暴力で解決しようとするとかえって悪化することがある
キーンコーンカーンコーン。
ついに昼休みの終わりを告げるチャイムが容赦なく五時限目の始まりを告げた。
先ほどまで空っぽだった一年B組の教室にゾロゾロと生徒たちが入ってきて、席に着いた。
ガヤガヤ騒いでいるクラスメートを横目に炎魔は緊張した。
人前にさらされるのは慣れていたが立つのに慣れていなかったし、まだクラスとは馴染んでもいないし、それに資料も何も無いので一体何をすればいいのかもわからない。
ハア、と炎魔がため息をついた所、引き戸が開き土方先生が入ってきた。入ってきてしまった。
数秒前までは騒いでいた生徒たちは一気に静まり返り、席を離れていた者達は目にも留まらぬ速さで席に戻った。
土方先生は(仮面の下から)咳払いをした。
「え~、今日は週末の遠足に向けての打ち合わせをします。」土方先生は始める。「遠足は江戸の郊外にある青松山岳地帯の頂上の龍牙学園の私有している別荘まで山を登り、そこで二日一泊過ごします。待ち合わせは土曜日の早朝、6時ですので遅れないように。ちなみに寝坊して、遅刻した人たちは先生と補習ということになっています。」
最後の部分はもはや脅しに近かった。おまけにコレは遠足ではなくもはやハイキングだ。これで遅れてくる馬鹿はいないだろう。
「あれ?先生は一緒に来ないんすか?」と炎魔は尋ねる。担任なのに何故付いて来ないのか不思議に思った炎魔は不意に口を開けた。クラスメートは全員同時に炎魔に目を向けた、まるで炎魔が爆弾発言でもしたかのように。
「いや、残念ながら行けない。実はその山岳地帯を担当している猟師に苦情が来て以来、先生はもう行けなくなってしまった。」と先生は残念そうに言う。「僕が行くと動物達が山を降りて里に被害を及ばすらしいんだ。」
そりゃ、あんたが怖くて動物が逃げてるだけだ!!と炎魔は内心つっこんだ。
先ほど質問をした勇敢な彼の姿は何処に・・・・・
「それに去年の遠足に時期に魚が大量に死んで川に流れてた事件が発生してね、また僕のせいにされたんだ。」と先生は続ける。「全くもって失礼だ、僕は川で顔を洗っただけなのに。」
いや、それえええぇぇぇぇぇぇぇ!!!それが原因!!!顔を川で洗った、すなわちその仮面を外したんだろ!!!そのショックで魚が大量に死んじまったんだよ!!!つーか仮面の下どんな顔してんだ?!?!?とまた炎魔は心の中でつっこんだがそんな事言って、「僕の顔で動物は殺せないよ、ほら!」なんて先生は仮面を取る展開に繋がってしまってはとんでもないことになる。死なないまでもトラウマになるのは決定だ。
「さて、先生はちょっと用事があるので先に早退する。後はただ五人一組の班をまとめるだけだからホームルームには絶対いない雷神アテネさんの代わりに鬼崎君が委員長としてまとめるように。班まとめが終わったら、放課後に委員会議を生徒会室で行って遠足の打ち合わせがあるのでちゃんとやるように。ではみなさん、また明日。」そんな事を言って土方先生は教室を去っていった。
「つーわけでさっさとやっちまうぞ。」炎魔は教卓の後ろに立ち、はじめる。「五人一組の班だ。決まっている奴らは手を上げろ、そして指されたら他のメンバーも引き連れて来るというシステムだ、簡単だろう・・・・っていうか手前ら何してんだ?」
炎魔が説明している間、クラスメートの大半は席を離れて喋ったり、トランプを遊んだりしている。
「おい!!!何やってんだ?!そんなことは後でやれ!!!これやんないと俺が困るんだけど!!」
