表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

ニートが魔術学園講師になる②

クライストスは、予想の斜め上を行く答えに、二度目のアホ面を晒し、フォーマの首を揺すっていた。


「じょ、女王陛下がわざわざ俺にぃ!?仕事を紹介ッ!?なんで!?」


「さあ?理由は知らないな。」


フォーマは肩をすくめて、困ったようにしている。


「私が頼まれたのは、君をある場所で働かせて欲しい、と、いう事だけだ。君こそ何か知っているんじゃないか?」


「思い当たる節は、何もねえよ……」


クライストスは、突然のことに、情報処理機能が完全にパンクしており、頭を抱えている。


「なるほどな…………。だから依頼人の名前を、聞いたら絶対に働かないといけないのか。」


「御明答。女王陛下の頼み事である以上、これを断れば、女王陛下の命令に逆らってるのと同義。女王陛下が許したとしても、他が許さないからね」


「ああ〜〜。働きたくない〜〜〜。」


働きたくないが、女王の頼み事である以上、断ることもできない。まさに、八方塞がりであった。

すると、クライストスは大事なことを忘れていたかのように首を傾げた。


「ん?そういえば、どこで働くか聞いてないぞ?」


そう、クライストスは、自分の就職先を聞いていなかった。

それを聞いたフォーマは、また、これから起こる事が楽しみで仕方ない、と、言った様子でニヤニヤし始めた。


「君の再就職先は………レニオデス魔術学園の講師さ」


「は、はあああああああああああああ!?」


本日、三度目のアホ面を晒ししていた。


「くくっ。君は本当に面白い反応をするね」


「じゃかましいわ、ボケ!!んなことより、俺がレニオデス魔術学園の講師だと?正気か!?」


レニオデス魔術学園は、王国の中でも、三指に入る名門校。

しかも、完全実力主義の校風から、貴族も平民も関係なく、入学できることにより、生徒の水準も、講師の水準も屈指のものだった。

そんなところに、二年間も引きこもっていた男を、講師として入れるなんて、正気の沙汰じゃなかった。

それに、それ以前の問題もあった。


「そもそも、俺たち<解放者>は、二年前の事件の一件で、政府上層部から睨まれている。そんな奴が魔術学園講師なんて、できるはず無いだろ。」




三年前。

打倒女王陛下を掲げる<革命軍>が危ない所まで戦力を保持していた。それを危惧した女王陛下は、秘密裏に腕に覚えがあり信用できるものを集め、女王直属騎士団<解放者>を作った。


<解放者>の戦果は凄まじいものだった。王城に入ったスパイの始末。武装した<革命軍>を少数で蹴散らし、<革命軍>本拠地を制圧。さらに、神殿の攻略。魔人との戦争。

表部隊だったら、表彰ものの手柄をいくつも達成していた。

だが、ある時<解放者>ナンバー2[星巫女]ヘレナ=シャーロットが謀反。

仲間の一人を殺し、試練の扉から魔獣達を解放し、近辺の村や街は壊滅。

死者は、一万人にも及んだという。


その一件から<解放者>は責任を取らされ解散。

元<解放者>のメンバーは、また謀反を起こすのではないかと政府上層部から睨まれていた。


だが、特例はいた。

この男、元<解放者>ナンバー5[大地]フォーマ=レイブルは能力の高さと、<解放者>になる前の戦争の戦果が評価され、自由に行動が許されていた。


しかし、それは特例中の特例。

ましてや、軍部の人間でも無ければ、宮廷魔術師でも無かった、元<解放者>ナンバー3[穢れ]クライストス=レイザーは、毎日、どっかしら監視の目がついており、自由に行動が許されない立場だった。


そんな男が、魔術学園の講師なんて、できるはずがなかった。


「確かに、あの事件の一件から元<解放者>は、政府上層部から目を睨まれている。でも、女王陛下が、裏で上手くやったみたいでね。条件付きで、政府上層部が認めたよ」


「条件付き?」


(あの頭が固い政府上層部が、特例を認めるだと!?どんなめんどい条件だ??)


「君の後輩で、今は、女王近衛隊副団長ネルトラ=シャルルちゃんを、お目付け役に、つけるなら魔術学園講師を、やってもいいらしい。」


「なっ、ネルトラを、お目付け役につけるだぁ〜!?」


「ああ、そうだとも。」


(なんでネルトラがお目付け役??…………女王近衛隊副団長って、どういうことだ………??)


クライストスは、どんな、めんどくさい条件が、来るんだ、と、予測していたが、どれにも、かすらないで、頭の中は混乱を極めていた。

フォーマは、混乱しているクライストスを、知ってか知らずか話し始めた。


「君が、引きこもっている間。ネルトラちゃんは、圧倒的スピードで戦果を挙げ、今は、女性初の、女王近衛隊副団長だ。……子供の時から、知ってる身としては、私も鼻が高いよ。」


「……そうか。ネルトラが……近衛隊副団長……」


ネルトラは、クライストスが魔術学園生徒だった時の、後輩だった。武術の才能は、ピカイチだったが、魔術の才能は(とぼ)しく、よく、クライストスと一緒に勉強していた。


(俺が、引きこもっている間に、そんなに出世してたのか………)


クライストスが、感慨深いものだなと、考えていると、頭の中に疑問が浮かんだ。


「……いや、まて。なんで、ネルトラが、お目付け役になったんだ??」


「それはね」


「そんなの、先輩が、心配だからです!!」


突如、扉の方から女の声が、聞こえた。

振り向くと、扉の方に軍服をまとって、仁王立ちをした、女性がいた。

身長は、女性の中では、珍しく大柄だが、別にごつい訳でもなく、逆に細い訳でもない、モデル体型で、桜色のふんわりとした髪は、腰まで伸ばしていて、街中で100人とすれ違えば、100人は振り返るような美女だった。


「ネッ、ネルトラ!?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