第十七話
町の広場でさらし者になる趣味はなかったので森の中まで移動し、レオンと向き合う。
彼は力一杯視線を逸らしているが、それが逆に怪しいのは自覚してないのだろうか。
姿はどう見てもジークではない。闇色の髪と双眸。ジークは金色だった。
顔立ちも、背の高さも違う。違うが……。
さっきの台詞や行動はどう考えてもジークだった。
でもそれでも同じ存在だとは思えない。
さすがに外見だけ違うくらいならすぐに気付いたはずだし。
違うのに、さきほどだけあまりに似ていた。
「もしかして、兄弟とかですか?」
精霊にも兄弟なんて存在するのだろうか。でも兄弟なら友人などとは言わずそう名乗ればいいだけか。
そもそも兄弟でも瞬間的にあれほど似てると怖いか。でも似てる存在というとそれくらいしか思いつかなかった。
「違う。……俺がジークだとは思わないのか?」
「さすがに違うことくらいは解ります。そんなことも解らない程度の感情なら、さっさと忘れて別の人を見つけます」
間髪入れずに言い返す。さすがに別人だといういうことすら解らないと思われるのは嫌だ。
思いっきり睨んでみたが効果は微妙っぽい。
下から睨んでも子供に威嚇されてる程度にしか思いませんよね。
宙に浮いてでも上から睨むべきでした。
威圧には失敗したが、それでも渋々話してくれたところによると。
以前、レオンはジークの記憶が再生されるかは解らないといっていたが。
それもそのはず、ジークの記憶の一部はレオンが持っているという。
ジークが最期に伝言を託したときに巻き込まれたのかも知れないし、偶然か事故なのかも不明だ。
あるいはジーク自身が私を見つけやすいようにある程度の目印として記憶を託した可能性もあるという。
さらに別の可能性もあるらしいが。
とりあえず、その記憶に引きずられての行動だったらしい。
……そうなるとジークの記憶に人格を侵食されているような気がする。
内心びくびくしてると、私の頭を軽く撫でて笑ってくれた。
「ちょっと混乱しただけだ、自分を見失ったりはしない」
その仕草も笑い方もレオンらしいもので、ジークの面影はなかったので多分安心してもいいのだろう。
落ち着いたところで、別の町へ向かって移動を開始する。
森を通ることになったのでさっきの反省を生かして琥珀をいくつか貰っていくことにする。
石ではないけど、そこはこだわるところじゃないだろうし。
貰った琥珀があまりに綺麗だったのでひとつは手元に残すことにした。
人の手に渡って加工されてしまうより、このままの方が絶対に素敵だと思ったから。
そのうち、森に返そうと思う。
そうやって森を往復したりしているうちにやっと思い出した。
永久脱毛の方、ごめんなさい。
’永久’の解除忘れてました。
今更ですが、解くべきでしょうね。急いで行ってきます。
短い…。