三十五話 公開処刑(自己紹介)
教室に移動し、全員が席に着いた頃担任にの先生らしき人が入って来た。
「はい、初めまして。私はこのクラス、一年二組の担任 平坂 蓮香です」
黒板に名前を書いて挨拶をするその先生は、雰囲気の穏やかで優しそうな女性だった。
「では早速HRということで自己紹介から始めましょうか」
出たな…自己紹介と書いて(こうかいしょけい)と呼ばれる悪魔の行事……
その席によって三年間の生活を大きく左右するターニングポイント…
それが自己紹介なのだ!
「それでは出席番号順で秋霧くんからお願いします」
「はい」
そう言って廊下側一番前の席にいる凪が立つ。
「僕の名前は秋霧 凪です。趣味はゲームです。一年間よろしくお願いします」
凪が席につき、控えめな拍手が響く。まぁ大袈裟なふうには言ったが普通にやったら爆死はしないからな。ウケを狙うとやばいけど。
お互いのことがわからない人が多いこともあり、内容も短くサクサク進んでいき俺の番になった。
「白原 啓です。趣味はゲームと読書です。よろしくお願いします」
席に着くと、今までと同じような拍手が響く。及第点かな。
自己紹介の主な目的はその人の顔と名前を一致させる事にある。
当たり前のことだが、重要でもある。小学校での自己紹介は、二回目以降聞き流していた。知り合いが多かったからね。
そのせいで中学校の最初の自己紹介も聞き流した後は酷かった。顔と名前が一致しないとそもそも話しかけられない。すごく苦労したのを覚えている。
まぁ星影さんの顔と名前は一瞬で覚えたけどね!
そんなことを考えていると自己紹介は結構進んでしまっていた。反省しない男。それが俺、白原 啓である。
「私の名前は 千夏 波です! 特技はスポーツ全般で、好きなことは体を動かすことです! 仲良くしてください! 一年間よろしくお願いします!!」
わーすごい元気な子だー。というかでかいな、身長もだけどあそこも。どことは言わないけど。元気な自己紹介だと拍手も大きいね。
っていうよりどっかでみたことあるか? なんか知ってる人に似ているというか…
そうしてまた考え事をしているうちに星影さんの番になった。
「私の名前は星影 光です。趣味は…読書ですかね。一年間よろしくお願いします」
たったそれだけの普通の自己紹介、今までの人がやってきたのと変わり映えのない自己紹介だった。
でも、俺は目を奪われた。三年前と同じシチュエーション、違う制服。
俺はもう今は彼女の趣味が読書などという高尚なものではないと知っている。それでも、俺は目を奪われた。
それほどまでに、星影さんは美しかった。
やっぱり俺は、あの人が好きだ。
因みに八重さんの自己紹介は聞きそびれました。テヘペロ。
自己紹介って人によって全然違いますよね…因みに笠見は啓と同じような感じです。ハイ。




