第3話 卯年
高校1年生になりました天音雫です!
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!
頭には兎の耳。陽の光に照らされた金髪は緩く横に三つ編みしている。雪白の浴衣に淡い紫の帯。
葵と瑠依をただ呆然とした表情で見つめるその色素の薄い、アルビノのような目は、あの時と似ていてーー
「ほ、んとにっ……!
っ、目覚めたら、すぐに報告するようにって、私、瑠依に、何回言ったかしら?」
眉を釣り上げ瑠依を睨む。
しかし、声は震えていた。
「渚冬樣、桜様!
葵様が意識を取り戻しましたわ!」
次いで、扉の無くなった出入り口から半身を部屋の外へと乗り出し、そう叫んだ。
直ぐに、慌ただしい足音が2人分、近付いてきた。
「もしかして、あなたは、執行人のーー?」
初対面、ではなかった。
見覚えがある。あの時、何とかこんとか雅を姉から引き剥がし、桐ヶ谷神社に戻った時、唐突に現れ僅かな会話を渚冬と交わしただけで、雅諸共消えてしまった、あの神様だ。
雅を、牢に入れると言っていた、”悪い奴をぶっ飛ばす役割“の神様だ。
今年の、時雨夜の“執行人”だ。
「あら、覚えててくれたのね。良かったわ。
説明の手間が少し省けるわね。また、さっき瑠依にしたみたいな説明を繰り返すのは流石に辛いわ。」
「あ、姉がご迷惑おかけしたみたいで……?」
話しぶりからすると、瑠依とこの執行人は既に何か話しているらしい。
そして、これは憶測だが、恐らく、瑠依は何かやらかしているだろう。
申し訳無さに身を縮ませた葵に執行人は、すっと目を細め、
「葵様は瑠依様よりしっかりしてそうね。瑠依様なんて、私の事何にも覚えてないどころか、3秒前に言ったことさえ忘れてしまうのよ。」
瑠依の方を向き嘆息する執行人に、瑠依はずいと顔を近づけ、
「そうでしょうそうでしょう?!
私の可愛いあおちゃんはいっつも頼りがいがあって、私のことを助けてくれて、捜し物を見つけてくれて、朝起こしてくれて……!
でも時々虫が苦手で泣きそうになってたり、今みたいに無理しちゃったりして……」
「葵ちゃん!!」
「葵オネーさん!」
瑠依が、親バカならぬ姉バカを発揮し、葵の魅力を滔々と語り始めた丁度その時、渚冬と桜が到着、扉の目の前に息を切らして立っていた。
「、桜ーーーー」
神の姿に戻っている桜に葵は思わず安堵のため息が漏れた。
随分と廻り道をしてしまったが、桜にかかっていたあの呪いは解けたのだ。