アホな幼なじみ
次の電車は17:30
今は17:24。後6分ある。
最寄駅の階段に1番近い乗り場は1両目の前から3番目の扉の所。
今いる所は電車の中央より少し後ろになるので移動した。
移動中、左手側に緑の公衆電話が3つ並んでいた。後5分時間がある。
さっきの携帯番号は本当に繋がるのか?
と、ふと不安が過った。
そもそも自ら「ここに掛けて」と言って渡して来た番号だ。繋がらないわけ無いだろぉ?そんな事ないよなぁ?
今までも勝手に番号を語り出して教えて来た大人もいたけど、全てメモしないで無視して来た。
親も2人とも携帯はまだ持っていない。
大人の携帯に電話をすることなど中学生には皆無だ。
…掛けてみるか?
パンダちゃんの赤い電話帳を鞄から取り出し、常に挟んである50度数のテレホンカードとさっき貰ったメモを取り出した。
公衆電話のカード口にテレホンカードを入れるとさっきまで何の音も無かった受話器から"ツーーー"という音が無限に流れている。
030から始まる電話番号を恐る恐る押す。無限ループ音が呼び出し音に代わる
コレで出なかったらまたかければいいか…
パンダのデジタル表示の腕時計をチラッと見る。時刻は17:26 …
「はい、もしもーし?」
5回コールでイケボが出た!
「うわぁ!出た!あ、もしもーし。」
思わず「出た!」と言ってしまった。
「出たよ!あははは!サツキちゃんだ!電話するの早っ!」
イケボを聞いて安心した。マジで掛かった。
「繋がらなかったらどうしようかと思った。良かった。」
「そりゃ繋がりますとも。コレは駅の電話?」
「30分まで電車来ないから。」
時計を見ると丁度時間が27分になった。
「あと3分か…今日はどうでしたか?」
「今日は楽しかったです!!」
小学生みたいな受け答えをしてしまった…
「それは良かったです!!」
向こうもこっちに合わせて小学生みたいな受け答えである。
「うわ…テレホンカードの度数が凄い勢いで無くなっていく…35度やったのにもう31になっとる。」
今までテレホンカードは家に電話するくらいにしか使っていなかったので。1回の電話で1度数減っていく位だったのにこの減り方は凄い…携帯電話恐ろしい…
「そう!50度数で多分10分位しか話せないの。テレホンカードいる?105度数とかのやつあげようか?」
「えー?貰っとこうかなぁ…?」
有ると助かるテレホンカード。このまま行くと部屋に置いて有るNewtypeのアンケートで当たった大切な初号機のカードにまで手を出しそうだ…
「じゃあ公園にいる怪しい外国人から買っときます!」
「それは怖いから嫌だ!普通ので良いです。」
都会の大きな公園とかで外国人が売っているカードは違法に改良されたカード!カードの裏に細い金属のシールが貼って有るのをたまに電話ボックスに置いて有るのを見かける。
「あれは使えるんかねぇ?たまに電話ボックスに置いて有るの見たわ。」
「使っちゃダメだよ。拾うのもダメよ。ちゃんとしたのあげるから。」
「分かった。」
うにゃうにゃ話しているうちにカードの残量は25度になった。
「減るのめちゃくちゃ早いな…恐るべし携帯電話…」
「携帯からかけるのもめちゃくちゃ高いのよ…家からワン切りしてくれたらうちから掛け直すわ。」
「子機握りしめて、さっ!と出なきゃ…」
色々前途多難だ…彼氏がいる女子は普段どうしているのやら。
まぁ、私の友達に彼氏がいるような子は居ないので誰にも聞く事は無い。みんな私同様好きなアニメの推しキャラがこの世に居なくて辛いような子達だ。彼氏など皆無。
彼氏がいる女子は出来る限り近づきたく無い。
口の中に生ゴミを突っ込んでそのまま焼却炉で焼いてやりたくなるような嫌な奴だけだ。絶対話などしない。
私は多分友達の中で最初に彼氏が出来た人間になったのだろう…そして来週には中学も卒業。卒業式までほぼ学校に行く事は無い。
このままみんなには言わずにグッバイさよなら傷だらけの日々よ。という事にしよう。
「みんな彼氏と電話とかってどうしてるんかねぇ…」
とか話してるうちに電車が来るお時間に差し掛かりました。
「ではそろそろ電車に乗ります。」
「気を付けて帰るんだよ。お兄ちゃんは心配だよ。」
「お兄ちゃんはいいから!じゃあまたねー!」
「はーいまたねー!」
