドラッグで昏睡して離脱したと勘違いして……脱法ドラッグが関係していることは間違いないだろう?


 なら、どこで幽体離脱したのだろう。



 僕はそこが引っ掛かって仕方なかった。

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