十一話「警句」
「あっはは!楽しそうだね!」
斜め上を見ると、何故かアデルが居た。
魔晶部分を後方に向け、杖に腰掛けている。
「…あぁ!凄ぇ楽しいよ。」
「このまま自由落下したら地面にぶつかるけど、それでも楽しい?」
「あぁ!」
「…フフッそれはそれは。」
「…よし、あそこの岩山に降りようね。」
そう言うと、アデルは杖から降りて自由落下を始めた。
「ウィアトル・ラズィ!」
ゴォォォォォォオオオ!
瞬間、地上から竜巻が発生した。
「ほ~ら、手を掴んで?」
魔法によって発生した竜巻の中、俺達は手を繋ぎながら円を描いて着地した。
まだ感動が抜けきらない俺に、アデルはまた怖い言葉を発した。
「これから依頼解決についてきてもらうんだけど、危なくなったら逃げてね?」
「…逃げるって、俺でも逃げれそうな相手なの?」
「いや?相手はディゼルティアーズっていう悪い奴らなんだけど…多分容赦してこないよ?」
「…ディゼルティアーズってどんな奴?」
「リヴァクル各地に居る違法魔法使いだよ、聞く所によればそいつらに占拠されちゃった街もあるらしいけど。」
「…ま~ったく、こっちはギルドの制約に乗っ取って相手しなきゃいけないのホントイヤ!」
…心に浮かんだ事は言わないでおこう。
「…あ」
「何?」
「…こっちに来てるかも、7人くらいかな?」
「えっ本当!?」
「私は風の送信魔晶付けてるから分かるの、魔晶ごとの特性ってやつ?」
「まぁまぁ練習しなきゃダメだけど、これが便利なのよね~盗聴できるし、送信魔晶だけで自己完結できるから。」
「あぁ、後20歩くらい下がっててね。」
「…分かった。」
「…先手必勝、顔も分からないうちに倒しちゃうのが一番♪」
─アデルは目を閉じると、自らの体を浮かせ高らかに警句を叫ぶ。
「グラビタシア・エ・ウィアトル・ゴナ!」
目の前に巨大な竜巻が発生した。
遠くで男達の悶える声が聞こえる。
「アデル!どうなってんのか見たいんだけど!良い!?」
「大丈夫だよ!」
慎重に魔法の発生場所へ近づき目を凝らすと…
確かに黒いローブを身に付けた7人の男達が地面に這いつくばっていた。
…これ、殺しちゃうんじゃないか?
「アデル!さすがに殺したりしないよな!?」
「…え~っ、どうしようかな!」
「じゃあさ、もしこいつらが君の仲間の仇とかだったら…どうする?」
「…」
「…殺すだろうな!」
「でも駄目だ!お前まで違法魔法使いってのになるんじゃないのか!?」
「あははは!冗談だよ!面白いね!ちゃんと殺すんだ?」
「大丈夫だよ!ここらのギルドの人達が騒ぎを聞き付けて向かって来てるから!」
「あはははははは!」
…
数分後、ギルドの人達が駆けつけ身柄を拘束しに来た。
「レセテルのギルドの者ですが、貴女は?」
「アレタルトのギルドランカー二番、アデル。」
「…問題児として有名な、アデル・ルークドレトさんですね?」
「前半、言う必要ある?。」
「まさかアレタルトの方にまで依頼がまわっていたとは…」
「最近同様の依頼が増えているので我々も手を焼いていたのです。」
「ご協力感謝致します。」
魔法使いは魔法を放つ際、危険を知らせる為周りに警句を発します、
用語を書いておきます。
・ゴナ 速攻攻撃魔法の末尾に付く。
・ユーティム 攻撃に時間がかかる魔法の末尾に付く。
・ペネトラ 毒など周囲の者の肉体を蝕む魔法の末尾に付く。
・ラズィ 補助魔法の末尾に付く。
・コニエ 必要に応じて行う魔法終了の合図。
・エ 接続文。
・ウィアトル 風魔法
・グラビタシア 重力魔法
なので、
グラビタシア・エ・ウィアトル・ゴナは
「重力と風の速攻魔法」となります。
後、ルビの振り方を覚えました。