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第一話 導入〜「死神は姿を表さず、人を殺める」

一話は現実世界。

妹、母親との幸せな三人暮らしが…。


 


 暴風警報、絶賛発令中、夜中11時、屋外。


 レジ袋片手に俺、母、妹は、帰路についていた。


__________________________________________________


 暴風がシュバアンッと、何度も俺の顔面を叩きつける。


 「いてぇ。何これ、最悪だろ、いてぇよ。」


 そんな俺の魂の反抗に気にすることなく妹が声を出した。


 「お兄ちゃん!先に行っちゃうよ!」


 「いじらしい、もどかしい、うませたい、ときめいちゃう、略して、( い も う と )。」


 目の前を、ルンルンとかける、『妹』がいるなら俺は無敵だ。


 煌々と輝く月を台風が隠していた。


 けれど愛らしい妹のマバユキが隠れることはない。


 母親のそば、天使のステップで飛び跳ねる妹は光り輝いていた。


 右手に持ったイモウトの好きな果物が入ったビニール袋がザラザラと騒いでいる。


 そして地上を覆って、ザザザッと爆発をしているのは、街を覆う、雨の粒たち。


 そんな環境音に紛れて、俺の喉元からは、本音が漏れ出た。


 「俺の妹、超可愛いんですけど。」


 茶色いロングヘアーをポニーテールで結び、ゆらゆらと左右に靡かせる女神の髪。


 華奢だけれど出るところは出ているモデル型の体型。


 清涼感あふれる風鈴の声に、沖縄の海のように透き通った青い瞳。


 「俺の妹、超可愛いんですけど。」


 その声は心臓の中を反響して肥大化する。


 俺の妹への愛情は何度もビックバンしていた。


 「お兄ちゃん。信号緑になっちゃうよ、ボケーっとした顔してないで、ほら、さっさと行くよ。」


 妹の可愛さを語ってしまっていたせいで、随分と時間を食ったようだ。


 俺はグシャリと右手を力ませ、ビニール袋を持ちあげる。


 肩にかけて、足に袋が擦れないようになったのを確認して、走り出す。


 「今から行く。ユイのためならお兄ちゃんは、死んでも死なんぞぉ!」


 前方で、信号待ちをする母と妹。二人は和気藹々と楽しそうに会話をしている。


 「お母さん!家まで競争だよ!」


 「はいはい、わかりましたよ、ユイ。お母さんも負けてられないんだからね!ふふっ」


 典型的な仲睦まじい家族のやり取り。


 ザザザッと勢いを増す雨から、俺も家族のもとにズンズン走っていく。


 肩に背負い直した果物の袋がぐわんぐわんと弧を描いて振動する。


 二人の仲のよい様子に少し羨ましがりながらも、微笑ましい微笑で後をついていった。


 「幸せだなぁ、俺。」


 ざんざんと吹き荒れる風はその勢いを増す。


 楽しかった世界が、目の前で…


 異常に勢いが増した突風は3秒後、俺たち家族を襲った。


 その突風はまるで、幸せ者を粛清する死神のようだった。

 



 

 


  


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