五十二話 火事場の馬鹿力って怖い
五十二話 火事場の馬鹿力って怖い
入学式に自己紹介、体力テストと『ザ・新入生』と言った行事が終わり、普通の学校生活を送りながら晩は弁当の内容に文句を言う星影さんを宥める事一週間。
……いや一週間も野菜オンリーのおかずでバリエーションもちゃんとしたお弁当を作ったって凄いな、俺。次文句を言われたらちゃんと言い返す事にしよう。うん。
そして体力テストから一週間経った今日の3、4時間目に何があるのか、そうですシャトルランです。もうね、終わりです。
「シャトルラン嫌過ぎる……早退しようかなぁ」
「早退するしないは啓の勝手だけど、後日一人でシャトルラン走る方が苦痛だと思うよ」
「傷心の人に正論パンチは良くないと思いまーす」
「体操服に着替えながら言ってももう手遅れだし」
「追撃で現実を突きつけないで下さーい」
体育館の更衣室で着替えながら凪と二人で軽口を叩く。あぁ……着替え終わっちゃった……
「……よし、啓? もう行くよ〜」
「後110分だけ待って」
「だけって何さ、しっかり休み時間込みで体育2時間分だし。はいもう行くよ〜」
そう言って凪が背中を押して来るが……全く動かん、え? 本当にこれ力込めてる?
「は……早く行くよ〜」
「……」
流石に不憫すぎたので渋々移動することに。……帰りてぇ。
「全員知ってる通り今日はシャトルランをするぞ〜。まずは準備運動……保険委員が休みか、じゃあ白原。頼んだ」
「あ、分かりました」
と言っても内心嫌々である。何が『先生係』だこんにゃろう。あのときのジャンケンでグーさえ出していれば……
とそんなこんなで準備体操も終わり、先に男子が走ることに。
「それじゃあいくぞ〜」
その先生の声と共にカウントがスタート、ゼロになった瞬間、あの恐怖の音楽が流れ始める。ペースメーカー的な意味合いが有るのだろうがそんなことはどうでもいいほどに恐ろしい。『魔王』とこの曲どっちが怖いか選べと言われたらノータイムでこっちを選ぶ位には怖い。
この曲聴いた瞬間に発狂する人って結構いそうだよな……
……とそんなことを考えている間にもどんどん回数が増えて行く。リズムが速くなり、だんだんと息が上がってくる。
やばい、右足だけ痛くなってきた。原因はなんだ? ……そうか! ターンの時に右足しか使わなかったから……うーむ、どうするか。回数も70超えてるし……もういいか、よし! 終了!
というわけで俺―――白原啓の記録は73回となった。
走った直後にいきなり止まると危ないので歩きながら待機場所へ。他の人は……お、凪まだ残ってるのか、凄いな。
その後80回を超え、目に見えて脱落者のペースが上がった頃……
「凪もだいぶキツそうだな……そろそろr『凪〜! 頑張れ〜!!』!?」
唐突に体育館に響く大きな声援、その方向を見るとそこには凪に向かって大きく手を振る千夏さんの姿が。そして、凪の方を見ると……明らかにペースが上がってる!? あいつ単純過ぎだろ!!
そしてそのまま回数は100回に迫り、シャトルラン特有の終盤残った数人をみんなで応援する展開に。
「俺あいつが90乗ったところすら見たことないんだけど……」
これが愛の力だと言うのか……
そして回数が100を超え、体育館全体に大きな声援が響く。
「流石に100超えたら満足するでsy『凪〜! まだまだ行けるよ〜!!』あ……」
再び響き渡る波さんの声。そしてもちろん凪はというと……目の中に火が付き、再び速度が上がったぁ!?
そしてその後は、凪の速度が落ちるたびに波さんの声援を受けて加速するループに、そしてその周期はどんどん速くなり……
「わぁすげえ、ひゃくにじゅうごこえちゃった」
「秋霧! もう十分だぞ! もうシャトルラン満点だから……あ」
『あ』
先生の制止で糸が切れたのか、単純に体力の限界だったのか、126を超えて少ししたあたりで凪はその場に崩れ落ちた。
「凪っ!?」
そう言って、千夏さんが凪の元に駆け寄る。……原因は貴女だけども。
「先生! 凪を保健室に連れて行きます!!」
「待て千夏、女子は後半で走るから保険委員に……も今日休みか、じゃあ白原」
「分かりました、保健室ですね」
「あぁ、今日保健室の先生休みだから、そのままついていてくれ。授業は出席扱いにしておくから」
おい! 絶対無理する奴が現れる日に休むなよ!……などと言えるわけもなく。
「じゃあ運びますね」
そう言い、凪を担いて……
「さ……流石に米担ぎじゃなくておんぶで運んでやれ」
「はーい」
しょうがないか……まぁ軽過ぎてどっちでも大して変わらないしな。
そしてそのまま、凪を保健室に運ぶのだった。
こんにちは 笠見ゐとです。
一年間以上お待たせしてすみませんでした!!
忙しかったのがひと段落したのでこれからはあまり間を空けずに頑張る所存なので応援していただけると嬉しいです!




