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精霊と彼女  作者: 白夜
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第二話


精霊の祝福に満ちたこの地において、ルシェーラは異端となっていた。

子供にもできる、ささやかな火を灯すことさえ出来ないのだ。

もちろん風をおこすことも出来ない。

井戸から水をくみ上げることにも、大地を耕すのにも人より何倍も労力を使うことになる。

誰にでも与えられる加護を、彼女だけが失っていた。

彼を、ルシェーラを愛してくれた精霊を失ってしまったから。


彼に出会ったのは二年前。

一緒に過ごしたのは、たった一年だけ。

その一年で一生分以上の幸せを得てしまった。

病んだとき、癒えることの病だと告げられても。それでもルシェーラは幸せだった。




柔らかな木漏れ日の下、金色の青年が立っていた。

派手な人。それがルシェーラの第一印象だった。

金色の髪がとても長くて、綺麗だったので。高く売れそうだな、とも思っていた。

観察していることに気付いたのか、笑った青年の笑顔を見て関わってはいけないと悟る。

なぜかは分らない。けれどとても性格が悪そうだと思ったのだ。

その予感はある意味はずれていたが、ある意味では大正解だった。

「うわ、可愛い。お嬢さん、おにーさんと結婚しない?」

……聞かなかったことにしよう。

一瞬でそう決めた。

この庭にいるのだから、孤児院への来客かもしれないとか。身なりが良いから支援者なのかもしれないとか。

考えなければいけないこともあったけれど、身の安全が一番。

十歳は離れていそうなのに、冗談とはいえいきなり言う言葉としては最悪だ。

怪しい趣味がある人間に目をつけられたらろくなことにならない。

特に、それが貴族などであるなら。

これまでの経験を生かして瞬時に判断すると、側の友人にすべてを託すことにして背を向ける。

収穫した野菜をブリュッセ婦人に届けなければ。

夕ご飯の材料だ。食事が遅くなったら食べ盛りの身には結構辛い。

てくてくてくっと普段の2割り増しで歩く。

走らないのは野菜が重いせいだった。

……ルシェーラはこの頃から体格には絶望的に恵まれていなかった。

いっぱい食べて大きくなってやるっ。

現実逃避気味に決意を固めているといきなり手の中から野菜が消えた。

「……あれ?」

落としたはずはない。目の前にも後ろにも、人はいない。

なのになぜ野菜が消えるのだろう?

あまりに意外な事態に逃げていたことも忘れてきょろきょろと周囲を探す。

前と上下左右。いや、上にはないと思うけど。

「逃げなくても良いんじゃない?」

………なんか聞こえる。聞きたくないけど。無駄に美声なのもむかつく。

さっきの青年が奪ったのか? でも後ろに人はいないはず……そう思いつつ振り返る。

思った通り手の届く範囲に人はいない。

青年は、先ほどと同じように庭の木下に立っていた。

手には野菜を抱えて。







しばらくは無駄に明るいです。

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