受話器を置くとピピーピピーピピーと3回連続音がしてテレホンカードが出てくる。テレホンカード忘れたらあかんで!!と主張しているのか…この3回鳴るのはなんなのか…この音が当たり前になったら主張にもならないと思うのだが?たまにテレホンカードが返却口に刺さりっぱなしになっているのはそう言う事だろ?と。
忘れずにカードを取りいつもの丁度いい定位置の方に進み始めた。
まだ定位置に辿り着いて居ないのに電車が来た。仕方ない…一度乗って車内移動するか。
一車両隣から乗ったのでそのまま前方車両に進んだ。自動とは書かれているものの車両移動の扉は重い。
開いて前方車両に入ると同じ事を考える奴はいる。と言うより私と同じ駅で降りる人間はほぼこの車両だ。
幼稚園からの幼なじみ男子が乗っていた。
…よりによってコイツかよ!である。もちろん私から男子に話かけるなど皆無だ。が、
「あれ?さっちゃんどこ行ってたん?メガネ掛けてないの久しぶりやん?」
コイツは話しかけて来るのである!相変わらず馬鹿ヅラで田舎のヤンキー丸出しの服装。近所の料亭のボンボンだ。
「図書館。雄太は?」
図書館には行ってないが、「イケメンイケボの大人とラブホ行ってた」なんてコイツには口が裂けても言わない。ご近所、学校に全部知れ渡る事になる。馬鹿だから何でも話す。馬鹿だから!!
「俺、イオン!!ちびまる子ちゃん始まるから帰る!!」
「ふーん。そういやアンタ高校どこ行くん?」
ちびまる子ちゃんの話などしたく無いしそもそも私は見ない。とりあえず今のホットな話題は進学先だ。
「受験落ちた!高校行かん。」
「は?O工業は?あそこ名前書けたら受かるって言うやん?」
県内で1番緩くて1番やばいと言われている誰でも入れる高校にコイツなら行くだろうと思っていたのだが?
「やろ?名前書いたら受かるって聞いたから名前書いてあとは寝てたら落ちた。アレ嘘やで。普通に落ちる。」
コイツならやりかねんのだが、本当に名前だけ書いて白紙とかびっくりする。そりゃ学校側も落としたくなる。
「足し算とかさ…攻めて何か出来そうな問題頑張りましたの跡くらい残さなあかんかったんちゃう?」
「足し算…2桁とか無理やし。九九覚えてないから掛け算と割り算とか無理。名前書けたらいいって親も言ってたからさぁ?」
噂には聞いていたがコイツマジで九九覚えて無かった…いや、そもそも中学…まぁ行ってればいいか。
最寄駅に着いた。
「ちょいトイレ行くわ。」
「おー。」
タバコの匂いを家に帰る前に消さなくては。お花の香りの消臭スプレーと歯磨きとブレスケアは忘れない。キスマークはフードに隠れてギリギリ見えない。大丈夫だ。
トイレを出ると待たなくていいのに雄太が待っていた。
「おっっそ!ウンコ?」
「ちゃうわボケ!しね!クソ雄太!!」
「人にしね言ったらダメなんですぅー!しね!クソサツキ!!」
「はいはい。黙れ。」
幼なじみなのでこのやり取りはもうお決まりだ。
改札を通ると私の後ろでピヨピヨ電子音…ってコイツ子供料金かよ!!やっっっば!!足早に無関係を装って先に進んだ。
後ろのクソダサ田舎ヤンキーは駅員には止められている様子も無い。横断歩道で待っていた訳でも無いのだが追いつかれた。
「さっちゃんは高校どこよ?近い?」
普通に会話を続ける気だ。仕方ないから会話してやる。
「隣の県の私立やで。美術科行く。」
「さっちゃん昔から絵上手いもんな。ええなぁ。足し算とかしといたら合格してたかなぁ…俺、親父の知り合いの大工のとこ行くわ。」
足し算とかのレベルでは無いのでは?とも思いながら一応高校生にはなりたかったのかと。
「朝6時半の電車乗って行く。」
「俺も朝めっちゃ早いっぽい。起きるの面倒い…家の手伝いは兄貴がいらん言うたからさぁー。」
「しゃあないんちゃう?お兄ちゃん板前修行とか行ってはったやん。店の跡継いではるし。雄太も大工は修行と思って行けば?」
「修行とかさぁ…レイガンとかカメハメ破撃てるようになるんやったら行きたい…」
真顔で言うから笑えない。
何やかんやで内容の無い会話を続けてうちの前だ。雄太の家はこの先。
「まぁ、頑張れ!じゃあな!」
「おう!おばちゃんによろしく!!」
「言うとくわ。」
そう言ううちの親への気遣いとかが出来る奴なのでまぁ憎めない。
かなりゆるゆる歩きながら帰ったので18時を少し過ぎてしまった。
何のために急いで隣の駅まで送ってもらったのやら…クソ雄太め!!
