女の子の全裸の代償は高い!!
龍牙魔術学園、女子寮。一年程前まで何処にでもある普通の女子寮。
そこでは女の子だけが住み、寮母の指示に従い料理を作り、毎朝そこから学園へ向うというありふれた女子寮である。基本的にはそれは変わってない、ただそこに住んでいる女子が問題である。
人間百人いれば性格も百等にあるという事は当たり前。それは何に置いても同じである。
問題は全国で、しかも田舎で時間を大半修行に費やしていた炎魔でさえ龍牙魔術学園の女子は恐ろしいと言う噂を聞いたことがあるほど、とんでもない女子が数人いる。
それはまだ男女差別が根強く残っているせいで、女らしくない行動をするとマスコミで取り上げられる。炎魔も当初、マスコミがささやかな事を自分達的に解釈し、そしてその話に尾ひれが付いて炎魔の耳に届いたものだと思っていた。
だが龍牙魔術学園に転入の手続きの際、役所の人が炎魔の手を握り締め、涙目で考え直すように言ってきた。例えマスコミでもここまで情報操作は出来まい。
炎魔は師匠の薦めた学校に疑問を感じ、役所で断った際、お守りをくれたので一層不安なってしまった。
それで今はその恐ろしい噂の出現源である女子寮で寝る事が決まってしまった。
・・・・・・決まってしまった。
「マジっすか?」炎魔はもう魂が口元から出かかっている程、落ち込んだ状態で改めて聞いた、学園長の冗談だと強く念じながら。
「残念ながら本当じゃ、」松平は悲しそうな表情で言った。「短い付き合いじゃったのう。」
「いや、俺まだ死んでねーし。」炎魔は突っ込む。
「というわけで君は女子寮で住んでもらう事にした。」松平は前のやり取りが無かったかのように話を改めた。
「もちろんこれも鷲の一存で例外扱い、じゃが君の行動は寮内ではかなり制限させてもらう。」
まあ、当たり前だろうな。っていうかよく学園長の一存で決まったな、と炎魔は思った。
「まあ、簡単に纏めれば覗くな、触るな、虐めるな、責めるな、戦うなの五つじゃ。」松平は指を立てながら数え上げた。
「結構常識的ですね。」炎魔は感想を述べる。
「そうじゃ、」松平は同意する。「君が生き残りたければこの五つのルールを守れ。」
「あれ?俺の心配?俺がケダモノと化する心配はないんすか?」炎魔は突っ込む。
「無論、無い。」学園長は胸を張って自信たっぷりに言い放った。
というわけで鬼崎炎魔、16歳。龍牙魔術学園女子寮に住むことなった。
松平学園長との話を終えたあと、寮母の林 花子に迎えられ、女子寮へと案内された。寮母の林さんは何処にでもいるような胸ペッタンコのおばさんだ。眼鏡と後ろで団子に結びあげた茶髪で厳しい表情をした女性だった。女子寮は学園から徒歩十五分といった距離で住宅街を通りぬければ殆んどすぐだった。
女子寮は住宅街の家々を越えた四角マンションで別に変わってはいなかった。
「ここが龍牙学園、女子寮、通称‘龍女‘(りゅうじょう)です。」林さんは敬語なのに合わないローテンションな声で紹介した。
「意外と地味ですね。」炎魔は言う。
「松平学園長は派手なものがお嫌いなので。鬼崎さんの部屋はこちらになります。」
炎魔は林さんに案内され、最上階である十階へと階段を上り、‘113、鬼崎炎魔‘とプレートが垂れ下がっているドアにたどり着いた。
「そういえば女子寮の割りには女の子がいなくありません?」炎魔は尋ねた。
実際、会った女の子は入り口で二人ぐらいに会った程度だ、女子寮にしては女の子の遭遇頻度が低かった。
「それは今、夕食の準備をしている為と部活を終えてシャワーを浴びているのが多いからです。」寮母は答え、エプロンのポケットから一枚の青いプラスティックカードを取り出した。
「これがあなたの部屋のカードキーです。取っ手の右にある縦の隙間に通すことでロックが解除され、入ることが出来ます。やってみて下さい」林さんは説明し、促した。
炎魔は言われるとおりにカードをスライドさせた。するとドアがガチャリと開いた。
部屋からラベンダーのいい香りが湯気と共にどっと漂い、神秘的な感覚が炎魔を襲った。
そして一人の女の子の全裸が炎魔の視覚を襲った。腰まで伸びた黒くしなやかな髪を頭の上にで纏め、タオルで拭いている。そのため、突然入ってきた炎魔には生霊や悪霊が即刻、成仏出来るナイスバディーが丸見えだった。そして凛々しい顔は今は驚愕で揺れていたがその眼は強い意志で溢れていた。
しばしの間、二人はそのまま固まっていた。
「ナイスバディー!」炎魔は鼻血を垂らしながら親指をグッと立てた。本当はそんなこと言うつもりではなかったがあまりにも唐突な状況でどう反応すればいいかわからなく、男の本能に従ってしまった。
「このド変態がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ぎゃあああああああああ!!!!」
少女の手にバズーカ砲が現れ、炎魔は砲弾の業炎の餌食となった。