男は女の子のためならがんばれる!!
地震で被害に会った皆さん、俺には出来ることは全くありませんがこの物語を読んでくださってる皆さんを元気付けることが出来れば本望です。
どうかがんばってください!!!!
アテネは深く息を吸い込み、心の中で状況のおさらいをした。
決闘中に何故か飛竜が乱入、そしてコロシアムの自動緊急装置がシールドをMAXに強化し、優チャンは精神的にノックアウトされ、そしてエルはコロシアム戦場を優と出て封鎖した。
そして私は今は飛竜と一つの空間にいる・・・・その飛竜は今鬼崎クンを振りほどこうと必死に振り回してるけど何で取れないのかしら?まあ、少なくとも鬼崎クンが振り下ろされても役には立たないでしょうね。一緒にやっちゃってもいいかな?
そこまで考えた(一秒で)アテネは手刀で飛竜に向って風による斬撃を放った。
風は彼女と飛竜の距離を軽々と縮め、暴れている爬虫類の顔に当たった。
血飛沫が飛び散り,飛竜は血が凍るような絶叫を上げた。
そして服が破れる音と共に炎魔はやっと飛竜から離れることが出来た。
彼は顔面から地面に落ち、余った勢いで砂だらけの地面を滑り、アテネの隣でようやく停止した。
飛竜は右目を風に斬られ、痛さのあまりにあちこちに火を噴き、暴れている。
そしてまだ見える左目でアテネを睨みつけた。飛竜は人間ほどの知能を持ってはいないが金髪の少女がその右目を潰した張本人であることを悟ることは難しいことではない。事実、飛竜は種類によって差はあるが動物の中でも上位を争うほど賢い。
オレンジ色の光が飛竜の口から漏れ、そして次の瞬間、大の大人の大きさの火の玉が発射された。
右目を失ったせいか、アテネへと向けた火の玉は彼女の2メートル前で地面に当たり、爆発した。
爆風でアテネのスカートがめくれるかと思いきや、ギリギリの所で留まり、パンツは見えずじまいだった。生徒会長のスカートはどんな風でもめくれないとは学園の七不思議に仲間入りしたのもつい最近。
爆風で目にゴミが入らぬよう、アテネは腕で目を塞いだ。
だがそれは大きな過ちだった。
飛竜はすでに外れると知っていたのか、火の玉を発射直後にアテネとまだ地面に落ちている炎魔へ突進した。
アテネが腕を下ろした時にはもう後五メートル近くまで接近していた。それに驚いてしまい、‘風の防御壁‘を築くための時間を失ってしまった。悲鳴や逃げることも出来ず、生徒会長は目を瞑ることしか出来なかった。
そして7トンもある巨体が直撃し、飛竜の頭は壁に激突した。
アテネはフワっと浮遊感を感じた。
「えっ?」と戸惑い、目を開けた。その蒼色と緑色の眼に映った蒼白な炎魔の顔に胸が少し高鳴ってしまった。どうやら炎魔はアテネを危機一髪、お嬢様抱っこして飛竜の突進から救ったらしい。
「あ~、危なかった。危うく死ぬところだったぜ。」と炎魔はコメントし、アテネをおろした。
「まさかあいつがあんなずる賢いとは思わなかったぜ。本来なら飛びながら狩る生き物だから地上では雑魚かと思ったら大間違いだったな。あ、でも突進でぶつけたせいで今目眩してる。」
「どうして?」とアテネは訪ねる。
「そりゃあんな勢いをつけて壁に衝突すりゃ目眩ぐらいするだろ。」
「じゃなくてなんで私を助けてくれたのかを聞いてるの。確かに私も一応ピンチだったから一応助かったかもしれないけど鬼崎クンは地面に寝転がっていて一人で逃げればよかったんじゃないの?」
炎魔はガシガシと頭をかく。
「ど、どうでもいいじゃねえか。」照れた風にそっぽ向く。
「あら、お・し・え・な・さ・い♡」
アテネは後ろから炎魔に飛びつき、抱きしめる。
「ぬお!何してんだオメー!?」炎魔は驚き、顔が次第に赤くなっていく。
「ビハインド・ハグよ、早く教えてくれないとコアラのように鬼崎クンにしがみつくわよ。」とアテネはウキウキしながら言う。
「だー、お、お前が死ぬのが嫌だっただけだ!これでいいだろ、頼むから降りてくれ!!」
「あ、赤くなって照れてる照れてる~、もー、可愛いわね♡。」そこでアテネはにこやかな笑顔でようやく降りた。
