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精霊と彼女  作者: 白夜
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第十三話



夢はいつも優しい。

それは逃避なのかもしれないけれど。

過去を思い返すように繰り返しなぞる夢は同時に。

覚醒時にいつまでも癒えない傷を抉る。

二度と醒めないと思っていた眠りから醒めたあのときと同じように。

独り目覚めるのに慣れるのはいつのことだろう。

小さな部屋いっぱいに満ちる、明るい光に落ち込みながら、それでも着替えて食事にする。



ルシェーラは食事にはほとんど関心がない。甘いものや果実は好きだが、そんなものが今の生活で手に入るはずもない。

朝食はわずかな野菜が入った薄い塩味のスープに日持ちするよう硬く焼いたパンが少し。それだけだ。

ささやかなものだが、食べられるだけ感謝しなければならない。

このときばかりは食が細い……いや、素晴らしく燃費のいい身体に感謝する。

誰かさんは小鳥とでも張り合いたいのか、とかいいつつ呆れていたような気がするが、実際便利だし。

猫舌なので、暖める為の火も少しでいいのがいい。さすがに夏は痛ませないためにしっかり火を入れる必要があるが、今の時期なら大丈夫だ。

今日は暖かいが、この時期は鍋の中のものでさえ時々氷がはる。ルシェーラは自分が凍死してないことの方が不思議になりつつある。

「………あれ?」

独り言が漏れる。

今日は、暖かい。だが、日差しが入って部屋の中が明るいくらいだ。つまり、快晴。

普通、晴れた日の朝は寒い。今日のような天気なら、床に霜が降りてても驚かない。

もちろん昼近くなれば暖かくなるのは普通だが、寝坊もしていないことだし。

気付は今日はすきま風も感じない。

ゆっくり部屋を見回す。昨日と何一つ、変わらない部屋。

おかしなところはない。

だからこそ、この室温はあり得ない。


「……ジーク」

彼が、いたなら。

精霊である彼なら空気を暖めることも風を入れないようにすることも出来るだろう。

けれど、彼は失われて。

もし、いるのなら姿を現さないはずがないのに。

それでもわずかな希望を込めて名を呼ぶ。

返る答えは、ない。



食事を中断し、扉を開く。

異常気象で外が暖かいという可能性の確認のためだ。

普通に寒かったので慌てて閉める。

そして部屋の中は流れ込んだであろう外気に変化することなく暖かいままだ。

不思議な事態に混乱する。

自分の感覚がおかしくなったということはないだろう。外は寒いし。

部屋が急に保温性抜群になったはずもない。隙間から漏れる光はかわってないのだから。

自分でも部屋でもないとすれば、それ以外の存在……精霊を考えるが、ジークはいない。

彼以外に存在する精霊はルシェーラに力を貸さないし、ここまでのことを成す力はないだろう。

彼と同じくらい力のある精霊でもない限り。

「……誰か、いますか」

一応念のために問いかける。

傍から見ると独り言だ。おかしくなったのかと思われそうだ。そんなことを考えるが。

目の前に人影が現れたのをみて。

そして、その姿が黒髪。……黒い瞳を持っているのまで確認してパニックを起こしそうになる。


滅多にいないはずの実体を持てるほどの精霊。

それが目の前にいるというありえなさ。

それを目にするのが二人目というのはどれだけの確率なのか。


思わず遠い目をしそうになるが、現れた青年の意図を考え悩む。

一番あり得そうなのはジークが消えてしまったことへの恨み言や復讐だろうか。

似た年頃に見えるし、友人だったとしたら消える原因になった人間に恨み言の一つでもいいたくなるだろう。

それにしては一年以上経過しているのが不思議だが、精霊の時間感覚ならたいした時間でないのかもしれないし。

復讐なら復讐で、ルシェーラには歓迎するべき事態かもしれない。

そう考えて落ち着くべく深呼吸を繰りかえす。


椅子を勧めようにも家具のほとんどない部屋の中。

立たせたまま話をするのも申し訳ないが、こちらが食事中というのもどうだろう。

まさか本当にいるとは思わなかったというのが本音だが、自分で問いかけておいて返事があったからといって非難することも出来ない。

行儀の悪さは置いておいて、このまま話を聞かせて貰うことにする。

「あの、どちら様でしょう………」


いろいろと、間違った質問のような気もする疑問が多すぎてどうしていいか解らなかったので、一番基本的なことからはじめてみた。




進まなくて悩んでたら寝てしまいました。

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