第二十話
カクヨムでは二話ほど先行しております宜しければ、カクヨムでもご一読いただけると嬉しいです。
「あ、先輩こんばんわです」
「ああこんばんわ……ってそうじゃない!!」
連絡がないなと思って足を延ばしてみれば、予想通り葛城はペットボトルを片手に歩いていた。
「連絡しろっていったよな?」
俺は少し前に少女に言ったセリフを思い出す。
「今までは一人で何とかなっていたので……」
「はあ……」
「あ、言いたいことは判ってるのでお小言はいらないです」
「俺もこうして出歩いている時点で、口煩く説教を垂れる資格はないけどさ……」
口煩く小言を言って相手が変わるのなら小言を言うが、それで変わる相手を今までの人生で殆ど知り合ったことはない。
そして彼女は俺の “推し” そんな彼女に嫌われたくないので小言を言うことが難しい。
そしてある程度、彼女と両親の関係が悪化しなければ原作知識を活かして彼女と仲良くすることも出来ず難しい。
「はぁ……」思わずため息を吐いた。
「先輩って溜め込むタイプですよね? 一回会っただけの年下の女の子のことなんて、他の大人と同じく見て見ぬふりをすればいいと思うんですけど。それともあたしのこと狙ってます?」
「……確かに見て見ぬふりをすれば楽かもしれない。でも俺はそんなことはできないよ。葛城さんの事情に土足で踏み込むつもりはない。言ってしまえば目覚めが悪いからだ」
「そうやってツンケンしたことを言いながらも、あたしのことを心配してくれるのは嬉しいですけど……最後の一言が余計だと思います」
「だって君からしても、自分が心配される理由はヤリモクか精神衛生上の偽善ぐらいだろ?」
「まあそうですけど……年上の男性にはっきり言われるとなんだかなぁ~って感じです」
「……と言う訳で大人しく家に帰るか、俺とファミレスで時間潰すか選べ」
「いいんですか?」
「ああ男に二言はない」
両親から昼食代として貰った金に手を付けず手弁当を作っているおかげで多少の金は浮いているからな。
「今日はガチで助かります」
「ならよかった」
「奢って貰うので説明すると、両親と進路についてガチ喧嘩してて家の中がビリビリしてるんですよ」
「なにお前ん家、帯電してんの?」
「……」
渾身のギャグをスルーされた。
「茶化して悪かった」
「まあいいですよ。先輩がそういう風に茶化すだろうなっていうのは予想できていたことですし、理由を話したのは申し訳が無いと感じたあたしのエゴですから……」
「じゃぁ謝罪次いでに今日はポテトも追加で頼もうか、二人で摘まめば腹も適当に膨らむだろ……」
「わーいやったー」
………
……
…
俺と葛城はフライドポテトを片手に会話をする。
久しぶりに食べるがサクサクとしたフライドポテトは美味しい。
「俺と知り合う前まではどうやって乗り切ってたんだ?」
「えっ、フツーにその辺をお散歩したり、友達の家にお邪魔したり……」
「今日も頼れば良かったんじゃないの?」
「……行ってる日もありますけど、仮にも今年受験ですから出来るだけ迷惑かけたくないんですよ」
「それを言うならお前も受験生だろ?」
「でもあたし、そこそこ勉強できるので……一応第一志望は瑞宝か桐花、女子校なら旭日で滑り止めが宝冠です」
「この辺の名門六勲校ばっかりだな……」
全部設定で語られる程度しか知らないが話を合わせる。
葛城の話を総合するとこの辺にある六つの名門私立のことらしい。
偏差値一位の桐花、文化、瑞宝、宝冠、女子校の旭日ときて、スポーツの名門 金鵄の以上六高校を纏めて【六勲校】と呼ぶらしい。
「――と言うわけなので、勉強は大丈夫です」
「ならよかったよ……」
葛城の学力については、原作だとそこまで言及されていた記憶は薄い。
まあ本人が大丈夫と言っている以上、信じる他ない。
「そう言えば先輩はバイトとかしてるんですか?」
「バイトはしてないな。まず瑞宝見たいな進学校でバイトしてる奴は少ないと思うぞ?」
「えっ! そうなんですか?」
「課題の量もそこそこ多いし、受験を意識してるやつは予備校や学習塾にかよってるからな部活と勉強で手一杯って奴が多いんだよ」
「ラブコメの定番って進学校じゃできないんですね……」
「まぁ出来る奴はやってるから不可能ではないだろうけど、自称進学校とかじゃなくて、ウチ見たいな本物の進学校か中間校以下ならできるんじゃないか? しらんけど……」
「はぁー現実は甘くないかぁーバイトして恋愛して、部活して遊んで名門大学に合格する……そう言うラブコメ見たいな青春を送りたいのに……」
机に伏せるようにぐでーっと体を伸ばす。
「あはははははは、そのためにはまずは夜にフラフラせず勉強して高校に受からないとな……」
「あ、結局その話に戻っちゃいます?」
「ポテト代ぐらいは説教させろ、まあ何を言おうと現実からは逃れられないからな……」
「そうですね。こうして居場所を提供して貰っている間くらいはお小言を訊きましょう……」
「遠慮せずウチに来てくれた方が俺は楽なんだがな……」
「それは……すいません。一回でも頼っちゃうとなし崩しになりそうなので……」
「もうなってるんだから無駄な遠慮はするな」
「言われてみればそうですね。検討を加速させます」
「まあ、責任が取れない俺から偽善を押し付けられて面倒なのは判るけど、親から逃げても俺から言われるだけ結局何かが変わらなければ、葛城を取り巻く環境は変わらないんだぞ?」
「……確かにそうかもしれません。偽善って自分を卑下してますけど私からすれば蜘蛛の糸です。親から言われるよりは先輩見たいな第三者から言われる方が数万倍マシです」
「……そうか」
「じゃぁお言葉に甘えてこれからは構って欲しい日に連絡します。それじゃ連絡先の交換しましょ? 可愛い後輩と連絡先交換出来て嬉しいですか?」
「ああ、嬉しいよ」
俺の返事に葛城は顔を赤らめ爪先で俺の脛を軽く蹴った。
前に連絡先を書いた紙を渡した気がするが……あまり深く考えるのはやめておこう。
連絡先を交換した俺達は葛城を駅まで送り届けると別々に帰った。
ピンポン。と音が鳴りLIMEの通知が来る。
今日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします
と言う一文と共に可愛らしい動物のスタンプが添えられていた。
『今後ともよろしく』
返事を返した俺はスマホをポケットに戻した。
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