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四十四話 初弁当

 入学三日目である今日からは、通常日課になり午後の授業もあるため、学校でお昼ご飯を食べることになる。中学までは給食だったからお弁当を作る手間が増えたのが少しめんどくさい。


 別に学食がないわけではないし、オープンスクールの時見にいったらラインナップも結構充実していたのだが俺はお弁当派である。


 理由は単純、食費が浮くから。あと余り物の消費。


 貧乏性ってわけではないけど節約できる時は節約しておこうと思う。何があるからわからないからね。…星影さんが結構浪費癖があるからバランス取ってるってのもあるけど。


「啓〜一緒に食べよ〜」

「ういうい」

「お、美味しそう」

「凪のも美味そうだな」

「ふふん、何しろ母さんの手作りだからね!」

「お前が誇らしげに言うことではないだろ…」

「啓のそれは誰作? やっぱり親?」

「いんや? 吾輩作」

「おぉ〜。まぁ啓料理上手いからなぁ。調理実習の時とかすごい頼りになったし」

「まぁそれほどでもあるかな」

「否定しないんだ…」

「事実だし」


 結構練習したからなぁ。上手いという自負はある。…と、そんな時。


「うわぁ〜! 星影さんのお弁当美味しそう!」

「うん、ありがとう」

「え、これってさ。自分で作ってるの?」

「う、うん。そうだよ」

「えぇ〜すごいね!」

「あ、ありがとう…」


 こんな会話が聞こえてきた。


 うーむ……隠してくれたのは嬉しいけど。別に親が作ってるとかでよかったのでは? あ、隣で八重さんが必死に笑いそうなの堪えてる。


「やっぱり星影さんはすごいね、料理もできるなんて。家事とか大体軽くこなしそうな気がする」

「そ、そうだな」


 …だめだぞ、啓。ここで笑ったらだめだ。俺の生活の安寧と星影さんの名誉のために!


「お、これ美味しそう。啓、これ貰ってもいい?」

「いいよ」

「やった! ……ん、めっちゃ美味しいね! これ!」

「ならよかった」


 おかずが減っちゃったけど、美味しそうに食べてくれるなら全然いい。星影さんも美味しそうに食べてくれるからいっぱい作っちゃうんだよn…あれ、もしや星影さんの体重が増えたのって……


 ピロン


「ん? なんだろ」

「啓、食事中にスマホ使うなんて行儀悪いぞ〜」

「ソシャゲの石回収しながら言っても説得力皆無だぞ〜」


『今度はなんですか?』

『啓! なんでそっちのお弁当とこっちのお弁当のおかずが違うの!』

『いや一緒だったら怪しまれるからに決まってるでしょ』


 そう、今俺が食べている弁当と星影さんに渡した弁当はおかずのラインナップが違う。


 同棲ものの小説で同棲がバレるのって大体弁当の内容が一緒だからっていうのが多いからね。対策は万全なのだ!


『そっちのおかずも美味しそうだから食べたい。残しといて』

『えぇ〜、嫌です。お腹すくし』

『啓のケチ!』

『ケチってなんですかケチって…また作りますから』

『本当に!? 約束だよ!!』


 かわいいなぁ………そしてちょろいな。


 自炊って一人暮らしだとそんなにお金浮かないらしい。


 …という言い訳をして将来自炊から逃げようとする自分の姿がありありと想像できてしまう今日この頃。

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