「飛竜があともう少しで目眩から復活する、何かあいつを倒す強力魔術使えない?」顔が未だに真っ赤な炎魔は尋ねる。
「使えないことはないんだけどチャージするのに二分はかかっちゃうの。」アテネは前髪をいじりながらため息をつく。「私もまだまだ未熟者ね~。」
「全く使えない俺は何なんだ?カスか?」炎魔は頬を引きつらせる。
強力魔術は高校三年になってようやく習うもので一年が出来るはずがない。
それどころか強力魔術は大方、法律で禁じられているため、教えない学校すらあるほどだ。
「鬼崎クンはゴキブリよ。ま、強力魔術は生徒会長のたしなみよ♡」
「カス以上、犬以下、ゴキブリと同等か、なんか俺の中の何か大切なものが壊れそうだ・・・・つーか生徒会長どうやってなったんだ?たしか生徒会長選挙は生徒手帳によると、十月の初めにやるもんじゃなかったのか?」
「蹴落としたわ。」アテネは胸を張り、いばるように言った。「なんか‘いちゃいちゃハーレム計画‘を立てていたからそれを生徒会副会長だった私が暴露して退学にしてやったわ。」
「おっそろしい事すんなお前!!しかもどっちが悪役だかわかんねー!ってか‘いちゃいちゃハーレム計画‘ってなんだ?!」炎魔は異性の恐ろしさを感じてしまった。そして生徒会でこの金髪ポニーテールクールビューティーの下で働かなければいけないと思うと先が思いやられた。
「なんか制服をミニスカに変えるとか、男の子一人に女の子二人は付き添わないといけないとかそんな下衆が考えるような計画だったわ。学園長の頭の固さおかげで殆んどの案は通らなかったけどね。唯一成功したのはスクール水着をあのオタクが‘萌え!‘っていうようなあの古臭いやつになっちゃったわね。」
「結局それだけ変えて退学になったのか、少し不憫だな。ま、俺はミニスカ嫌いだから別にいいけど。」
「そうね~、ミニスカだと女の子のスカートがめくれなくなるから困るのよね。」
「お前がめくってんじゃねー!!」炎魔は突っ込む。何故、女の子であるアテネが他の女の子のスカートをめくりたいのかが理解できなかった、というか理解したくなかった。
「お姫様のたしなみよ♡。さて、おしゃべりはここまでね。」
二人は飛竜のほうへ目を向けた。
まだ生きている左目でこちらを睨み、足に生えてる三本の巨大な爪で地面を引っかき、炎魔かアテネ、どちらを先に仕留めるかを見定めている。
「じゃ、鬼崎クンは二分時間稼いでね。その間、私が強力魔術をチャージしているから後はよろしく☆」
「えっ?!ちょいまっ・・・」
アテネは勝手にそう言い、炎魔を無視して目を瞑り、チャージし始めた。竜巻が彼女の周りに数々と現れ、体中に電気が走り、まるで暴走した電気柱みたいになっていた。
炎魔は舌打ちすると右手に黒いいかずちが走り、土方先生の渾身作を破壊した禍々しい黒い大剣を召喚した。
そして、又しても黒い霧のようなオーラに包まれた。
飛竜は目眩から完全回復し、二人組みに向かって怒りに満ちた咆哮を放った。
炎魔はすうっと息を吸い込むと飛竜に向かって走り出し、一気に距離を詰めた。
飛竜は近づいてくる炎魔を標的に決め、その巨大な口を開けながら突進した。
もうほとんど触れ合えるくらいの距離で飛竜は炎魔を食おうと、首を伸ばした。
炎魔は降りくる無数の牙をスライディングでかわし、飛竜の真下に滑り、大検で無防備の飛竜の腹を斬った。
が、飛竜の硬い鱗に白い線の傷が出来ただけで致命傷どころかダメージすら与えられなかった。
そのかわり、それは吹っ飛ばされ、天井に勢い良く張り付いてしまった。飛竜は反射的に翼を広げ、翼膜で飛ばされる勢いを和らげようとしたが切り取られていたため、無駄に終わってしまった。それどころかその切り口が開いてしまい、血がにじみ出て真下にポタポタと落ちた。
数秒後、飛竜も大きな音を立てて落ちてきた。
炎魔は心の中でガッツポーズをした。先ほどのやり取りでもう三十秒が経過していた。このまま攻め込めば行ける!