と炎魔の怒鳴り声も空しく教室の騒ぎの中に消えていった。
唯一、雪白鈴奈が彼を心配そうな目で見ていたが彼女も打つ手は無く、炎魔を見守るしかなかった。
口が達者な人は人をふり向かせるような演説でこの場を収めるだろう、又ある人は勝手に自分で話を進めて怒られる羽目に合うだろう、又は派手な芸を披露して注目を集め、そしてその場を乗り切るだろう。
鬼崎炎魔は右手を天井に伸ばし、掌を開いた。
紫色の雷が辺りを照らした後、炎魔の伸ばした手には巨大な剣が握られていた。
その剣は柄も加えたら炎魔と同じぐらい長く、黒いのに鈍い輝きを放っていた。
刃は両刃で先端部分のほうが付け根より幅が広く、切っ先は大剣には似合わずとんがっていた。
その大剣の柄は日本刀みたいに長方形を丸くした形みたいであり炎魔の二の腕の長さを包帯らしきもので巻かれている。そして柄の握りの部分と刃のあいだには柄と同じくらいに長い燃え盛る炎の形をした鍔(?)が刃の付け根と同時に鍔の役目を果たしていた。
炎魔はその大剣を振り下ろし、刃の切れない横の部分を使い教卓を耳が劈く様な音と共に木っ端微塵に破壊した!
教室は一瞬にして静寂が訪れた。
「さて、結構静かになった所でさっきの続きでもしようか。」
炎魔はこの静寂を利用し、班まとめを一気に済ませようとした。
「さっきも言ったとおり、班が決まっている奴らはここに並んで名前を言え、そして俺が班をリストに書き込んでいくという、極簡単なシステムだ。」
そこで大剣がまた紫色の雷と共に消えた。
よほど驚いたのか、それとも怖かったのか誰も反抗することは無く、事はスムーズに進んだ。
そして20分後、班まとめを終了した。
「うっし、これで全員五人一組に分かれたな。後は俺と雪白と生徒会長が残ったか・・・」
一年B組の33人を五で割れば、三人余るのは無理も無いことだ。
どうしようかと考えていたら教室の引き戸が開き、なんと土方先生が入ってきた!
「あ、土方伯爵先生、班分け終わりましたが三人余ってしまったんですけどどうしたらいいでしょうか?」
と炎魔は担任が入ってくるいなに尋ねる。
が土方先生は答えなかった。
引き戸の所で呆然と立っていて動かなかった。
「鬼崎君、あれは何かね?」ついに声を発声し、指である所を指した。
炎魔はその指を辿って振り向いてみるとそれは木っ端微塵になっている教卓だった。
顔が蒼ざめ、弁解しようにも声が出ず、丘の上の金魚のように口パクパクさせる。
「あれ、学校の私物だってしってるよね?」
土方先生は炎魔の前に立つ。その威圧はは恐ろしく、窓に亀裂は走った。
「それにあれ、僕が作った物なんだ。趣味でこういうの作るの好きでね、壊されるのは結構いただけないなあ、鬼崎君。」
炎魔はそこに立ち尽くして一歩も動けず、顔も死人に負けないくらい真っ青になりつつある。
土方先生は炎魔の襟首をつかみ、彼を引っ張りながらそのまま教室を出た。
しばらくすると校舎の地下へと通じる階段を下りて一つの部屋の前についた。
その部屋のプレートには‘生徒指導室‘と書いてあった、そしてその上にはこう落書きされていた、‘生徒死道室‘と。
先生は鉄で出来ているドアをギイィィィィィィと開き、炎魔を引きずりながら入り、バタンと派手な音と共に閉まった。
ギャアアあああぁぁぁぁあああああっぁあぁぁあぁぁ!!!!!!!
一つの断末魔が校舎中に響き渡った。
何されたかはあえて言いません^^
ちなみに大剣の説明が下手で(すいません)イメージが沸かない!というひとはデビルメイクライのリベリオンという大剣を頼りにがんばってください。