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起動

この世界、何が起こるかわかるもんじゃない。

『全機ガスタービンエンジン始動。システム立ち上げ』

「ガスタービン始動確認。システム立ち上げ開始」

無線からの指示で暗く狭い中、一人で操作をしていた。

とってつけたかのようなガスタービン用コンソールのトグルスイッチを一つずつ跳ね上げる。

強烈な圧迫感。ほとんど身動きなど取れない中、コンピュータを起動しHMDを下ろす。

目の前に文字が浮かぶ。


   Type 15 A.M.L.V

   Armored Multi Leg Vehicle

   Mitsubishi Heavy Indastlies,Ltd_


機体の製造メーカーの名前がHMDに浮かぶ。


   T.I.N.M.A.Ns


   Tactical

   Information

   Network

   Module and

   Advanced pseudo

   Nervous system  OS

   System ...set up_


   AMLV-ReCs

   AMLV-Regiment Command Control system

   ...Online_

   TOSHIBA CORPORATION_


OSはティンマン、つまりはブリキ男になぞらえている。

戦術情報ネットワークモジュールと先進疑似神経用OS。C4I世代のシステムであることがよくわかる。

すぐに機体の状態を示す図が現れる。

甲高いマイクロガスタービンの唸り。本来はこれを燃料電池化するつもりだったという。

『蓄電池。状態、空』

「状態、空確認」

警告にも似た中空の電池のアイコンが点滅している。

『全アクチュエータ、テンションなし』

「テンションなし確認」

アクチュエータである人工筋肉は通電がないからかしなやかで緩まったゴム紐のようになっているはずだ。

『機体駆動系、入力、ガスタービン』

「入力、ガスタービン確認」

右手のコントロールスティックのアナログパッドで入力の項目を引き出すとガスタービンにしてパッドを押し込む。

『火器管制、状態、安全』

「安全確認」

アイコンが安全を示す「マルに斜め線」になっている。

『アクティブセンサ類、赤外線、ミリ波、超音波』

「アクティブセンサ類、01、02、03番確認」

左手でコントロールレバーの十字キーを押して一つ一つ確認する。

『パッシブセンサ類、光学、赤外線、ミリ波、音波』

「パッシブセンサ類、11、12、13、14番確認」

『通信、チャンネル、21から28まで』

「チャンネル、21から28まで。確認」

ここまでは左手だけで操作できる。

『戦術データリンク、モードD2に切り替え』

「モードD2確認」

コンソールのデータリンクのダイアル操作が終わると少し気が楽になった。

『装備懸架』

号令で機体の右腕になにかが取り付けられる。

「装備懸架。25ミリ機関砲、連装7.62ミリ機関銃。保持器よし。接続よし」

『25ミリ機関砲、連装7.62ミリ機関銃。装備懸架確認』

エリコン25ミリが懸架されていることが表示されている。

「懸架確認よし」

『これより立ち上げる。関節固定解除』

「関節固定解除。確認」

トグルスイッチで関節の固定を解除する。

『ジャッキ上げ』

無線から聞こえる号令とともに唸り始めたモーター音とともに徐々に体が浮かんでいく。

吊られて手足も伸びてゆく。関節の状況を示すセンサがフットペダルの位置を変えていく。

『ジャッキ上げ完了。アクチュエータ、テンション、直立』

「アクチュエータ、テンション、直立、確認」

コンソールのトグルスイッチを操作してアクチュエータにテンションを与える。

ミチミチッと締め上げるような音がそこかしこから聞こえてくる。

『オートバランサ動作』

再度ボタンを操作する。

「動作確認。重心位置適正」

オートバランサが重心を捉えるとアイコンが大丈夫だと言ってくる。

『支持腕、解放』

少しだけ落ちた感覚がした次の瞬間に地面に接してしっかり立っているかのような感覚になる。

それもそのはず。フットペダルの感覚共有システムが働いているのだ。

機体が地に足を付けていれば、ちゃんと足に重みがかかる。単純化されているにしても、これは搭乗者にとっては嬉しい機能だった。

「接地確認。脚部重量センサ適正。ダメコン異常なし」

再度ボタンを押しダメージコントロールを呼び出す。

アイコンはオールグリーン。

『腕部駆動、モード1確認』

「モード1、確認」

コントロールスティックから手を離しセレクターレバーを握ってモードを切り替える。

『腕部アクチュエータ確認』

号令でコントロールスティックを引き、右、左と倒す。

「腕部基礎動作確認。異常なし」

コントロールスティックを基の位置に戻すと次に来るのはもっとも重要なものだ。

『脚部駆動、モード1を確認』

「モード1、確認」

左手のコントロールレバーでモードを切り替える。

『火器管制センサ類再度確認』

「再度確認。異常なし」

頭部のセンサを一つずつ切り替え適正かどうかを確認する。

『火器管制、安全から発砲へ。徹甲弾を選択』

「安全から発砲へ了解」

右手操作レバーのパッド左のセレクタースイッチを操作し火器選択、1番スロットに切り替える。

『全機、状況開始』

「状況開始了解」

一歩踏み出す。機体は前進する。

HMDに映る景色は高さ5メートル程度。市街地での運用も前提としている以上、5.5メートルの電線の高さを超えてはいけない。

『目標、12時の方向。距離1300。静止状態』

目標は、目の前。射程圏内。

コントロールレバーを操作する。アナログパッドで照準対象を選択。コントロールスティックを倒すと照準点が一致しブザーが鳴る。

『撃て!』

トリガーを引く。

『撃ち方やめ!』

布製の的は穴だらけになった。

『目標、11時の方向。距離1900。静止状態』

左側。しかも距離が離れすぎている。

乗り心地はいいとは言えない。だが、伸縮する脚のおかげで多くの人が想像するよりかは快適で、一般的な舗装された平地における直線歩行であれば上下動はかなり少なく、酔うことは少ない。これが戦闘になると、かなり振り回される。

「転進。距離1000で発砲する。」

フットペダルで走り始める。

距離が詰まっていく。

同時に照準目標を設定する。

『目標との距離1500』

画面上にも距離が浮かんでいる。

照準を合わせ、照準モードを現在のセミオートからフルオートに切り替える。

『目標との距離1000。撃て!』

フットペダルを止めると急制動がかかる。シートベルトが体を押さえつける。

機体が止まると機関砲が連射される。

『撃ち方やめ!』

号令でトリガーから指を離す。

『状況終了。地点Dに移動後降機せよ』

「了解」

無線に答えると、再度歩みを進めた。

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