五話「誰かの為」
あれから一週間、休憩時間を使い魔法に関する情報を調べまくった。
現時点で理解できた事は以下の通り、
魔晶には「属性」があり、熟練者になると送信用と受信用でそれぞれ別の属性を扱える事。
王都では許可無く魔法の使用ができないこと。
送信魔晶と惹かれ合えば近づけるだけで体に埋め込まれること。
そして、「警句」。
どうやらこの世界には詠唱という概念は無いが、
代わりに魔法を放つ際周りに危険を知らせる為の
警句を発しなければならないらしい。
・ゴナ 即時発生する魔法の末尾に付く。
・ユーティム 攻撃に時間がかかる魔法の末尾に付く。
・ペネトラ 毒など周囲の者の肉体を蝕む魔法の末尾に付く。
・ラズィ 補助魔法の末尾に付く。
・コニエ 必要に応じて行う魔法終了の合図。
・エ 接続文。
属性にも名前がついてて、例えば風の魔法であれば
「ウィアトル」と言う。
「ウィアトル・ゴナ」は
「風の即時魔法」という意味らしい。
「…はぁっ。」
─実を言うと現時点の俺はコンプレックスまみれだ。
俺は最初からこの世界に生きていた訳じゃないから、育ての親が居ない。
友人はできたが、何かを還元できている訳でもない。
最初から清掃班の内定者は決まっていたし、そこに特別枠として入った所で大して喜ばれる訳でもない。
基本的に城の人は優しい、だからこそ俺は切り捨てられるのが怖い。
「もっと、大きな力を手に入れて人の役に立ちたい。」
いつの間にか、魔法を修得する事がこの世界での最初の試練なんだと強く思っていた。
━地獄を見てもか?
「!?バルダーク…さん?。」
「…もう一度聞くぞ、地獄を見ても魔法を修得したいのか?」
「…」
「答えろ!」
「…」
「前、俺の風魔法は空気にも干渉できると伝えたよな。」
「音は空気の振動によって伝わるだろ?お前がトイレ掃除の際いつも魔法の事についてぶつぶつ言ってるのを俺は知ってるぞ、着任してからずっとな。」
…マジかよ、盗聴してやがったのか。
「そんなに地獄を見たいなら!俺の手で見せてやっても…」
「ギル!」
「…マクレ班長。」
「ここを辞めてからずっと聞けてなかったな…弟さんの容態はどうだ?」
「…最悪ですよ、どうせ半年ももう持たない。」
「…」
…俺は、一帯の雰囲気に気圧されている。
「ギル、さっきの言葉に真意があるのなら…話してくれないか?」
「…わかりました。」