プロローグ 悪徳の街
ある作品への愛情に突き動かされ、赴くままに勢いで書いた話。
なので基本、雑です。
男性向けライトノベル風なので、とってつけたようなエロとそこそこのグロがあります。
最初はそうでもないですが、だんだん残酷な表現が強くなっていきます。
苦手な方はご注意ください。
二十話ぐらいで終わります。
アメリカの都市、ボレアスシティ。
そこは海に面した街であり、あらゆる悪徳が栄える場所である。
冬のボレアスシティは雪に覆われていた。
夜の闇に混じる雪の結晶は、街を明るく染める色とりどりのネオンに照らされ、輝きを散らしながら落ちていく。
長く降り続く雪は地面に積もり、純白は雑踏によって瞬く間に汚れていった。
店から溢れ出た光は街を明るく染め、夜の到来を押し留めているようだ。
その明るさの下、街路からはまだまだ人々の姿が消える気配が無い。
この街はまだ眠らない。
日ごろの疲れを癒すため、住人達はこれから享楽に耽るのだ。
カジノ、バー、クラブ、ショーパブ、娼館。
この区画に並び建つ数多くの娯楽施設は、金を持った乗客の気を引くためにこれでもかと派手な外装をしたものばかりだ。
様々な人の感情を内包するとても華やかな街であるが、その裏側に入ればそこには多くの犯罪が蔓延っていた。
恐喝、強姦、密売、誘拐、殺人。
ありとあらゆる犯罪が、路地裏の闇の中には詰め込まれていた。
時間を選ばず、どこかで誰かが加害者となり、そして被害者になっている。
そんな街のあるビルの屋上。
街の喧騒も囁く程度にしか聞こえない場所。
そこで一人の人物が、その小柄な体を金網に叩きつけられた。
その人物は異様ないでたちをしていた。
子供のように小柄な体を白いスーツで包んだその人物は、顔をプロレスラーが被るようなマスクで覆っていた。
マスクは白の下地に大きな青いハートマークが描かれていて、ハートマークの中央にはギザギザの線が両断するように走っていた。
「お前は誰だ?」
マスクの人物が訊ねる。
その声は、ボイスチェンジャーによって歪められていた。
声音はあまりにも平然としたものだ。
むしろ、楽しげな調子すら含んでいる。
明らかに自分を害そうとする相手に対して、向けられるようなものではない。
「ヴァイス」
声を向けられた人物が答える。
その声もまた、歪んでいた。
対する相手もまた、異様さでは負けていなかった。
複数のプレートを繋ぎ合わせた強化服を着込み、顔にはフルフェイスの兜を被っていた。
その目に当たる部分はカメラになっているのか、青い光を放っている。
全体的に鋼鉄を思わせる暗い灰色で、その手には切れ味の良さそうなサムライソードが握られていた。
背には鞘と思われる棒状の物が背負われている。
二人の周り。
ビルの屋上には、十数人の男達が倒れていた。
男達の体には刀傷が走り、真っ二つにされた死体もあった。
多くの死体から流れ出た血が、屋上の床に広がっている。
「何故俺を襲う?」
「復讐だ」
「誰に対して? 残念ながら、俺はお前に見覚えが無い。お前みたいな変人は、一度見れば忘れないだろうからな。人違いだろう」
あくまでも茶化した調子でハートレスは答えた。
「いや、間違いでは無い」
そんなハートレスに、冷たく硬質な響きの声が否定を返す。
「私が復讐するのは、この街に巣食う全ての悪だ」
「ヴァイス。イカレた奴だ」
「お前ほどではない。ハートレス」
返される言葉に、ハートレスと呼ばれた人物は心底愉快そうに笑った。
歪んだ笑い声が辺りに撒き散らされる。
それを不快に思ったのか、ヴァイスはハートレスを袈裟懸けに斬りつけた。
肩から脇腹にかけて、刀傷が走る。
浅い傷だったが、大きな血管を斬られたために、その体から大量の血液が噴き出す。
そして極め付けに、ヴァイスはハートレスの体を強く蹴った。
金網が壊れ、ハートレスはフェンス諸共にビルの下、路地の闇へと落ちていった。




