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三十話 いざ高校

 あれからさらに数日、短くて濃い(濃すぎた)春休みが終わり、いよいよ高校に入学する日になった。


 『高校入学』この言葉を聞いてどんな感情を抱くかは人それぞれだが、嫌なことを思い出す人も少なくないだろう。


 そう、『友達作り』である。所謂『グループ』に入れない程度ならまだかわいい方だ。もし『ぼっち』になろうものなら目も当てられない。


 教室での休み時間では読書、もしくは寝たふり。文化祭や体育祭ではやりたくもない役を押し付けられる。修学旅行ではいないものとして扱われ、単独行動もできないから金魚のフンのように後ろをついていくだけ。


 まぁ流石にここまでひどいケースは稀だろうが、入学直後に友達ができることに一定のアドバンテージがあることは否定できない。


 そんな期待と不安が入り混じる感情を抱きざるを得ない入学前、俺 白原 啓 はというと……


 光との同居がバレないかどうかの不安で頭が一杯であった。


 いやね、友達が出来るなんて問題は些細なことなんですよ。もしバレたらどうなるか考えてみ? 男子からは嫉妬の嵐、女子からはゴミ認定されぼっち確定ルートを歩み続けることになる。


 それだけだったらまだいい。SNSで晒され、不純異性交遊認定で社会的にDEAD ENDだ。


 いやまだ気のつけようはあるよ? 使う電車の時間をずらすとか、学校ではやり取りを制限するとか。


 でも、これらの行動は双方が気をつけて初めて成り立つのだ。


 そして我が相方は『あの』星影さんである。


 もうマジで大変だった。『学校では他人のふりしよう』とか『使う電車の時間は分けよう』とかいっても全然聞く耳持たないんだよあの人。


 本人曰く『別に学校で認められてるんだから良くない?』とのこと。


 そうだよ! なんで認めちゃったんだよ学校! 普通苗字が違う男女が同じ住所だったら不自然に思うよね、ね!? なんで通っちゃったの? こういうご都合主義いらないんだよ!


 フゥ…落ち着け…深呼吸だ。結果的には俺の懸命な説得と『今度言う事を一つ聞く』という条件のもと渋々了承してくれた。というよりあの人バレたら自分もやばい事わかってないよね?


 というわけで俺は今一人寂しく学校への電車に乗っている。普段は通勤・通学ラッシュで社会人・学生問わず入り乱れる時間帯だが目に入るのは社会人ばかり。


 何故かって? 入学式は親同伴だから送ってくれるでしょ? つまりはそう言う事。


 俺 白原 啓 は入学前からぼっちなのさ! ハハッ(乾いた笑い)


 そんなことを考えているうちに、最寄り駅に到着。


 文字通り最寄り駅だから、ここから学校まで徒歩五分といったところである。


 正門が見えてくる。看板が立っており、そこで新入生とその家族であろう人たちが写真を撮っている。だからといって在校生がいないわけではない。


 徒歩や自転車でバラバラと、きまずそうに看板から遠ざかりながら正門を潜る生徒が散見される。


 それにあやかろうと思い、出来るだけ勝手知ったる足運びで正門をくぐr「啓?」


 修学旅行行ってきました。楽しかったです。そして旅行に行く度に家にぬいぐるみが増えるよ、なんでだろうね。

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