彼は又しても飛竜に向かって走り出した。
そして起き上がろうとしている飛竜に大検で頭に渾身の一撃食らわせた。鱗が硬すぎて斬れないが相当重そうな大検で叩けば飛竜と言えども一瞬怯む。その隙を使い、炎魔は飛竜の脚のかぎ爪と肉を繋ぐ部分を大検で突いた。生物どれも動かす部分は他のところより柔らかいものだ、でなきゃ俊敏な動きは不可能だ。とくに爪と指の間、もしくはそれに似た部分は全員敏感なのだ。爪と指の間に釘を打つという拷問はそれを利用している、っていうかその上に蝋まで垂らすのだから恐ろしい。
鼓膜が破れそうな悲鳴がコロシアムを包み込んだ。シールドのおかげで消音効果があるとは言え、さすがにこの悲鳴は通り、何人かは耳を塞いだ。
苦しそうにもがきながらも、飛竜は立ち上がった。
そして炎魔を完全に敵と認識し、電気柱みたいになってるアテネをもう目に入れていない。
はっきり言えばそれに気を取られていたため、炎魔はその隙を付き続けることが出来た。
だが今はもう彼しか見ていなかった。
憎悪篭もった咆哮がコロシアム戦場を包み込んでいるシールドを振動している。
怒りの矛先を向けられ、羽織が靡いた。それを物ともせず、炎魔は大検を構えた。内心、冷や汗でだらだらだったが。
大きく息を吸い込み、飛竜は火の玉を三発連続で炎魔に向けて吐いた。
炎魔は大検を振るい、その三発をさばいた。
火の玉をさばく度に爆炎に襲われたが炎魔は火傷の一つもしなかった。
実は着ている古臭い羽織は見せ付けるためにあるのではない。この羽織は昔の消防員の制服でそれに故、防火効果が付いているのだ。
だから炎魔にはある程度までの炎耐性があり、優をかばった(?)時に火の玉を当てられても少し焦げた程度で済んだのだ。
この決闘で優と戦う時にまたバズーカを使われるのではないのかと思った炎魔だったが、結局違う所で役立ってしまった。
最後の一発をさばいたと思ったら、飛竜は先ほどアテネを攻撃したときのように火の玉を囮に猛然と突進してきた。
が炎魔もそれを予知して体制を低くして飛竜の下を抜け潜り、後ろを取った。と思われた尻尾が白髪少年を襲い、尾の先っぽの横に生えている六本の大きな棘が彼の体に食い込んだ。
尻尾に叩きつけられた勢いで壁に激突し、息が詰まった。
尻餅ついた炎魔だったが、なにもなかったようにすぐに立ち上がり、その場で三メートルぐらいハイジャンプした。
次の瞬間、炎魔がいた場所には飛竜の突進が炸裂し、シールドを振動させた。
そして炎魔は飛竜の突進で広げられた右の翼に向かって壁を蹴り、雄叫びと共に大検を振り上げ、飛竜の翼を切断した!!
