三話 埋められていく外堀
「いやおかしいでしょ!?」
「何がだ?」
「いや『住み込み』って何? 同い年の女の子と同棲しろと!?」
「まあそうなるな。あと同棲じゃなくて『同居』だな」
そういうことじゃないってぇ!
「因みにだけどその子の高校は?」
「お前と同じとこだ」
しかも同じ高校かい!
「その子の中学は?」
「お前と同じとこだ」
知り合いじゃねえかぁぁぁぁ!?
おい今お前そんな交友関係広くないだろと思ったそこのお前。失礼だぞ。これでも普通の人と同じくらいの交友関係はある......はずだ。あるよな、あるよね?
......まあそんなことはいい。少なくとも同じ学校にいた以上全く知らないということはないだろう。
「赤の他人よりは一定以上の面識のある相手の方がいいだろう?」
「まあそうだけどね。......というよりその話を受ける前提で話しないで?」
「嫌なのか?」
「いや、嫌というか......」
同級生の女子と一つ屋根の下。多くの男子が一度は夢見るシチュエーションだろう。
ともにとる朝食。同じ電車に揺られ登校。帰りももちろん。夕食もともにとり二人で団欒。そして風呂場でのハプニゲフンゲフン。
しかし現実はそう甘くない。
そこには当然デメリットも存在する。まず当人との関係、良好ならまだいいが悪いならそれこそ最悪だ。朝食などは地獄の空気、登下校はもちろん別。風呂場でのハプニングなんてもっての他。一瞬の至高の時と引き換えに何があるかわかったものではない。
しかも同じ高校ときた。彼氏彼女の関係ならまだしも、年齢イコール彼女いない歴の白原少年にその可能性は存在しない。その関係でない同級生が同居しているなど話のネタでしかない。俺でもいじる。ウン。
といったふうに同居というのはメリットだけではないのだ。
「っていうか、そもそもこの家どうすんの?」
「売って向こうで家を買う資金にする」
「売るの!?」
この家生まれてからずっと住んでるし結構愛着あるんだが......
「社宅とかってないの?」
「これから支社作りに行くのにそんなのあるわけないだろ」
確かに......
「アパート借りるっていう選択肢は?」
「文化も違うからな、トラブル可能性もあるから一軒家の方がいい」
確かにな......
あれ?
「学校への書類は?」
「向こうの家で出してる」
おおおおおい!?
「あとこの家も明後日から俺らのじゃなくなるぞ」
「急すぎだろ!」
え、引っ越しとかどうすんの?
「業者は明日来るから今日中に荷物まとめとけよ」
「サラッと人の心読むなぁ!」
あぁ、どんどん外堀が埋められていく......
というより一番大事なことを聞いていなかったような気がする......ハッ!
「その娘さんの名前は!?」
そうだよなんで最初に聞かなかったんだ?どうやら動揺しすぎるあまり冷静さを失ってしまったらしい。深呼吸だ深呼吸。ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。
「ああ、多分知ってるぞ。星影 光さんだ」
その瞬間必死の努力(ラマーズ法)にて取り戻した理性が消し飛んだ。
それもそのはず、星影さんは俺の初恋相手にして、失恋相手なのだから......
ここまで書いておいて何ですが。こんな話きたら作者は二つ返事で受けますけどね、ハイ。というより来てくださいどうかお願いします。
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では、またね〜。