四十八話 波の正体
唐突に俺達の目の前で凪に抱きついた千夏さん。運動場のど真ん中でそのままいる訳にもいかず、星影さんと二人がかりで引っ張って体育館裏にまで移動したのはいいものの……
「お嬢様、なんなんですかね? この状況」
「私の方が聞きたい。あと口調」
「お嬢様もですよ…」
口調を学校用にする気力すら無い俺たちの前では、正面からバックハグに切り替えてとても満足そうにしている千夏さんと、体格的にそこにすっぽりと収まって赤面して下を向き続ける凪というもう何処から何を言えばいいのかもわからない光景が繰り広げられていた。
「えっと…凪? 大丈夫?」
いやまあどこ見ても大丈夫ではなさそうだが。もう『プシュ〜』という音が聞こえそうなほど赤面している。なんか煙も見える。
「えっと…千夏さん?」
「どうしたの?」
とりあえず凪は役に立たなそうなので現在進行形で満面の笑みの千夏さんに質問を投げかけてみる。と言うか『どうしたの?』って何? 疑問しか無いが。
「凪とは…その……どういったご関係で?」
隣から星影さんの『もうちょっとマシな言い方無かったの?』とでも言いたげな視線が突き刺さる…だってしょうがないじゃ無い……聞きづらいんだもの。
「ん? いとこ!」
「へ?」
「ん?」
「えっと…いとこ……ですか?」
俺の中のいとこの知識と現状が一致せんのだが……
「そうだよ?」
聞き間違いじゃ無かった……
「えっと……父方? 母方?」
隣から『それ今聞く必要ある?』と言う目線が……いや…重要でしょ? というより貴方も発言したらどうですか? ん??
「父方だよ! お互いの父さんが双子なんだ!」
「あ〜」
そう言われるとなんかわかる気がする。最初千夏さんを見たときの既視感は凪の父さんと似てたからか。
……そろそろ本題に踏み込まねば。
「えっと…どうしてバックハグしてるの?」
「ん? だってすごくフィットするんだよ凪! 最大級の癒しと言っても過言じゃ無いね!」
「お、おう…」
なんかすごい説得力を感じる……?
「学校じゃ隠してって頼まれてたんだけど、我慢の限界になったのと体力使ったら抑えられなかった!」
oh…眩しい……
『一旦集合しろ〜!』
「ヤバ! 二人とも行くよ!!」
そう言って集合場所に凄まじい速さで戻る千夏さん。俺と星影さんもすぐに追いかけた。
……体力使ったにしてはスピードなんならさっきより速く無い?
…………凪抱えてるから?
身長差万歳!(IQ低下中)




