四十三話 虚しき抵抗
「明日、朝ご飯要らない」
そう言われたのは、シュレッダーで数多の手紙(内容を見てないのでラブレターと確定したわけではない。認識しなければその事象は存在しないのと一緒なのだ)を供養した後のこと。
「どうしたんですか、藪から棒に。ご飯はちゃんと食べないと健康に悪いですよ」
「知ってるよ」
「じゃあ尚更どうしたんですか?」
「いいの! とりあえず明日は朝ご飯要らないから!」
「明日からお弁当ですけど昼ごはんは?」
「いる!」
「はぁ」
そんな会話をした次の日、久方ぶりの一人での朝食に寂しさを覚えつつ、お弁当は二人前作る。学校に行くのも俺が先だから余計に寂しい。…まぁバレるといけないからしょうがないんだけどね。
そして登校して教室に入った瞬間…
「啓〜!」
「グボハァ!?」
凪が突っ込んできた。
いやまあ正確にいうと爆速ハグなのだが、身長差的にタックルみたいになった。…お腹に衝撃が……戻しそう。
「啓、聞いてよ!」
「ど、どうしたの…」
「何言ってんの、忘れたの? 今日は待ちに待った身体測定じゃないか!」
「俺は…待ってない……」
「あれ、啓。辛そうだよ? 大丈夫?」
「誰のせいだ…誰の……」
そういや今日身体測定だったな。体操服は確か昨日入れたはず…よし、入ってるな。…ん? なんか騒がしいな?
どうやら教室の女子は身体測定の話題で真っ盛りらしい。
『きょう大丈夫かなぁ』
『大丈夫でしょ、細いし。私なんて…』
『ふふん! 私はきょう朝食を抜いてきたの。準備万端!』
そんな会話が聞こえてくる。
あぁ、だから星影さんきょう朝ごはんいらないって言ってたのか。そんな変わんないと思うんだけどなぁ。
身体測定も終わり、一息ついていた時。
「啓…」
「ん、どした?」
とても暗い雰囲気を纏って凪が席にやってきた。…さては身長一切伸びていなかったのか?
凪はその低身長にコンプレックスとまでは行かないでも少なからず不満を覚えている。だから毎回身体測定を楽しみにしているのだが……
一年前と全く変わっていない気がする。いやむしろ俺は結構伸びたからなんか縮んだ気さえしてくる。
「あのね…」
「お、おう」
これは予想があたっちゃったパt…
「1ミリ伸びてた!!!」
いや1ミリかーい!
さっきまでの暗鬱な雰囲気はどこにいったのか、凪はもう宝くじ一等が当たったかのように大はしゃぎしている。
いやいいことなんだよ? いいことなんだけど…なんと言うか……ね。
ピロン
「ん? …ごめん、凪。ちょっと外すわ」
「わかった!」
元気だなぁ、全く。
唐突にきた星影さんからの連絡を返すため、一時離脱する。
『啓…』
『どうかしましたか?』
『あのね…』
『は、はい』
あれ? この展開さっき見た気が…
『体重増えてた!!!』
そっちだったかぁ……
最近体重計に乗るのが怖いです…




