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「あの、お母様。まだ体調が思わしくないのでは? ご無理をなさらないでくださいね」


「えぇ、ありがとう。モンティアナ」


 へぇ。今朝の失態を体調が悪いせいということにしたわけね。それで昼食は食堂に来られなかったと。体調が悪いからって普通は子供に向かってフォークを投げたりしませんけどね。

 イーサンから家庭教師の件で少し詰められただろうことも昼食に来られなかった理由では? いつもいる執事の姿も見えないし。どうなったのかしらね? クビ?


「マーティンがいませんね」


 執事のマーティンがいないことをジュディスお母様に尋ねるお兄様。ナイスです! 私も気になってた!


「……謹慎中よ」


「何をしたんですか?」


「オスカーには関係のないことよ」


「今日イーサンの姿を見ました。イーサンが動くことということは、母上とマーティンの間のことではなく、侯爵家に関わることではないのですか。次期侯爵である私に関係がないことなどないはずです」


 おぉ……12歳でこれだけ自覚があるなんて、スタングロム侯爵家は安泰ね。というか『母上とマーティンの間のこと』ってなんだか意味深ね。まさか、男女の関係にあるのかしら。


「黙りなさい」


「母上にとって不都合なことということですか」


「口を閉じなさいと言っているの」


「いい加減、私の髪と瞳の色の訳を教えていただきたいものですね」


 吐き捨てるようにそう言って、お兄様は食事もそこそこに立ち上がった。食堂を出ようとするお兄様の背中に向かってジュディスお母様が大きな声で『オスカー!』と呼び止めたが、お兄様は無視をして行ってしまった。

 ワナワナと握りこぶしを震わせるジュディスお母様。ギッと私を睨んでこられても、私は何にも知りませんよという顔をするしかない。


 お兄様の髪と瞳の色は確かに、両親のそれとは違う。ジュディスお母様似のお姉様、お父様似の私。だけどお兄様の色は、亜麻色よりも濃い茶色に、翠とも紺とも違う碧色。ちょうどお母様とお父様の間の色合いだと思っていたけれど、よくよく考えてみればマーティンのそれに……えっ! そういうことなの?

 だからカーラお母様が妊娠するや否や産むなと騒いで、お兄様を後継にするよう誓約書を書かせたの? え? みんなそれ気付いてる? 私は全然何とも思ってなかったけれど……ちらとジュディスお母様の顔を窺うと、私を射殺しそうな目をしてまだ睨んできていた。わお。


「私の顔に何か付いておりますか?」


「黙りなさい!」


 じゃあこっち見ないでよ! と言ってやりたい。だけどまぁ、怖がってるふりをしておきましょう。可哀想な子供を演出するのに徹しよう。


 それにしてもお兄様のこと、気になるわ。自分がお父様の子供じゃないと思っているのなら、辛いわよね……まだほんの子供なのに。

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