玄関の扉をカラカラ開けると愛犬チロルが白くて小さな体全体を使って飛び付いてきた。
「チロちゃんただいまー!はいはいはい。もういいもういいです。はいはい…」
愛犬の熱い抱擁とスメリングタイムである。
「こりゃ!不良娘!6時過ぎてるやろ!!」
うちの母がちょっと怒っとる。「こりゃ!」なので大した怒りでは無い。
「帰りの電車で雄太に会ったから話しながら帰ってきた。」
「ゆうちゃん!あの子ちっとも見ないけど元気してた?」
チロルは即母が抱っこしてはっはっはっ…と息をしながらこちらを見ている。
「してた。アイツ高校受験失敗してたわ。」
「ええー!?O工業行くんちゃうの?あの子…」
母の驚きにチロルも母を見ている。そりゃびっくりするだろ。
とにかく帰りの時間が遅れた事も今日の図書館の話も男に会った話も全て雄太の話題に掻き消された。初めから話す予定もないのだが。
ひとまず雄太グッジョブである。
「もうご飯やから手洗ってうがいして来て。」
「んー。」
母はダイニングに入り私は洗面所だ。
手を洗っていたら母が姉と雄太の話をしているのが聞こえる。
ダイニングに入ると姉が開口1番雄太の話だ。
「雄太マジでアホやな。アイツのお姉ちゃんがヤバい言うてたけどO工業落ちる奴おるんやな。」
姉がテーブルに既に着席して先に鍋を突いていた。
「名前書いたら受かるって鵜呑みにしてほんまに名前だけ書いて後の時間寝てたんやって。」
「「アホすぎるやろ」」
母と姉の声が被った。
話題はさっき雄太が話していた事だけに集中していた。私の首のキスマークには2人とも全く気に留めてもいない。
本当に雄太グッジョブである。
チロルだけは私の足元で匂いを嗅ぎまくっていた。
何の匂いがするのだろうか。
チロルが言葉を話せたら絶対2人に何かチクってる。コイツが普通のただのマルチーズでよかった。
テレホンカードは今やコンビニでも取り扱いが無いお店も有りますが。
当時は電話の横には縦長のテレホンカードの自販機もありまして。買ったこと無いけど。
どっかの会社の名前が入ったテレカを父がよくくれました。
雑誌のアンケートに答えたら当たったりしたんですよね。
今ではプレミアが付いて私が持ってるエヴァ初号機の未使用テレカがオークションで70000円以上の価格が付いていて度肝抜かれました。
他は500円とかでやり取りされているのに何故…
絶対売らないぞと…。売りませんよw
偽造テレカとかも売ってましたが。私も見た事はありますが、こんな細工で使えるのか?と思うようなお粗末な細工でしたよ。
いつの時代もそう言うのは有ると言うものです。
当時は携帯料金には掛け放題プランも何もなかったですね。
その後0円で配り始めて世の中に携帯電話所持者が増えて今の状態になったのでは?
昔旅行会社の添乗員をしていた友人の話によると、
「あの当時は携帯持ってるだけでモテた。というかいきなりツアー客の女子大生の集団に「携帯番号教えて?」って言われる。誰がそんな田舎から出て来た化粧もヘッタクソなガキに教えるかってな!?」
との事で。
モテたそうです。
今はスマホですからね。
LINEでやり取りしまくりです。
番号なんか知りませんよ。な友人がかなり居ます。
それは本当に友人なのか…
あ、そうそう。
携帯の番号って初期の頃は030から始まってたんですよ?知ってた?
途中から090になって、その後に3を付けて今まで使ってた番号を繋げるという感じで。
090の番号の人はおじいちゃんとか高校生から最近聞きましたが。
0903の番号持ちが本当のおじいちゃんに近い人です。
私ですか?ずーっと178の入った番号を独身時代に使ってましたが、結婚して080になりましたw
おばあちゃんじゃないもん!ただのおばちゃんだもん!!




