三十三話 入学式前
体育館に入ると、まだ入学式が始まるまで余裕があるのに大半の生徒が会場にいた。
まぁそうだよな。入学式で遅刻などかまそうものなら三年間のいじりネタを提供することになる。…そんな事は考えずにただただ真面目に来ているのがほとんどだろうけどね。
少し目を凝らして見ると様々な人がいる。
中学が同じだったのか少し懐かしそうに談笑しているグループも居れば、逆に出席番号が近い人同士で新たな友情を築いている人達もいる。他にも我関せずで黙々と読書に勤しむ人も。
別にここの高校は地元のとこなので知り合いもチラホラ見受けられるが、そこまで多くも無い。
「なんか緊張するね〜」
「そうだなぁ…とりあえず席探すか」
そんな会話を交わしながら席が張られているホワイトボードへと目を向ける。
ステージ前から出席番号逆向きになっており、俺は真ん中より少し後ろだった。
「あ、僕一番後ろだ」
「あぁ、秋霧だもんな」
「そうだね。席数えなくていいから楽なんだけど…ステージは見えそうにないかな」
「まぁ入学式でそんな豪勢な事はしないだろ」
「それはそう」
凪と席について会話しながら荷物を置き、後ろの少し開けた場所に移動する。
別に開始まで席でいてもいいのだがこういう時は何故か人と話していたくなる。それに『友達がいるアピール』をする事でボッチどもに辛酸を舐めさせることができるのだ!
…そんなこと思ってないからね! 本当だぞ!?
そうして凪と他愛もない会話を繰り広げていると……
「おや? お久しぶりですね。白原くん、秋霧くん」
「おひさ〜」
「おはよう。星影さん、八重さん」
「おj…星影さん、おはよう。後八重さんも」
「おいそこ。オマケみたいにいうな」
星影さんと八重さんが話しかけてきた。
先の電車で来ていたため、制服姿を見るのはこれで初めてになる。
え、かわいい。と言うか美しい。
中学の制服も見ていたこともあり、雰囲気が一気に大人びたように感じられる。
学校指定の紺のブレザーによく似合う黒髪はハーフアップにされており、上品さを演出している。足が長いためスカートも着こなせており、ローファーとの親和性もとても高い。
極め付けはこの学校の制服の特徴でもある男女共通のネクタイ。なんか、もう…いい(語彙力喪失)
もはや女子高生の完成形。天使と言っても過言ではない。
ってそんなことより! …いや別に星影さんの制服姿がどうでもいいとかじゃないんだけど…
「そうだ。星影さん、ちょっといい?」
「はい? なんでしょうか?」
「ちょっとこっち来て」
そう言って凪と八重さんから少し距離を取る。そして小声で…
『なんで話しかけてきたんですか!?』
『別におかしくないでしょ? 中学の同級生同士なんだから』
『そうかもしれないですけど、バレるリスクを減らすに越した事はないでしょ!?』
『いや、啓こそ「お嬢様」って言いかけてたじゃない。私はちゃんと気をつけてるのに』
『いや…それはそうですけど……』
『と言うよりこうして入学前に二人で喋ってる状況の方が怪しくない?』
カンカンカンカン!
完全敗北である。やらかしてたのは俺の方でした。
というわけですぐに会話を中断して凪の方に戻る。
「あ、もう話は終わったの?」
「あ、ああ」
「告ってフラれたって言ってたけど案外気まずそうじゃないね。なんなら中学の時より親しそうだったけど」
「え、そう? い、いやーそれなら良かったよ」
「大丈夫?」
「お、おう」
「ふーん…まぁいっか」
セーフ! 危なかったぜ…
そうして安堵していると…
「白原くん、伝え忘れていたことがありました」
また星影さんが話しかけてきた。
なんで! さっきの会話した後になんでまたくるの!?
「入学式、楽しみにしておいてくださいね?」
おかしい…入学始まる予定だったのに……
というわけで少し久々の投稿です。まぁ忙しかったからね。しょうがないね。
これからしばらくは頻度高めで投稿できると思うので頑張ります!




