リンゴ、ゴリラ、ラッパ
リンゴ、ゴリラ、ラッパ
俺はゴリラ
名前はゴリマサ
遊園地在住のマスコットゴリラだ
とてもお利口さんなので園内を自由に歩かせてもらっている
今日はお気に入りのラッパを片手に遊園地内を散歩中
いつも通りのルート、檻から出て、入口から順路と反対側の観覧車方面へ歩き、一周して帰るお客さん全員に顔見せする
お気に入りのラッパで挨拶するのも忘れない
そして散歩中に事件は起こった
リンゴが落ちている
いや、まあ、リンゴが落ちているのはそんなにおかしくはない
ただ、ここは遊園地だ
森でも園長室でも俺の檻でもない
リンゴはどこから来た?
とりあえずラッパで挨拶するが反応はない
拾ってみるが普通のリンゴに見える
じゅるり
実をいうと俺はリンゴが大好物だ
週に1度は出してもらえないといじけるくらいには好きだ
正直今すぐ食べたい
だが、俺はお利口さんなゴリラ
拾い食いはダメだと飼育員さんに言われている
野生なら拾い食いが当たり前だが人間の世界だと危ないらしいから我慢する
そうだ、落とし物を届けるとご褒美がもらえる!
リンゴを持って行けば何かもらえるかもしれない
もしかするとリンゴがもらえるかもしれない
よし、リンゴを持って……
歩きだそうとしたところで問題に気づく
右手にはラッパ、左手にはリンゴ、俺は4足歩行
ラッパかリンゴを手放さないとまともに歩けない
なんてことだ、どちらか捨てて行けと言うのか?
困った、ちょっと考えよう
ラッパはダメだ
落とし物を拾って落とし物を増やしたら怒られる
前のタンバリンはそれで没収された
俺は賢いんだ、同じことはしない
リンゴもダメだ
拾って捨てたら俺が実はリンゴ嫌いだっだと思われる
昔ミカンを投げてから大好きだったミカンを見ていない
俺は賢いんだ、同じことはしない
どちらかを手放すのは無理そうだ
仕方ない、あまりやらないがアレをやろう
俺はゆっくりと上体を起こし、後ろ足で立った
少しふらつく
気合だ、気合で立つんだ
「ウホホ!」
胸を両腕で叩く動き、ドラミングで気合を入れる
「ウホ⁉」
直後に失敗に気づく
右手のラッパはへし折れ
左手のリンゴは砕け散ってしまっていた
ショックのあまり2つを抱きしめながら2足歩行で帰った俺は
俺は賢いんだ、同じことはしない
それから2足歩行を猛特訓し、立って歩くゴリラとしてますます人気マスコットになった俺は片手にラッパ、片手にリンゴのスタイルが定番になっていた
そしてまた遊園地を散歩中事件が起こる
ミカンが落ちている
やべえ、1000字超えてた
気付くと1000文字超えてたわ