三十八話 初日を終えて
その後大量の教科書を教室に運び、順番に並べて机に置き終わった時には既に時計が半周していた。
結局途中から先生は帰ってきた星影さんに、会長までこき使っていた。本末転倒じゃね? あと早速約束破られてる気がするんだが……
まぁ終わったことは終わったこと。さっさと星影さんと一緒にお暇するとしよう。
「それじゃ、お疲れ様でした〜」
「さようなら。お疲れ様でした」
「二人とも、お疲れ」
「お疲れ〜。あんがとね〜」
…あの担任は一発しばいてもバチあたんないな。やらないけど、チキンだし。
駅に着いて、電車に乗り込んだ瞬間。体が二段階重くなった気がする。自分で思っている以上にこの体は疲れていたらしい。
そうだよな、別に運動なんてそこまでやってないし。
それに比べて隣のお嬢様はピンピンしている。この人マジでハイスペックなんだよな。文武両道って感じ。
それに加えて容姿端麗、人当たりも良い。…少なくとも外では。家での性格が玉に傷といったところだな。
「ん、なんか今失礼なこと考えなかった?」
「急に話しかけて更にしれっと人の心読むのやめてください」
「なんか疲れてない? 大丈夫?」
「あなたのドッキリのせいですよ」
「お、びっくりした?」
「したにきまってるでしょう…」
あなたが綺麗だったから、とは口が裂けても言えないな。
「なんか眠そうだね、寝てて良いよ。起こして上げるかは知らないけど」
「それ寝るなって言ってるのと同じですよね?」
そんなことを言いながらも眠気は去ってくれない。小刻みに揺れる電車に生暖かい暖房がどうしようもなく眠りに誘ってくる。
ささやかな抵抗虚しく、俺はその瞼を閉じた。
「おーい、着いたよ〜。起きて〜。…うーん全然起きないなぁ。……そうだ! 啓、ご飯まだ?」
「ハッ! ごめんなさい! お嬢様、すぐにお作りしm……あれ?」
「あ、これで起きるんだ。もう着いたよ。さっさと起きないと出発しちゃう。」
「あ、ほんとだ」
そう言って二人電車を降り、自宅への道を辿る。
「見てみて、これ。よく撮れていると思わない?」
「ん、なんですかそれ……って、本当になんですかそれ!? け、消して下さい!」
星影さんの持つスマホに映っていたのは電車の中で眠っている俺だった……口を開けながら、星影さんに寄りかかって。
「い〜や〜だ! もう待ち受けにするって決めたもん!」
「ちょ、それだけはやめて下さい! さもないと今日のご飯昼も夜も野菜オンリーですからね!」
「え! そ、それはやめて! わかった、待ち受けにはしないから!」
「保存はするんですね…」
「当たり前でしょ!」
何が当たり前だというのか、全く。
「ねぇ啓? 買い出しってまだだったよね?」
「そうですけど、どうかしましたか?」
「起こしてあげたんだから、アイス買って!」
「子供ですかあなたは……分かりました、買います。買いますからその画像チラチラ見せないで!」
「物分かりが良くてよろしい」
「はぁ…」
「じゃあスーパーよって帰ろうか!」
「引っ張らないでもアイスは逃げませんよ」
「知ってる!」
先の不安はいっぱいあるし、星影さんには振り回されてばっかりで、落ち着く暇も無い。
それでも、この新しい生活は何処か心地よくて、星影さんと二人だったら何があってもいけるんじゃないかという変な自信すら湧いてくる。根拠はない。
そんな相反する感情を心に同居させながら、入学初日は終わりを告げた。
というわけで、序章が終わりました。異世界ものだと最初の街、FG◯でいうところの冬◯ですね。
予想以上に時間がかかってしまいましたが、まだまだこれからなので頑張っていこうと思います!
ps:最近FG◯にハマったせいで投稿少し遅れました。マジですいません。よし、周年までに石をかき集めるんや!(反省の色0.1)




