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五十一話 啓の顔は何度まで?

「ずるいと思わない!?」


 生徒会の仕事で俺より一本遅い汽車で帰ってきた星影さんの口から『ただいま~』の次に飛び出した言葉がこれである。


「どうしたんですか?」


 確実に面倒くさいことになるとわかっておきながらちゃんと相談に乗ってあげる白原君マジ聖人。将来の夢全然決まってないけどカウンセラーとかありかもしれないね。


「波のことだよ!」

「あぁ......」

「何そのリアクション」

「いえ、お気になさらず」

「それでね...」


 あ、この返しで本当に気にしない人いるんだ......まぁ(自分の感情に)素直なのはいいこと? だよね!


「重箱三段お昼に食べ続けてあの体形ってどういうこと!? それにあの調子だったら朝と晩もあれだよね? いくら運動しててもあぁはならないでしょ!!」


 俺も全く同じことを思ったがここで共感してしまってはダメ。『味方がいる』という事実はいい意味でも悪い意味でも人に火をつけるのだ。


「まぁ体形には個人差がありますし...」

「個人差って言っても限度があるでしょ!」


 まぁそうだけども!


「まぁまぁそうイライラしてもいいことないですよ。牛乳飲みます?」

「どうもありがとう! ......っていうか啓! あのお弁当何!?」


 だめだまったく怒りが収まってない! なんなら矛先こっち向いた!?


「ご飯の量が少ないのはまぁいいとして、おかず野菜だけなのはおかしいでしょ!」

「でも美味しかったでしょう?」

「ええ美味しかったわ、ご馳走様! ......ってそうじゃない!」


 ですよねー


「でも太りにくい料理を作れって言ったのはお嬢様ですよね? 自分の言った言葉くらい責任持っていただきたいのですが」


 まぁこの人全然約束守らないけどね!


「まぁ……そう。ごめん」

「いえいえ」


 なんかあっさり自分の非認めたな……まぁいいか。理不尽喰らうよりかは全然いいや。




 ……と思ってはいたが事件はその日の夜に起こった。


「ダメだ…お腹痛い……ん?」


 深夜二時、唐突な腹痛に襲われた俺はトイレに籠り、瀕死になりながらもなんとか生還。


 自室に戻ろうとしたら隣の部屋、つまり星影さんの部屋の明かりがついていた。


「珍しいな……」


 前もこんな事はあったが夜中に星影さんの部屋の明かりがついていたことは無かった。……少し気になって耳をそば立ててみると……


『パリ…パリ…』


「この音は……まさか!?」


 嫌な予感がする……


 コンコンコン


「お嬢様、入りますよ」


『え、啓!? ちょっと待って!!』


 本音を言うと今すぐに入ってあの音の出所を確かめたいが、流石に家主の言うことを無視して部屋に入る訳にはいかないのでちゃんと待つ。


「いいよ」

「失礼します」


 そこまで時間を空けずに許可が出たので部屋に入らせてもらう。そして部屋を見渡して状況を確認する。


 つい最近片付けた部屋がもう既に散らかっている事はもう慣れたから何も感じないが、布団に少し違和感が……


 でも急に確認するのもなんだしな……


「お嬢様、ほっぺにポテチのカスが付いてますよ」

「え、ウソ!?」


 そういってほっぺを触る星影さん。……が、そこには何もない。


「ウソです」

「カマかけたの!?」

「ではちょいと失礼して……」

「ちょっと!?」


 星影さんの制止を無視して布団を捲ると、そこには案の定ポテチの袋が。


「これ……なんですか?」

「……」

「とりあえずこれは没収しときますね」

「待ってよ! ダイエット始めてポテチ食べるのこれが初めてだよ!? ……ほら、『仏の顔は三度まで』って言うじゃない!!」


 確かにそうだ。星影さんがダイエットを始めてから、ゴミ袋の中にジャンクフードの袋が無かった事は、ゴミ出しをしている俺が一番分かっている。……が、その理論にはユーラシア大陸と同じかそれを超える大穴が開いている。


「私は仏じゃありませんよ」

「一回だけ、一回だけでいいから!」


 それを聞いた俺は腰に手を当て、星影さんを睥睨する。


「いいですか、お嬢様?」


「なに?」


「『一回だけ』と言うのは非常に危険な行為なんですよ。薬物乱用やギャンブルなんかも、『一回だけ』から始まるんです」


「そんな大袈裟な……ただのポテチだよ?」


「いや、そのメカニズムは全て共通しています。『脳が快楽を求めるから』。そこに優劣の差はあれど、根底はなにも変わりません。深夜に、それもしばらく刺激物を食べずに過ごした後に食べたポテチはさぞ美味しかったでしょう?」


「それは……まぁ、うん」


「そうでしょう、そうでしょう。そしてあなたの脳は既にその快楽を覚えてしまった。わかりやすく言うともう手遅れです。」


「手…手遅れ……」


「えぇ、このままではお嬢様は再び『この前一回やったんだから二回目をやっても大して変わらない』という思考の元でポテチを食べるでしょう。そしてそのスパンはどんどん短くなり、現実に向き合いたくないからと体重計にも乗らなくなり、気づいた頃には+10キロをゆうに超え……」


「ヒィッ!?」


「ですがここで私が止めればお嬢様の蛮行はまだ阻止出来ます。ですがここで私が許してしまえばお嬢様に甘々な私は『この前許してくれたんだからいいじゃん!』というお嬢様を二度と止められなくなるでしょう」


「あ、甘々な自覚あったんだね」


「お嬢様にそのツッコミをする資格はありません」


「ハイ……」


「とにかく、このポテチの袋は没収! 罰としてしばらく先は白米の代わりにキャベツの千切り! またポテチを食べているの見つけるたびに期間を延長するのでそのつもりで! 部屋にポテチの袋を隠してまで食べたいのなら止めませんが部屋に虫湧いても知りませんからね!」


「分かっ……え!?」


「失礼します!」


 バタン


 …………めっちゃスッキリした!

 お久しぶりです。笠見です。


 もう言い訳などしません。すいませんでした!


 これからも出来る範囲で頑張ります!!


 では!!

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