又しても飛竜は絶叫した。前とは比べ物にならないほどにうるさく、痛み籠った咆哮だ。しかもそれに加えておびただしい量の血が斬り口から流れ、そして仰け反るたびに飛び散り、地面を赤く染めていった。
観客の方からうおおおおぉぉぉぉと感興が上がった。が中には同情の表情を見せるものや顔色を悪くするものもいれば大量の血を見て悶絶するものも多少いた。
飛竜の鱗はたしかに硬いが空を自由に飛ぶために翼を覆う鱗は柔軟であり、唯一斬れる弱点でもある。
炎魔は血の雨を浴びながら大検の炎の形している鞘を肩に置き、ガッツポーズをした。あと40秒耐えればこいつを倒せる!!
そして余裕顔で飛竜の方へ向くと大きな影が炎魔の視界を覆った。
次の瞬間、重いナニカが炎魔の胸に直撃し、地面に叩き付けた。その際に大検は吹っ飛び、コロシアムの床を虚しく滑り、黒い煙となって消えた。
飛竜は今度は炎魔の隙を付き、飛びつき、鍵爪で彼を捕らえ、地面に押さえつけた、そして押さえつけている脚に体重を上乗せする。
どんな人間でもこんなことをされてしまえばただではすまない、あばら骨が次々に折られ、そしてそれにやってくる激痛の度に炎魔は悲鳴を上げる。踏み潰されまいと日の下で必死に飛竜の脚を殴るが、ビクともしない。
さらに最後の留めと言わんばかりに飛竜は火の玉を打つべく、開けた口に炎が溜まりはじめた。
やば、もう・・・しぬ。
炎魔は観念して目を瞑り、胸が破れるような恐怖を味わいながら来る死を覚悟した。
爆発音のような派手な音がコロシアムをつつんだ。
静寂が訪れ、炎魔は目を開いた。
目の前には飛竜はまだいた、赤かった鱗が黒く染まり、所々黒い煙が上がっている。
そして炎魔は胸を踏みつけている脚をどかすと飛竜は炭木が折れるような音と供に土ホコリを立てながらドウッと倒れた。
赤かったシールドは‘飛竜生命探知不能、通常シールドに変換。‘とアナウンスしてもとの薄い水色でシールドに戻り、観客は全員立ち上がり、歓声と拍手がコロシアムに響いた。
その拍手と歓声を受けて雷神アテネは観客に手を振ったり、投げキッスを飛ばした。
それに対して我らが主人公は見てさえもらえないという扱いを受け、こめかみに青筋を立てながら立ち上がろうとした。
が激痛が走り、さらに血をゴフッと吐き、またその場に倒れこんでしまった。
己の無力と飛竜がちょうど炎魔が見えないようにポジションに歯軋りしていると「ご苦労様、鬼崎クン。」と声が頭上からかかった。
顔を上げるとアテネの逆向きの顔が視界に入った。
「飛竜の相手を一分四十二秒もできるなんて・・軍隊での対大型飛竜部隊ですら二分が限界なのよ。」
「そいつはどうも。」炎魔は不貞腐れながら言う。「が結局お前が倒したんだから俺は恐らく目向きもされないだろうよ。」
「まあ、そう言いなさんな、実際倒したのはこの私なんだから」
「それもそうだけどなんだかおもしろくねえ。」
「私が見ていたんだからいいでしょう。」
「目え瞑ってたじゃねーか!!」
「そしてあなたはこれで晴れて生徒会の一員よ、これからもよろしく。くひひ」
「嫌な笑いかたすんじゃねー!テンション下がるだろうが!!」
「私が生徒会長である限り、あなたを離さないから覚悟しときなさい☆」
「クソ、なんだか泣きたくなってきた。」
「ま、でも今日はがんばったことだし、ご・ほ・う・び」
アテネはしゃがみこみ、炎魔の顔を両手で少し持ち上げた。心地よい冷たさが炎魔の頬に染み渡った。
そして彼のおでこにキスをした。
「これからも仲良くしましょ。」アテネは飛びっきりの笑顔でそう告げる。
炎魔はため息をついた。
ま、いっか。
炎魔は心の中でそう呟き、意識が飛んだ。