地獄と天国は紙一重
「さて、話に戻ろう。」松平は咳払いした。「闇の力とは何かね?」
「すいません、それは俺も良くわかんないんす」炎魔は先ほどの大技で完全にボロボロになり、誤った。
「わからん?」松平はまた立つ。
「マジですから、ただ暗闇関係の魔法としかぐらいわからないんす。」鬼崎は涙目で必死に弁解する。「たとえば自分の影の中に隠れるとか、夜の暗闇の中で身体能力がアップするとかそういうのです~。」
「ふむ、」松平は考え込みながらソファーに腰掛ける。「たしかに我々魔術師が使う魔術とは違うようだな。しかし、体内のマナを操り、駆使しているのだろう?」
「はい、そうです。基本は同じです。」
「なるほど、ではちゃんと授業を受けることはできるな。もし、違っていたらこちら側も困り果てた所だ。」
炎魔その言葉にホッとした。実は闇の力のせいで転入を拒否される不安がいっぱいでたまらなかった。
「さて、問題は片付いた所で少し君に話しがある。」松平は語る。「この古くからある龍牙魔術学園は名前のとおり、若い魔術師のための学校である。魔術が使えない凡人は公務員の爺さんぐらいじゃ。50年前の社会革命の前は貴族だけの学校じゃったが、それ以来は一般の人も入れるようになっておる。じゃがこの時勢にも元貴族出身のもの多数おるため、学内では元貴族と一般人の小競り合いが耐えん。そのため、喧嘩はこの学園の名物と言っても過言ではないだろう。じゃが、魔術師がぶつかり合えば魔術で怪我人が出る、じゃから校内では魔術の私用は禁止されておる。唯一、壁魔法と治癒魔法は例外にされておる。とは言っても時代遅れにも肉弾戦はあるから気をつけてもらおう。」
「喧嘩には多少つよいんでで心配せんで下さい。」炎魔は自身たっぷりに言う。さすがに山篭りをしていただけはある為、身体能力はそこらに人には負けなかった。
「うむ、まあ君なら大丈夫じゃろう。では、」松平学園長はソファーの後ろに置いてあったトランクを取り、テーブルの上に置いた。
「このトランクの中には制服や、教科書、学校で必要な物が入っておる。普通なら新しいのを買ってもらうが君の場合は元生徒が寄付した、いわばお古を使ってもらう。」松平は説明した。
そしてトランクを開け、中に入っているものを次々に出し、並べ始めた。制服はグレーの気品がある学生服とズボンをそれぞれ三着ずつあった、制服は少々軍人くさいと炎魔は思ったが別に気にはしなかった。その隣に教科書が一覧、少々ボロボロで表紙には落書きで満喫だった。
そして最後に液晶プレートが差し出された。
「何ですかい、こりゃ?」炎魔はプレートを持ち、不思議そうに眺めながら学園長に尋ねた。
「これはのう、生徒手帳じゃ。」松平は誇らしげに言った。「それ一つで身分証明書になり、電話にもなり、他にも色々出来る大した生徒手帳じゃ。しかもそれは機械技術と魔術を融合させた魔機械で立体映像も映し出せるし、魔術師自身のマナでしか作動しない優れものじゃ。」
「ほう、それはまたまた見事なモンで・・・・」
「うむ、ちゃんと全部入っておるな。」
確かめたかっただけですかい、と炎魔は内心、突っ込んだ。
「さて・・・・」ここで威厳であふれていた学園長が少し歯がゆい、険しい顔をした。「実は君に話し辛い問題が発生した。
「聞きたくありませんがどうぞ。」
「実は、男子寮が満タンで君のために一部屋も空いていないのじゃ。」と歯切れ悪そうに松平は言った。
「マジですか?」炎魔は寮生活の楽しみが粉砕してしまい、がっかりした声で言う。「じゃ何処で寝ろっつーんですかい、店長?」
「鷲は学園長じゃ。まあ、でもその代わりに他の寮で良ければその寮の一部屋で過ごしてもらうことが出来る。」
他の寮?たしか男子寮は満タンで一部屋も空いていないと学園長が言っていたにも関わらず‘他の寮‘?問題解決では・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
「まさか・・・・・・・」炎魔の思考は一つの答えを出してしまい驚愕していた。
「そのまさかじゃ。」松平は申し訳なさそうな顔で誤った。
「あの男が入ったら生きては出られないと噂される恐ろしい女子寮で寝ろと・・・・・」と炎魔。
「そうじゃ。」と松平は重々しく息を吐いた。
しばしの間沈黙がその部屋を支配した。