第4話 扉の悲鳴
高校1年生、15歳の天音雫です!
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!
「葵オネーさん…やっと、意識が戻っ………って、んんー?
この部屋、こんなにおーぷんな作りだったっけー?」
「あ……、と、扉が、ーーーーか、悲しげに、横たわっているね………」
「渚冬さん擬人法の使い方うまいですね……」
もともとの扉の位置から完全にずれた場所で倒れているーーもとい壊れている扉を目にし、桜は興味津々に、渚冬は苦笑しながら部屋の中へと入ってきた。
「意識を取り戻したみたいで何よりだよ。
志乃様が大丈夫だって、言うから、きっといつか、って思っていたけれど……」
「信用して無かったんですの、渚冬様?」
ゆっくりと葵が座っている寝台へと近づいてくる渚冬に執行人は呆れたような目を向けた。
「ほ、ほらー、やっぱり実際に起きてくれないと、渚兄も心配だよねー?」
桜が咄嗟に救いの手を入れ、
「し、志乃様もそうでしょー?
だって、お目め、涙でうるうるしてるもんねー?」
「そ、そんなわけないですわ!少し寝不足なだけですわよ」
弱点を上手く突いて共感を求める桜に、志乃と呼ばれた執行人はふいと顔を背けた。
「えー?ほんとかなー?」
無邪気に笑う桜に和む空気に、咳払いを一つ響かせて、
「ーーーーそれで、何があったのかしら?」
真剣な眼差しで葵の全てを見透かそうとするように鋭く射抜く執行人ーー志乃が空気を一変させた。
部屋の空気が一気にピンと張り詰めた、ような気がした。
初冬の初霜が降りた朝のような。
そんな感覚だ。
「役者は全員出揃いましたわ。
丁度、用意されている椅子と同数でしょう?
何があったのか、詳しく説明してもらいますわよ。」
「そうだね。
僕も何があったのか、知りたいな。」
葵ちゃん、ボロボロの状態で時雨夜の通りに桜を抱いて倒れていたからね、と微苦笑する渚冬から衝撃の事実を明かされ葵は愕然とした。
そんな状態で発見されたとなれば、それはいくら姉でも、あれだけ心配するだろう。
「誤魔化しもはぐらかしも御免ですわよ。
しっかり、一から話してもらうわよ?」
わかったかしら?と念を押す志乃に葵はコクリと頷いた。
あの恐怖が蘇り、全身に鳥肌が立つ。
それでも話さなければ。
あのことを話すことくらいで躊躇っていたら、助けに行くことなんて、到底出来ないから。
「まぁ、話も長くなりそうだし、その椅子に座って聞きましょう、渚冬様、桜樣。
あぁ、瑠依は別にそのままでいいのよ。あなたは今椅子に座っているんだから」
何故か椅子から椅子へ移動しようとした瑠依の突飛な行動に直ぐに対応するあたり、かなりの強者だ。
流石執行人というかっこいい肩書を背負っているだけある。
姉の抜けっぷりにも対応できるとは。
勝手にそんな印象を抱きつつ、全員が椅子に腰掛けたのを見て(桜は足が床に着かずブンブンと振っている)葵はゆっくりと話し始めた。