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決闘をすっぽかす主人公ってどうよ?

久々の投稿です。


決闘。


それはどんな時代だろうと、どんな世界だろうと変わらずにカッコいい響きとカリスマを供えた言葉だ。

人間はあらゆる理由で決闘をする、プライドを保つため、女のため、男のため(?)、おやつのため、人を守るため、信念を貫き通すためなどなど数え上げたらきりが無い。

動物もテリトリーのためや雌のために決闘をする。

そして人間は他人の決闘を見る事を好む。自分たちには全く関係ないはずなのに熱くなり、応援する。


今日、龍牙魔術学園で決闘が行われる。

それは学校のホームルームでさえ見に行くように言われ、大所帯となっていた。

決闘場所である中庭にはなんとレンガ造りのコロシアムが地面をハッチみたいに開けて出てきたのだ。

コロシアムは丸い闘技場に階段のように段々と上がっていく感じの観客席があり、一部のスペースにはでかい画面が設置しており、誰でも見えるように工夫されている、さらにその画面の下には中継場所があり、ゲストに決闘をコメントしていただくと言う形になっている。


決闘時間四時に近づくにつれて観客である生徒たちがドンドン入ってきて賑やかになり、決闘を待った。

ふさわしい決闘場、満席に近い観客数、スタンバイしている放送と新聞部にゲスト、そして闘技場で生徒会執行部が来る勝負に備えている。

日本刀に刃こぼれがないか白い胴着とはかま姿で調べている土方優、「戦場の哲学」と言う本を熟読しているテュラエル、そしてビーチパラソルの下でLehneに気持ちよさそうに座ってジュースを飲んでいる生徒会長雷神アテネ。

だがここでとても大切でなくてはならない者が無かった。


そう対戦者、すなわちこの物語の主人公である鬼崎炎魔がまだ来ていない。

あと決闘開始まであと十分切った時点でもまだ姿を現す気配が無い。


「バックラレましたね。」テュラエルはアテネにジュースを注ぎながら言う。

「そうね~。」アテネはため息をつく。

「どうする、姫?」優はこめかみに青筋を立てながら尋ねる。


アテネは何も答えずに生徒手帳を取り出し、プレートに触れた。

ポンっという電子音が鳴り、画面から立体映像が飛び出した。色んな名前が飛び出ていてアテネはスッポカシ主人公のフルネームを言うと彼のパーソナルデータが現れた。彼女はは炎魔の写真を押すと電話音が流れ出したそれを耳に当てた。

この生徒手帳はこの学校関係者にしか使えないが、ただで電話し放題の上、ショートメッセージやテレパシーモードに移行出来たりする優れものなのだ。


しばらくすると「もしもし?」と炎魔が電話(?)に出た。

「鬼崎ク~ン、今どこにいるのかな~?」アテネはニッコリしながら答えたが目は全く笑っていなかった。

「何処って、俺の部屋だけど?」炎魔は怪訝そうな声で言う。

「何で自分の部屋にいるのかな~?」アテネの笑みは広がったが目は笑っていないので逆に不気味さが増した。

「アレだよ、明日一泊二日の遠足だから準備しようと思った。」

「ひょっとして今日決闘あるのお忘れ?」

「え?あれマジでやんの?」

「今日のホームルーム聞いてなかったの?」アテネの額に青筋が立ち始めた。

「いや、寝てた。」

「五分以内に来なさい。」と女の子とは思えない凄みのあるヤクザ声でそう言う。

「片道十五分を三分の一の時間で来いだと?いいか、ひめっち、世の中にはな出来る事と出来ない事がある、そしてその申し出は後者だ、分かるな?オマケにその決闘、承諾した覚えがない。というわけでじゃーな。」

炎魔はそういって電話を切ろうとした。


が世の中は残酷だ。

「土方先生~。ちょっと来てくれますか~?」とアテネは作り笑顔で担任に呼びかける。

「スイマセン、チョウシコイテマシタ、三分で来ます!!」



カ~~ン!!

