大参事は一瞬の隙から生まれる。
放課後・・・・・
「何だ、これは?」
放課後の委員会議で発せられた最初の言葉だった。
生徒会室で行われている委員会議は一年A組からG組までの七人の委員長で遠足の事について話し合うという感じだ。ここで班分けで余った生徒たちをどうするか、役割分担や注意事項について話し合うという流れである。あったはず。
委員会代表はA組の委員長、土方優。
彼女が見据えているのは委員会議が行えない原因を作っているB組の委員長の席に座っているナニカだ。
白い髪に紅い眼、悪人のような悪い目付き。
早い話、鬼崎炎魔である。
パイプ椅子に力無く座っており、口から蟹のように絶えず泡を吹き出している。
そしてその相貌は悟りでも開いたかのように虚ろで天井を眺めていた。
さらに何故か顔に落書きされていた。ちょび髭にアイパッチ、額に‘肉‘、その上、頬にはリアルタッチなガチョウの絵が描かれていた。
世界の何処であろうと、こんな姿をしている人がいれば土方優でなくとも会議を始めにくいだろう。
つっこみ所が多すぎて何処から初めていいのかもわからないという状態だった。
「おい、鬼崎!貴様は何でここにいるのだ?」
優は戸惑いを捨てて炎魔に話しかける。このままでは委員会議は始められない。
おまけにB組の委員長は生徒会長雷神アテネのはず。
といってもやらないわけで大抵は雪白が代理で来ていた。
今度は雪白すらおらず、かわりに生きた屍みたいな炎魔がいやがるのである。
しかし炎魔は泡をもっと吹き出し、それ以外何も反応しない。
「御機嫌よう、諸君。」
炎魔を無視して会議を強引に始めようと決心した時、北側の窓から元気な声が響いた。
そこには生徒会長がちょうど窓際から部屋へと飛び降りる姿があった。
この時に彼女のスカートは何故かめくれない為、もう学園七不思議に登録されている。
「さて、今週末の遠足についての委員会議を始めましょうか♪」
そんなことを言いながら指をパチンと鳴らし、背の高い豪華な王座が竜巻に乗って炎魔の隣に着陸した。
「その前に姫、」優はため息をつきながら、それでも状況を妥協してくれる人が来てくれて内心ホッとした。
「そいつをどうするの?察するに、お前が委員長義務をサボってそいつを代理に頼んだという所ね。」
「この私が委員長としての仕事を放棄するとでも思う?」
アテネは心外そうな顔で言い、炎魔の前に置いてあるB 組のリストを自分前へと寄せる。
「今まで委員会議に来たことが無い人の台詞とは到底思えないわね。」
土方優は呆れる。
「それはいいとして何で鬼崎がここにいる?いつもどおりに雪白さんに任せておけばよかったのに・・・そしてそいつは何でそんな状態なのだ?」
「だって動かないから芸術するいいチャンスだと思ったのよ。」とアテネは何故かウキウキした素振で言う。
「白髪クンは土方先生、つまりあなたのお兄さんが作った教卓を壊しちゃって一時間もあの生徒指導室で過ごしたの。まさかあの土方先生にしぼかれる馬鹿にいるなんて思わなかったわ。どんな話術や幻術、色気を使っても誰もあの先生を怒らせることをしてくれる人がいなくて残念と思っていたところなのよね~。」
「全く、しかられたくらいで生きた屍状態に陥るとは、やはり男は情けないな。」
土方優は鼻息を荒くたてる。
一章から読んで下さってる読者の皆さんもう気づいているとは思いますが、土方優と土方先生は兄妹である。
「で、そいつをどうするんだ、姫?」優は尋ねる。
「そろそろ飽きてきたし、起こしましょうか。」とアテネは清々しいほどケロリとした声で言う。
「でもどうやって?」と優は尋ねる。
アテネは何も答えずに優を自身と炎魔の間に立つように手合図を送った。
嫌な予感を感じつつも彼女はそれに従い生徒会長と炎魔の隣に立つ。
その時、優の土方優の背中に針で刺された感触が襲った。 彼女は反射的に両手をその場所へと当てるがそこには何も無かった。
土方優は舌打ちした。
魔術師は大抵は一つの属性のエレメント魔術しか使えない。それは遺伝子で決められている以上、他の属性の習得はありえないわけである。だが突然変異で二つの属性を扱える人もいる。
生徒会長、雷神アテネは雷と風のエレメント魔術を使うことが出来る。
それが生徒会長の座を女であるにも関わらずに守ってこれた理由の一つ、そして先ほどの針の刺すような痛みは彼女がちょっとした電流で静電気を起こしただけだである。
「隙あり!!」とアテネは優の両手が後ろに回った瞬間に行動に移った。
炎魔の手を取り、優の胸へダイレクトアタック!
簡単に言えば炎魔は土方の胸を触っている。
「何をしているかあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
瞬時に赤くなったものの、すぐに理性を取り戻した。
そして今度はよく昔話に出てくる鬼の金棒が土方優の手に現れる。
それを横に振りかぶり、アテネを当てようと横なぎに振る。
が残念ながらアテネはすでに頭を下げ、その猛攻を避けた。
金棒は椅子の高い背を壊し、そして物理法則に従いそのまま炎魔の顔へと道を進み、攻撃は繋がった。繋がった。繋がってしまった。
「あの、委員会議をそろそろ始めません?」
D組の男子委員長が恐る恐るに意見する。
主人公をつっこみ役と決めているのに今回は一度も喋ってないな~。
どうしたものか・・・・っていうか何か話が進まないXDDがはは