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第19話 めもりー

高校1年生、15歳の天音雫です!

何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!

「ここはどこなのよ…

城も何処かに消えたわね。

葵様と瑠依様は一緒にいるのかしら。

桜様は……?」


ぶつぶつとつぶやき推察する。


その間に、物音一つしないのは不気味の一言に尽きる。


志乃の額に冷や汗が浮かぶ。

恐怖から、ではない。


それは、自分が葵と瑠依と桜を守りきれなくなることへの、渚冬との約束を守れなくなることへの焦りからだった。


執行人。


本来は異界に入ることさえ非行とされている。


しかし、あのまま行かせてはおけなかった。


だから、雅からの闇売処の事情聴取という大義名分を作り、同行した。


執行人は、普通の神よりも任期の年だけ権能の力が強くなる。


戦力になると思った。


守れると思った。


しかし、実際はどうだ。


予想だにしなかった罠にやすやすとかかり、自分の手の届かないところに自分の守りたい人達がいる。


「私もまだまだ未熟だわ」


自嘲の笑みを浮かべた志乃はふと、目の前扉があることに気がついた。


「…………」


怪しい。第2の罠かもしれない。

入ればどうなるかは分からない。


でも。


「もしかしたら」


城の、入口かもしれない。


葵や瑠依や桜を巻き込まず、1人で決着をつけられるかもしれない。


勇気を出して扉の取っ手を掴み、捻る。


音を立てて開いた扉、その中にはーーー


「…っ!」


眩い、光しかない扉の中。


何の冗談か、強制的に吸い込まれていく。


志乃はバランスを崩し扉の中へと倒れ込み、あっけなく意識を失った。










志乃は正座をしていた。


目の前には、


「ぇ……、お母、様……?」


母親が、同じように正座している。


そこはもう、志乃が先程までいた赫色の空間ではなかった。


立派な和風の作りの部屋。


たたみに屏風。


向かい合う志乃と母親の横には3人の護衛が膝をついて頭を垂れている。


「志乃。良く聞いてください」


唐突には母親がーー小百合が切り出す。


「ぇ、え……」


状況が理解できず漏れた声は随分と高い。


膝の上で重ねた手は小さい。


子供の姿。


志乃の脳内で情報が、記憶が、全てが、フラッシュバックする。


そして、ようやく思い当たる。


これは、自分が子どもの頃の記憶ではないか。


記憶を操る、たちの悪い妖魔がよくいると志乃は聞いたことがある。


その妖魔は、神も妖魔も人間も関係なく、無差別にその人物の精神を、その人物の持つ過去の記憶の中放り込む。


そうして、記憶の中に閉じ込めてしまうのだ。


その記憶の中でその人物が何か行動を起こし、過去の記憶を“歪める”ような素振りを見せれば。


その人物には、ペナルティーが課される。


そのペナルティーがどんなものであるかまでは、志乃は知らない。


しかし、ペナルティーが課される以上、己の過去の記憶の中で、記憶と違う行動を取ることは自殺行為だと聞いていた。


恐らく今回は、それを罠に応用したのだろう。



なんて悪趣味な。


志乃は悪態をつきたくなった。


だって、志乃の大好きな母親は、もう。


ーーーーこの世に、いないのだから。



「志乃。あなたは執行人になるべきではありません。どうか、依頼を断ってください」


ズキン、と鈍い痛みが志乃の心臓に走った。


予想はしていた。


かつて、全く同じセリフを、全く同じ状況で言われたのを、覚えているのだから。


ご丁寧に再現しているのは、志乃の心を抉ることを目的にしているとしか考えられなかった。


この記憶は、志乃の母親が死ぬ少し前の記憶。


この記憶を罠に引っ張り出してくるなんて心の冒涜にも程がある。


「あなたが担うべきではありません。

志乃。どうか分かって」


「………………」


志乃は唇を痛いほど噛んだ。


たちの悪い罠だ。


ここに長くいれば、現在の自分の心を失う気がする。


今だって、こんな事を話さずに、早くここから逃げなければ死んでしまうのだと伝えたくてたまらない。


残酷な未来を知っているのは、今の志乃だけで。


その未来の回避方法を知らないのも今の志乃で。


その未来を回避することが許されていないのも、今の志乃で。


ーーーー止めたい。


でも。


ペナルティーがある。


己の記憶を変えることで、自分だけがそのペナルティーとやらを受けるのなら良い。


もし、そのペナルティーが、葵や、瑠依や、桜にも課されるものだったら?


何か、悪い影響が及んでしまったらーーーー?


「志乃。

お願い、どうかーーーー」


「なぜ私ではだめなのですか?」


激情を押し殺す。


皆を守る執行人が、皆を危険にさらすような真似はできない。


母の忠告を無視して担ってしまった、執行人の名にかけて。


この過去を、歪めては、ならない。


だから、記憶と同じ台詞を言う。


このあとどうなるかも、分かっている。


目の前には眉尻を悲しげに下げる小百合がいる。


母親につられて、自然と志乃の顔も歪む。


ーーーー己の記憶に、閉じ込められる。



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