金曜日の四時、決闘の始まりを告げる鐘が学園コロシアムに響き渡った。


「レディースあ~んどゼントルメ~ン、今日は待ちに待った決闘でーす!!今日の決闘は生徒会の皆さんが最近転校してきた鬼崎炎魔に制裁を加えるというものでーす。」

中継場所から元気な赤毛の女の子が司会をしている。彼女の隣には三人のゲストが座っていた。

「司会はこの私、鳳凰光、一年C組が勤めさせていただきまーす!そして今日ゲストとして来ていただいたのは鬼崎さんの暴行の被害者である高橋葉子さん(たかはし ようこ)、なんと顔に膝蹴りを食らってしまいました。今日は悪口コメントを楽しみにしています。」

一人目のゲストは雪白を虐めていたグループのリーダーっぽかった猫耳でもあるかのような金髪。キリっとした顔つきだったがいまはでかい絆創膏が鼻頭に付いており、美貌が台無しだった。女子から人気あったのかコロシアムにいる炎魔に向けてブーイングが巻き起こった。

「次のゲストは龍牙魔術学園の女子寮を束ねている林さんでーす。」

「どうも」という気の抜けた声の主が挨拶した。

「そ~して~、最後のゲストは先頭解説アンドなんとわれらが学園長、松平龍一郎さん!!」

会場にいるすべての生徒が拍手を送り、中には立つものまでいた。かなり人気であることが伺える。

「では早速決闘者の紹介に移りましょーー!!赤コーナーには生徒会メンバー風紀委員長土方優さん!!別名‘男粉砕の優‘!!」

ここではドッと女子からの拍手と声援が巻き起こった。が男子からはそれに負けないブーイングが鳴り響いた。

「生徒会秘書、謎の留学生テュラエル・エンジェルダスト君!今日もまた新しいローション技を披露してくれるのか?あ、やんなくていいよ。」

テュラエルには数人しか拍手しなかった。新しいローション技を披露しようとして上半身裸になっているのだから無理もない。

「そしてわれらが生徒会長、雷神アテネさん、通称、姫!!!先代生徒会長の野望を打ち砕き、一年で生徒会長になったこの人に盛大な拍手を!!!」

今度は女子全員が立ち上がり拍手と声援が巻き上がり、闘技場にバラを投げ込む。

一方男子は何もせずに黙っていた。

「そして最後に不良の転校生、鬼崎炎魔!!!転校初日にクラスメートをボコリ、女の子の顔に膝蹴りを決め、女子寮で覗いて、そして土方先生が精魂込めて作った教卓を破壊した張本人!!!そしてなんのつもりか地面に手を付いている、そしてもう虫の息だ~!!」

ここで初めて全員がブーイングを炎魔に向けて飛ばした。

が彼はそんなものには耳を傾けなかった、というより四つんばいになってぜえぜえと荒い息をしている炎魔にそんな余裕すらなかった。歩きで十五分の道を本当に三分で走ったのだから当然疲れる。

「ではまずルールをせつめいしま~す。」司会者の鳳凰光は説明し始める。

「まずはここの中継場所にあるルーレットで勝負方法を決めまーす。まあ、いろんなのがあるから楽しみにしといてね~。もちろん全部一対一、もし鬼崎くんが一勝でも出来たら彼の勝ち!そして出場者は持てる力すべてを使って戦ってくださ~い。終わったらゲストの皆さんが審査員として判定を行います!いいですか?ではルーレットスタート!!!」

そういうと中継場所の上にある画面が付き、画面は文章で埋め尽くされた。

そしてそれらが渦のように動き出した。

炎魔はルーレットを見守りながら立ち上がり、祈った。


ローション相撲だけはやめてくれ、と。


いや~、決闘をすっぽかす主人公ってあまりいませんよね。

われながら変なことを考えたものだ。

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