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その後はお姉様と軽い雑談をして、またお話ししましょうねと約束をして、自室に戻った。夕食まで少し休憩だ。
ジェーンを下がらせてベッドに横になる。少し頭の中を整理したいと思った。
最悪の未来は、私が再び貴族社会から追放、そして侯爵家からも勘当されて、平民落ちすること。
それを避けるには、まず第三王子殿下との婚約を結ばず、貴族学校でその想い人を虐げないこと。そもそも私が婚約を希望しなければ結ばれることはないだろうし、お姉様が第二王子殿下とうまくいけば確実に可能性は消える。そして、今の私はあの男爵令嬢をどうにかする気は全く無いので大丈夫。
より良い未来にするためには、勉強に励み、良い成績で貴族学校を卒業し、良い職に就いて市井で暮らすこと。そのためにお父様に家庭教師をお願いした。機を見て市井で働いて生きていきたいことも伝えるのがいいわね。
思い描いた通りの未来にするには、アレクを早く見つけ出して求婚することが大事ね。早ければ早いほどいいんじゃないかしら。今すぐにでも。だって相手はもう16歳よ。あと二年で成人して結婚できてしまう年齢になってしまう。
私が行動を少し起こしただけでズレが生じているのだから、前の人生と全く同じ同じように生きているとは限らない。見つけた時には既婚者でしたってことも無いとは言い切れないわ。
どうすればアレクに早く出会えるのかしら。
……彼が話していた過去の話をできるだけ思い出して接点を作り出すしか無いわよね……。
若い頃は兵士だったと話していたわ。25歳で右腕を失うまで兵士として過ごして、退役してからは王都に住む平民の子供達を集めて教師のようなことを始めたと。
……25歳以前に王都で暮らしていたかどうかすらも分からないわ。兵士なんて王都にも各領地にも大量に……いえ、アレクに訛りは一切なかった。とても綺麗な発音とイントネーションで、とても耳触りが良かった。つまり王都出身と考えていいはずよ。
今現在もアレクは王都のどこかにいて、おそらく兵士をしている。きっと探せる! 私が外出さえできれば……!
もしかすると彼が右腕を失う未来も変えられるかもしれない。25歳ということは、私が15歳の時にどこかで戦があったかしら……? 記憶にない。貴族学校に入ったから知らないだけなの? もしくは戦闘以外での出来事だった? 上腕から先を失うような大怪我を、なぜ負ったの……?
考えても分からないから右腕の件は置いておきましょう。次に私が行動を起こすべきは、自由に外出をするにはどうするか、よね。あと、お兄様とも気軽に話せる関係になっておきたいわ。
よし! 考えはまとまった! と、身体を起こし、ドレスの乱れを直しているとジェーンが部屋にやってきて、夕食の時間だと言うので共に食堂へ向かった。