八話「帆部託司(ホベタクジ)」
「託司ぃ、お友達にお母さんの事悪く言って無いよねぇ?」
「…え、何で?」
「○○くんのお母さんにね、今日公園で偶然会ったからぁ」
「教祖様の話をしたら嫌な顔されちゃってぇ」
「…いや、別になんも話してないけど。」
「そう?それなら良いんだけどぉ」
「中1なんて何でもバカにしちゃうんだから、もし教祖様のお話をする時はちゃんと本に乗っ取って話してねぇ?」
「…うん。」
「…ねぇ、今週末ショッピングセンターにでも連れてってくれない?」
「だめよぉ、お父さんとお母さんと一緒に礼拝する約束でしょ?」
「…それとも何?それ以上に優先すべき事だって言いたいの?」
「イヤ、ソウダヨネ!タメシニイッテミタダケダヨ。」
…
「お疲れ様でした!」
午後四時か、今日も朝からバイトを入れてた。
「一人暮らしも、案外何とかなるもんだな。」
俺帆部託司は所謂宗教二世って奴だ、しかもカルトのな。
でも幸い中三の頃マトモな叔父夫婦に助けられ、一人立ちするまでになれた。
「あんなの誰を助けてるって言うんだよ。」
悪態をつきながら、俺はアパートへの帰路につく。
「た・だ・い・ま~」
─退屈だ。
俺はリスクを冒す事が嫌いだ。
好奇心は強いが、併発する具体的な損害について知れば何でもすぐやめちまう。
でも、退屈も嫌い。
「…こういう人生がずっと続くのかな。」
「…あっ。」
「そういや今日は新ガチャ実装日だったな~」
もちろん使うのはセコセコ貯めたログボ石、ソシャゲがなけりゃ今頃無だったかもな。
ピーン ポーン
「すみませ~ん、帆部託司さんの部屋で間違いないですか~?」
…何も頼んでなかった様な。
ピーン ポーン
何だよ…
ピーン ポーン
何か言えよ…
ピーン
「ハァ~イ!今向かいまぁ~す!」
俺の名前知ってるし、アパート関係者だと思い扉を開いた。
…見覚えがある。
━コイツ、幹部だ。
「静かにしててねぇ~!三人居るからねぇ~抵抗意味無いよぉ~!?」
俺は簡単に車に詰められた、
どうして何も確認しなかったんだ。
しかし何て大胆さだよコイツら。
「おい!テメェラ何処行く気だよ!アァ!?」
「こんなんやってよォ!お前らの神とやらは喜ぶのかよォ!」
「邪神だァ!邪神!アクマァ!」
叫び疲れた頃、車から降ろされ何処かに連れて行かれた。
─そこには大人数の教徒と、両親も居た。
「何でだよ、何でお前らも居るんだよ!」
「託司、よく聞いてね?」
「先日教祖様がなぁ…お前を贄としろと仰ってたんだ。」
「あんたは何も理解してくれなくって、本当に手を焼いてたから。」
「教祖様の言う通りにすることにした。」
ハキハキ喋るな、コイツら。
祭壇?の前に連れられ、背後から電気がたぎる音が聞こえる。
「…おい!スタンガンなんて持ってどうすんだ。」
「お前の為になぁ、改造を加えた物だ。」
「安心して逝きなさい。」
止めろ、止めろ、止めろ、ヤメロ、やめろ。
─チカチカとする視界、その瞬間信じられない程澄んだ風が吹いた。
スタンガンを当てられた際託司という存在の周波数が僅かにブレ、偶然アレタルトの存在する異世界「大陸リヴァクル」とリンクし、転移しました。