第16話 憧れと嫌悪と
高校1年生、15歳の天音雫です!
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!
「氷鬼。
何でお前がここにいるんだよ?
時雨夜から追い出されたのかぁ?」
「君は誰だ」
「質問を質問で返すな
礼儀がなってねぇ」
「君は僕のことを知っているが僕は君のことを知らない。
名前くらい教えてくれてもいいんじゃないか?」
会話の隙間に攻撃、斬撃、守備。
巡るましく変化する戦場。
相手の正体もわからずに互角に戦いながら、会話できるのは渚冬だからこそ成し得た技だろう。
「はっ、俺は怜央だ」
「……嘘だろう」
眉根を寄せて反論すれば、
「流石に騙されねぇか」
お返しとばかりに靄の鞭が飛んでくる。
すべてを氷槍で薙ぎ払い、高く跳躍。
地面に氷棘を展開する。
怜央はそれを最小限の動きで避け同じく跳躍。
戦場を空へと変えようとする。
しかし、
「……成程、なぁ?」
「ただ無闇に氷を放っているだけだとでも?」
周りに囮の氷を散布し逃げ場を奪った後、本命の巨大な氷柱を怜央の体へと穿った渚冬は口元を袴で隠す。
それは自分を忌むべき名で読んだことに対する軽い仕返しでもあった。
氷鬼。そう呼ばれるのが当たり前になったのは、何歳からだっただろうか。
「やるじゃねーか、氷鬼」
体を射抜かれた怜央は、そこから血ではなく真っ黒な靄を出しながら捕食者の目で渚冬を見つめる。
やはり妖魔に乗っ取られた体では、簡単には倒せないのか。
しかも、その乗っ取られた体の持ち主が執行人であるという事実が渚冬の心を苛んだ。
自分が幼かったころ、憧れた仕事。
時雨夜を、人間界を、守って平和を保つ仕事。
ーーーーその夢はもう、とっくの昔に諦めてしまっていたが。
それもこれもどれも、この忌々しい権能のせいだ。
しかし、この権能になってしまったのは自分のせいだ。
かつて渚冬は、氷ではなく水の使い手だった。
そもそも、稲荷家は代々優秀な水の権能の使い手だ。
そのまま成長すれば、渚冬は時雨夜でも指折りの水の権能使い手になれるはずだった。
本物の、“氷鬼”に騙されてさえいなければ。
「…………僕の名前は渚冬だ。
稲荷渚冬。
氷鬼なんて名前で呼ぶな。
”本物の“氷鬼は今も時雨夜の何処かに隠れてる」
次なる攻撃に向かわんと手のひらの上で氷を成長させる渚冬に、
「藍瀬。」
「……は?」
眼の前の顔が、ニタリと嗤う。
「俺の名前は藍瀬だ」
一瞬虚をつかれた渚冬。
しかし、その一瞬が致命傷だった。
「ゔっ?!」
黒い靄が渚冬の口を塞ぐ。
足を、手を、拘束する。
「お前を殺す、男の名前だぁ!」
漆黒の瞳に狂気が光った。




