四話「瘴気」
謁見の次の日、俺は休日を堪能していた。
「… … …」
「やべぇ、昼から寝ちまいそうだ」
王に仕えているのだ、昼夜逆転など話にならない。
「ん~どうせなら、中庭にでもい・こ・お・か・な~」
中庭の件がずっと引っ掛かっていた。
─ドアノブに手を伸ばす。
コン コン コン
「…!はい!」
「…現、清掃監査員のギルだ。」
体が強張る。
「…はい!どうしました?」
「…中に入れてくれるか。」
…こんなの入れるしかないじゃん。
「…飲み物は」
「はい!」
「結構だ。」
「は?」
何なんだこの人。
「あぁそれで、用件は何ですか?」
「…この事はお前に言っておかなければと思ってな。」
さぁ何が飛び出るか。
「…今後魔法を使いたいなどと思うな、絶対にだぞ。」
…えっ?
「それは…何故ですか?」
「魔法の原動力は瘴気だからだ。」
「瘴気って…?具体的に何なんですか?」
「…」
…どうやらバルダークの話を纏めると、
太古からこの世界には空気中に非活性化状態の元素やエネルギーが漂っており、それらが長い年月をかけて濃縮され、混ざり会った物を瘴気と言い、瘴気は何処にでも存在する。
そして、周りの瘴気を取り込み特定の元素・エネルギーを増殖&活性化させる事ができる「魔晶」というアイテムを使う事で魔法を放っている…らしい。
「でも、それだったら俺にも使えるのでは?」
「王様は俺には魔法を使えないって…」
「…俺達は生まれた時から瘴気に触れ、免疫を持っているのだ。」
「魔晶を使い、過度に瘴気を集めればお前には毒になるだろう。」
「魔晶には送信用と受信用がある、受信用の魔晶は武器や道具に埋め込む。」
「そして送信用の魔晶は体に埋め込んで使用する、つまり常に体の中を瘴気で満たす事になるのだ。」
そう言い終えると、バルダークは靴下を脱ぎ始めた。
右足の甲に翡翠色の魔晶が埋め込まれている。
…綺麗だ。
「バ、バルダークさんって、どんな魔法が使えるんですか?」
「風魔法だ、風を飛ばしたり止めたり空気に干渉したりできる…簡単な魔法だ。」
簡単な魔法
そう言った時、より深く眉間に皺が寄っていた。
「…用件は伝え終わった、邪魔したな。」
「あの、何でわざわざ伝えに来てくれたんですか?」
「…俺自身の為だ。」
扉が閉まった。
「魔晶かぁ、班長やタンコも身に付けてんのかな。」
実は俺はこの世界に来てから魔法を見たのは一度だけ、医療鑑定士のX線魔法検査を受けた一回だけなのだ。
穏やかな日々の中、
「実はこの世界の魔法って大した物じゃない?」と
ちょうど感じていた頃にこんな話をされれば。
─もっと深い所まで知りたくなってしまうじゃないか。